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とある出版業出身者のつぶやき

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こんばんは、オルタナばんちょ~です。

7/16早朝に配信された ITmedia エンタープライズのメールマガジンで、わが編集部の副編集長が書いたコラムが個人的にグッときたので転載します(本人許諾済)。

今週、スタジオジブリの宮崎駿監督がiPad(的なもの)に対し批判的な見解を示したことが、界隈で話題になりました。わたし自身、こういった新 しいガジェット、新しいサービスに飛びつくことが多く、このような指摘を受けると、頭をがつんと殴られたような気持ちになります。宮崎監 督の指摘の内容は、オルタナティブブロガーである佐々木さんのエントリーに、詳しく紹介されています。

今 回のことで、ある人を思い出しました。その人はデザイナーで、僕が初めて就職した会社での、上司にあたる人でした。

当時は既に出 版・印刷業界ではDTP化が進んでいました。わたしの勤務先でも、デザイナーの業務環境は完全にMacで統一されていました。

だ けど、わたしが入社するほんの数年前までは、まだ組版・版下が当然の世界です。職場には過去手がけた版下が保管されており(今でいうと過去の入稿 データ、という位置付けです)、

DTPではWYSIWYG(What You See Is What You Get:画面で見たままのものが、印刷物として出力されること。これも当たり前すぎて、今ではあえて言わなくなりましたね……)な環境が 確立されていますが、版下上にはWYSIWYGなんて概念はなく、色はCMYKの数字の掛け合わせで示され、フォントや級数も指示として書き込ま れ、写真や図についてはアタリケイの中に下書きイラストで描かれているだけ(別途、印刷用の反射原稿として入稿しておく)といった具合で した。素人(のわたし)にはとても完成形をイメージできないのですが、上司は版下を見ただけで、自分が作ったものではなくても、刷り上が りが分かるそうです。

「当時に比べると今は便利ですねー」というわたしの発言に対し、「理想を言えば」
と前置きした上で、「便利 かどうかという観点でデザインを考えるべきでない。DTP化で、むしろ見えなくなったこともある」という指摘を受けました。

いわ く、「(Macに依存しすぎると)自分の中にイメージを持てなくなる。色の組み
合わせも、文字を選ぶセンスも、バランスの良いレイアウトも、デザ イナーとしての答えを見出してから組み付けるのではなく、Macをいじりながら、なんとなく決めてしまう。それじゃあ、Macを使うので はなく、Macに使われるだけの存在だ」。

そういう人による仕上がりをレビューし、ちょっと込み入った修正指示を出すと、“
その 修正をMacでやろうとすると手間が掛かる”と反論されることもあったそうです。その場合は、「あなたの仕事はMacを使うことではなくて、デザ インをすることです」と、本人の意識から変えていく必要があったとのこと。

また上司は、「デザイン系の学校も、何が美しく、何が 整っているのかを教えるのではなくて、Macの使い方教室になりつつある」と指摘していました(全てがそうではないでしょうけれど)。 「デザイナー職の募集をかけると“Macを使えます”という
人がたくさん応募してきてしまう。Macなんて誰でも覚えられる。でも(デザイン)
セ ンスは、一朝一夕には身につかない。Macの前に座っているくらいなら、絵を見たり写真を撮りに行ったりしたほうがいい」

あなた は消費者になってはいけない。生産する者になりなさい――この宮崎監督の言葉には、今のわたしたちが学ぶべき姿勢が含まれていると、改めて感じた のでした(でも、偏屈だよなーとも思いますけれど汗)

ITmedia エンタープライズ 石森

わたし自身はDTP化以前の出版業界を知らないけれど、石森さんや石森さんの元上司を通じて学べることがある。そうやって学べる機会があること、そしてこのようなコラムを書いてくれる先輩がいることってシアワセだよなあ、とばんちょ~は思うのですよ。

皆さん、よい連休を。

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