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最新SDK1.2で開発生産大幅アップ!Azure関連のTechEd2010発表まとめ

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WWDCでiPhone4が発表される2時間ほど前、日本時間23時より北米TechEd2010
キーノートをいつものようにSilverlight+IISの高画質SmoothStreamingで配信させて
いただき、日本からも多くの開発者の皆様に見ていただくことができた。

T.Nakahara tnkhr01 MSさんの太っ腹具合に慣れると他でオロオロします
RT @shin135: WWDC難民けっこう多そう。みんなどうするんだろう。
ちゃんと公式やってあげればよいのに
         

という会話にもあるように、みんなが注目する大規模イベントでは、UST品質でも良いので
ストリーミング配信をちゃんと用意してあげた方が親切ではなかろうか。TechEdキーノートは
こちらのURLでオンデマンド配信をご覧いただけるようになっている。見逃した方は是非。

さて、このキーノート、英語力というより腕に覚えのある開発者か運用管理者でない場合、
内容についてゆくのがちょっと大変なくらい、ボブ・マグリアがマシンガントークでいろいろな
技術要素を詰め込んでお届けしている。「ながら」で理解できるような雰囲気ではないので、
集中して内容を理解するようにしていただきたい。

とはいえ、時間がない、面倒くさいという方のために、Windows Azureまわりで発表された
アップデートのポイントを以下にまとめさせていただく。みなさまの参考になれば幸いだ。

■最新版のSDK提供開始:Windows Azure Tools for Visual Studio 1.2

- VisualStudio2010RTM版対応(実はこれまで正式対応ではなかった罠…)
- .NET4対応(3.5と4のどちらかを選択可能)
- サーバーエクスプローラーへのAzure統合
- デプロイ手順の大幅改善
- intelliTraceによるクラウドデバッグ

最新プラットフォームへの対応や、開発工程の効率化など、開発者のみなさまからの
声にお応えする形で、今回のアップデートで多くの改善がなされた。今後も継続的に
改善が続くことには違いないが、インパクトの大きな変更はほぼ盛り込まれたといってよい。

詳細はこのツールの担当であるJim Nakashimaブログ(英語)に詳しい。
中でも、デプロイ手順の改善度合いには目を見張るものがある。過去、Azureの開発環境を
つくってHello Worldで戦線離脱してしまった方も、再度チャレンジしてみていただきたい。
右クリック→発行だけの簡単操作でクラウド環境に自分のアプリを配置できる。
過去を知っている人にとっては、革命的。

Sdk12_02

さらに、この発行を行う際に気づいていただけると思うが、ユーザー名とパスワードの
入力を要求されることがない。代わりに、クライアントの証明書を使用することになっている。
これで開発ポータルを複数のメンバーで使うためにLiveIDを共有する必要もなくなり、
セキュリティ面でも安全にクラウドサービス管理ができるようになっている。

Sdk12_03

ナカミの種明かしは、ただAPIを裏でたたいているだけなので、「できて当たり前」のことでは
あるのだが、急造品の類ではないので、その分安心して使っていただくことができるだろう。

また、このデプロイの画面でintelliTraceをONにするという意味深なチェックボックスがある。
そう、これを有効にすることで、VisualStudioのintelliTraceを使ったデバッグが可能になる
のである。といっても、「何のこと?」という方もいらっしゃるかもしれないので一応説明。

まず、一般論としてクラウドにデプロイしたアプリはデバッグが難しいという話がある。
手元のPCやサーバーで動いているアプリと違い、問題が発生した時点での挙動を示す
各種ログやメモリの状況などをリアルタイムに把握する術がなかったためである。

一方、VisualStudioにはintelliTraceという機能があり、デバッグやテストを大幅に効率化
してくれるのだが、今回このintelliTraceをAzureに対応させた、すなわち、ふつうには難しい
クラウドのデバッグを大幅に効率化できる機能追加が施されたということだ。お遊びや
サンプルアプリのうちは気にならないかもしれないが、お客様にサービスを提供する上では
こういった機能の存在がより一層重要になる。某社のように、いたずらに「エンタープライズ」
やら「ビジネス」と名乗ってみたところで、安心して使えるものではないことは自明だろう。

Sdk12_04_2

最後に一つ、みなさまに申し訳ないことに、今回もSDKは英語のみの提供となる。
メニューなどの記載はともかく、ローカルのDevelopment Fabricでうまく日本語文字列が
扱えない(Azure上ではOK)ことがあるといった問題の解決は次回以降に持ち越しとなった。
今後の改善、発展をお待ちいただきたい。

なにはともあれ最新SDK1.2のダウンロードはコチラから

■SQL Azure

- 上限サイズを10GBから50GBに拡大
- 25%オフのキャンペーン価格SQL Azure Development Accelerator Core
- 空間情報(Spatial Data)対応
- Data Sync Service for SQL AzureをCTPで開始
(データセンターをまたいだSQLAzureデータベースの同期)
- Web管理ツールを提供:今年の夏にCTP
- Office2010 からのネイティブ接続対応

こちらもいろいろアップデート。サイズが小さい!高い!機能限定が多い!HTTPだけで
DBに接続できない!といったご要望にお応えしての対応だ。こういったアップデートを
軽やかに追加してくるあたり、Azure開発チームは身内ながら実に心強い。

なお、TechEd2010でのこれら機能追加にあわせ、コンテンツも拡充されている。

■トレーニングキット最新版(2010年6月版)

大好評のトレーニングキットが最新版で登場。例によってサンプルコード、解説ドキュメント、
デモ、説明ビデオなどがフルフルてんこ盛り。自習教材としても、勉強会やプレゼンの
ネタとしても大変重宝するコンテンツである。今回も英語版のみの提供となるが、
これまでのように開発コミュニティの手による自発的な翻訳活動に期待したい。

ダウンロードはコチラから。

■サンプル(PhluffyFotosFull Monte)の追加

Azureにのせてすぐに動作させることができ、実装方法もコードで確認できるサンプルが
2つ追加になっている。写真ギャラリーとモンテカルロシミュレーション、どちらもAzureらしい
実装になっているので裏側からSilverlightやExcelを活用したフロントのUIまで、いろいろと
参考になるはずだ。

マイクロソフトが鳴り物入りで始めたクラウドということでAzureに興味は持っていただきつつも
「初物だしねえ…」ということで遠巻きに見守ってくださっていた皆様、ここまでくればかなり
敷居は下がったはず。まだクラウド開発未体験という方、この機会に是非。It' time !

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