宇宙の力を手にしたGoogle。地球降下作戦の行く末は?GAE for business
Android端末全プレで大いに盛り上がった去年と比べれば静かで、興味なかった人にとっては
「あ、やってたんだ」的な存在感の Google I/O初日。すでに速報記事やまとめサイトが
散見されるようになっているし、G社お得意のWaveで内容をレポートしてくれている。
- 「Google I/O 2010」、5月19日キーノート速報
- Google App EngineにBusinessバージョン登場, VMwareとも提携(TechCrunch)
- [速報]Google I/Oで発表された4つのポイント:VP8オープンソース化/Chrome Web Store/VMwareとの協業/Google App Engine for Business(Publickey)
- GoogleWaveでアカウントお持ちの方はGoogle I/O 2010 Main Waveをフォロー
基本的には相変わらずHTML5やら動画コーデックVP8、Androidな話が中心ではあるのだが、
仕事柄気になったのは Google App Engine for business。キーノートの最後の10分ほどで、
今後のプランを話している。Youtubeで見るときは最後のPt12だけでOK。(私が日本時間20日
昼過ぎに見たときはまだ320viewくらいだったのだがみんな他のところでみてるのだろうか)
現時点でGAE for business についてブログで発表されているのは下記5点。
* Centralized administration: A new, company-focused administration console lets you manage all the applications in your domain.
* Reliability and support: 99.9% uptime service level agreement, with premium developer support available.
* Secure by default: Only users from your Google Apps domain can access applications and your security policies are enforced on every app.
* Pricing that makes sense: Each application costs just $8 per user, per month up to a maximum of $1000 a month. Pay only for what you use.
* Enterprise features: Coming later this year, hosted SQL databases, SSL on your company’s domain for secure communications, and access to advanced Google services.
Azure側で日々がんばっている私からすると、PaaSの領域で先行していたと思っていた
Googleが後からマネして追いかけてくるこの状況は、焦りを感じると言うよりむしろ
正しい方向を目指していたのだな、という実感を新たにさせてくれる。
詳細は今後の発表やら取材記事を待つことになろうが、料金とSQLの動きは興味深い。
まず気になるのは、アプリあたり月額$1,000(10万円)という上限を提示している点。
細かな設定することなく無限にスケールするのがウリの(と少なくとも私は思っていた)
GAEにおいて、金額での天井を設定したことが…
1)スパムやウィルス量産など悪用に限ることなく、大量にコンピューティングリソースを
消費する使い方をされた場合でも、$1,000払いさえすれば、サービスの稼働に必要な
リソースをGoogleさんが(赤字を垂れ流して)提供してくれる
2)月額$1,000相当のリソース消費がアカウントあたりの上限になっており、それ以上は
スケールアウトできない
3)月額$1,000程度の使い方を前提とし、実際の利用状況がそのあたりに落ち着くよう、
使えるリソースが(優先度の調整などにより)制限される
のどれにあたるか、今のところ謎である。私の理解が至らないだけかもしれないが、
おそらく2)は彼らのスタンス的にあり得ないので、3)あたりが落としどころではないかと思う。
1)をやりかねないのが怖いところだが、モラルハザードを誘発して自爆しそうな気もする。
ただ、もしこの推察が正しいとすると、お金を払うことで安心感や拡張性を得たいであろう
「エンタープライズ」のニーズと乖離してしまうことになる。「エンタープライズ」といいながら
旧来のNotesやForce.comが得意とするような企業内小規模アプリをメインターゲットに
見据えていて、月額$1,000でほぼカバーできる規模のアプリへの対応をもって、
コンシューマー分野に強いGoogle視点の当社比表現で、エンタープライズあるいは
ビジネスといっているのではないかという妄想に、私の頭の中では今のところ行き着いている。
続いて、SQL対応。
SQL Azureを擁する我々的に、わからない話ではないのだが、少々がっかり感がある。
お互いないものねだりなのかもしれないが、Googleのまわりに棲息するエッジな技術大好きな
開発者のみなさんが、BigTableでの実装ではなく、リレーショナルモデルを要求している
(そして今回その声に応えた)というのは、勝手ながら意外な現象に思われる。
というのも、SQL Azureはオンプレミスのライセンス製品やその開発技術を持つISVを中心に、
結果として好評を博しているわけだが、長年続いたSQL/RDBMS全盛の時代から、
KVS/NoSQLへの時代の流れの大きな転換点にあるという文脈からすると、マイクロソフト
としては現実的な落としどころを用意する想定内の行動である一方、ネット社会を加速する
ことを社是とするGoogleとしては、KVS/NoSQL一筋で突っ走るものだと思っていたためだ。
具体的な実装や価格がどのようなものになるのかはまだ発表されていないので、過去
SQL Data Servicesからのアーキテクチャ変更を経験したマイクロソフト側の一員として
互換性や拡張性をどのように実現してゆくのか、今後の展開に注目したい。
今回対応を表明したGoogleや、先日VMforceで世の中賑わせたSalesforceを含め、
エンタープライズ向けのPaaS市場が積極投資モードで、ライバルの存在が互いの価値を
高めてゆくよいループにある間は、技術的にも大いに発展してゆくだろう。
しかし、私が勝手に重力下の地上戦と考えているエンタープライズ向けのITビジネスが、
本来のGoogleがもつスペースノイドの潜在力を発揮できないエリアであるのなら、
無理に地球降下作戦などせず、広大な宇宙空間(インターネット上の世界)をよりよいものに
してゆくための活動に注力した方が、世の中全体のためにもよいのではないかと考えている。
砂漠や岩場、湿地戦でモビルスーツが宇宙空間のように自由に身動きとれないのと
同じように、契約やサポート、その他エンタープライズビジネスの商習慣や流儀にキレて
地球にコロニーとか隕石落とすのだけは勘弁して欲しいなあ。
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註)このブログにおける私の妄想プレイでは…
アクシズ(旧ジオン派)=Google(文脈によりSalesforceやAmazonだったりもする)
(正規の)地球連邦軍=マイクロソフト
エウーゴ=マイクロソフト内のクラウド推進派 という勝手設定。
史実ではデラーズ紛争および第一次、第二次ネオジオン紛争時に、
旧ジオン派はコロニー2機と隕石2つを地球に落とし、落着地点に壊滅的打撃を与えている。
タイトルはアクシズ(ネオジオン)代表ハマーン・カーンのセリフからのメタファ。
「私は宇宙の力を手にした。引力に魂を引かれたティターンズ など恐れるに足らん!」