公表、報道はあったものの、微妙な話題なのでブログでの発言も気を引き締めてかかりたい。
Yahoo!買収騒動から数ヶ月、当面の戦闘態勢の大枠が固まった。検索市場2位のYahoo!と
検索市場プレイヤー兼技術ベンダーであるマイクロソフトが一致団結することで、
長年Googleの後塵を拝し、過半数のシェアを持つGoogleに旨味を貪らせていた状況を
覆すことができるかもしれないチャンスがYahoo!とマイクロソフト双方に訪れた。
Qi Luの移籍や、すでに広告ビジネスや動画配信技術など、個別分野での提携は進んでいたものの、
核心となる検索分野で提携関係が結べたこと、そして何より、我々が磨き上げてきたbingの技術が
より広く活用される機会を得たことは非常に喜ばしい。開発者の方々には、是非bingのAPI群を
使ったサービス開発もお試しいただきたい。
この分野における開拓者的存在であるGoogleからすれば、すでに新しい発見や革新が
見いだしにくくなっているのかもしれないが、チャレンジャーである我々からすれば、
非常にホットな分野である。単なるテキスト全文検索からDecision Engineとして
よりいっそうの進化を遂げるためにbingがなすべきことや山ほどある。
Azureと並んでLay Ozzieもお気に入りな、非常にエキサイティングな分野である。
あくまで外野からの邪推ではあるが、Googleご自慢の新しもの大好きなエッジ系エンジニア
からすれば、検索技術はすでにあらかたやり遂げた感があると思われ、要素技術を一般化した
App EngineやWave、Chrome(含むOS)、Androidなどのより大きな進化の可能性が
見いだせそうな分野に興味関心が移っているのではなかろうか。
ビジネスポートフォリオ管理としては安定事業を核に新事業の芽を探すのは当たり前の行動だが、
爆発的な熱狂や集中が功を奏しやすい要素技術開発という点においては、技術レベルの希薄化が
起こりうるのではなかろうか。Yahoo!とbingが攻めてきたからといって移り気な開発者の興味を
検索技術開発に再度動員するのは難しいだろう。配置換えをしたくらいで解決できる問題ではない。
ただ、誰でも想定できる (Yahoo! + bing) > Google のシナリオが、思惑通りに進むとも思いがたい。
その点、今回の提携が10年の期間限定というところも見逃せない。過去、PC向けOSの分野で競合
していたAppleに対して資本提携関係にあった時期があるが、これも時限立法的な措置であった。
戦略オプションの自由度を高めておくのは時の流れの速いこの業界における戦いの定石である。
OracleやIBMのように、(敵対的)買収を繰り返す戦略は一見即効性が高いようにも見えるが、
その代償として戦略の自由度が下がるリスクを忘れてはならない。事業を買って統廃合して
再度売却ということに慣れた企業であればそのリスクも緩和されるのだろうが、IT業界は
どちらかというと買った企業や技術を抱え込んでしまっているようにも見える。その背景には
鮮度管理の難しさ、すなわち売却価値がある程度高い期間が短いことが影響しているのだろうか。
買収後の環境がおもしろくなければ優秀な人材は去り、よい製品は生み出せなくなる。
生産設備などの資産依存の高い他の産業に比べ、移り気な「人」の果たす役割が高い状況では、
既存顧客との関係やシェア獲得のみを目的とした買収が長期にわたり成功するかどうかは謎だ。
成功の鍵は優秀な人材をつなぎとめ、自陣営の戦力に融合できるかどうかにかかっている。
そして、Yahoo!もしたたかだ。仮道伐虢の機をねらっているのだろう。Googleとの戦いに
決着がついた後、覇権をどちらが握るかは依然不確定だ。状況が変われば戦略・戦術は
変えるべきであり、未来永劫安穏としていられるほど、この業界は成熟していない。
Googleは手強い。今回の提携にどのように反応するか、楽しみでもある。今後もしばらくは
相手の出方をみながら対応策を打っていくことになろう。検索、SaaS、クラウド、OSなど、
両者とも手駒が多いので戦局推移の予想は、野次馬的におもしろいことになるかもしれない。
結果的に戦略自由度の高いオプションに落ち着いた今回の合意は、よい方向に機能するだろう。
今はエバンジェリストの立場であるが、自称軍師としては中の人としてこの戦局を経験できることは
非常に興味深く、大変参考になる。
なお、日本における話はまた別だ。Yahoo! Japanともよい関係が早期に作れることを願う。
というか、その前にbing日本版のbetaをとって成功裏に正式ローンチを迎えたいところだ。

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