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クラウド戦役をZガンダム視点でわかりやすく解説するブログ+時々書評。

クラウド・ロボカーで目指すクルマとITの次世代コラボ

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最近サボりが知だが新年初ブログ。今年もよろしくお願いしたい。
さて、マイクロソフト社内でよくあった年明けの会話。
某)「いさごちゃん年末コミケ大変だったね!
砂)「まあ、盛り上がったのでよかったです」
某)「で、最近なにやってんの?」
砂)「プリウスとか」
某)「…?!」

というわけで、年末にコミケで我らが戦場となった東京ビックサイトで開催されている
Automotive Worldというイベントに縁あってまた出展。今回は萌えグッズではなく
クラウドと連動する市販車ベースのプラグイン・ハイブリッド!

■クラウド・ロボカーの到達点

今回展示しているのは、ZMPさんが開発したクラウド・ロボカーというクルマ。
ロボカーといっても、トランスフォーマーのように変形するのではなく、
Googleの自動運転と似たような仕組みで、遠隔操作を可能にしているのだが、
そのコンセプトや最終到達点へのアプローチは異なる。
Robocar_phv01_2

【できることその1:スレートPC→クルマ】
遠隔操作が可能!スレートPCのアプリからステアリング、アクセル、ブレーキを操作。
車内前方に設置したカメラからの映像をアプリに表示しているので、
ラジコンのように離れたところにいながら1/1の実車を動かすことができる!
という男の子的にたぎってくる仕組み。

これを実現する鍵はクルマ側にあり、ZMPさんが開発したステアリング、アクセル、
ブレーキを人間の代わりに司る制御ユニットがその正体。しかもこのデバイスが
フツウのPCにつながっており、外部からの信号をクルマの操作系に伝えることが
できるのである。ある意味、クルマの操作がAPI化されたようなもの。

したがって、今回はスレートPCで動くアプリを使ってデモを行ったが、
事前に指定したルートの巡回や、クラウドからの指示で動かすことも可能である。
その際、前方に設置した近接センサーにより、障害物を検知して止めることもできる。

【できることその2:クルマ→クラウド】
走行データはクルマのCAN経由でECUなどの情報を吸い出すことができ、さらに
カメラやミリ波レーダ、3次元レーザレーダ、ステレオカメラ、
レーザレンジセンサなど追加のセンサー類を追加することができる。
これらのソースから取得できる情報量は非常に大きく、蓄積、保存、分析にも
それなりに手間がかかってしまうのだが、そこを弊社のスケーラブルな
クラウドサービス、Windows Azureで対応させていただいている。

今のところ、ここまでが実現範囲。
本日展示車周辺で対応していたところ「公道走れるの?」的な質問が多かったが、
技術的にできることと、社会が受け入れることは異なる。法的に禁止されているとか
様々な理由をつけて自動運転にチャレンジしにくい状況にあるのは事実だが、
そんな中でも、「できることをやろう!」というZMPさんの姿勢は尊敬に値する。
これぞ、ベンチャー。

pinoという二足歩行ヒューマノイドをご存じだろうか?
今でこそ20万円を切るキットで誰でも簡単に二足歩行ロボが作れるありがたい
時代になったのだが、2001年当時、きちんと歩けるロボはまだ少なかった。
宇多田ヒカルのPVに出演したことで知られるpinoは、科学技術振興機構からの
技術移転で生まれた技術ベンチャー。

ZMPはZero Moment Pointの略。ロボット工学をかじった人であれば誰もが
解説できるであろう、二足歩行を実現するための動力学的な重心位置のこと。
ロボット制御技術を得意としている。

二足歩行を難なくこなすZMPさんにとって、クルマの制御はそれほど技術的な
難易度を感じなかったようで、車載センサーや今回搭載している
制御モジュールなど最近ではクルマ関連でビジネスを伸ばされている。

最近はスマホアプリに代表されるネット系ベンチャーが脚光を集めやすいが、
日本にはハードウェア系も含めた優良な技術ベンチャーが数多く存在しており、
EV(電気自動車)やPHV(充電可能なハイブリッド車)の登場で変動期を
迎えている自動車業界では、このような会社が活躍しやすいタイミングといえる。

■今後のねらい
ソフトウェア技術者が、クルマにもっと関われるようになったらオモシロイ。

CESでフォードが発表した、マイクロソフトと共同開発の開発キットも、
同じような狙いがある。現状、スマホアプリ開発に熱中している開発者が、
クルマを操作したり、情報を取得したりする環境が整うことで、
ドライバーのカーライフや周りの人々の生活を豊かにするアプリが
いろいろ出てくるのではないかと考えている。カーナビに代表される
情報系だけでなく、走行系に関与できるのであれば様々な可能性がでてくる。
なにより、自分が書いたコードで、ハードウェアが反応すると、無条件にオモシロイ。

Googleの自動運転は、完全なコンピューター自律制御を目指しているように見えるが
日本のスタートアップであるZMPさんのアプローチはちょっと異なっている。
ロボットの発展においても、米国を中心とした海外勢が自立型人工知能ロボ指向で
あるのに対し、日本では人間が機械を操縦、制御するものが多いように見受けられる。
先般話題になった、全高4メートルの巨大ロボ「クラタス」もそうだ。
これは、ガンダム、マクロス、パトレイバー、エヴァなど、ロボット開発者が愛した
アニメの設定と関係があるように思われる。コックピットに乗り込むことに
ロマンがあり、遠隔操作になっても、人間の意思が関与し続けるものを好む。
作り手の想いが違えば、技術の発展の方向性も変わってくるのが自然だろう。

マイクロソフトは外資だろ、という声もあると思われるが、我々は
「日本マイクロソフト」であり、日本の開発者、パートナーさんと共に、
グローバルに展開できるものづくりを支援できれば、こんなに嬉しいことはない。

クルマで新しいことをやるのは、常に日本人でありたい、と切に願う。

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