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Azure価格発表。複数の提供モデルと競争力のある価格戦略でクラウド市場の本格立ち上げをねらう

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GoogleやAmazonとの戦いで注目の集まる価格とビジネスモデルがついに発表となった。
日本時間で昨晩、世界中のパートナーが一堂に会するカンファレンスWPC09のキーノートで
Windows AzureのゼネラルマネージャーであるDoug Hougerが価格モデルを発表した。

といいたいところだが、実はキーノート自体では、提供方法の発表しかなく、
価格についてはこのブログでも何度か紹介しているWindows AzureチームのSteve Marx
twitterでつぶやいたのが、価格が公にされた最初の発言だったかもしれない。

smarx Windows Azure: $0.12/hr, $0.15/GB. Full pricing details: http://is.gd/1yBDq 24分前 TweetDeckで

詳細でリンクされているのはコチラ。Windows Azureチームのブログである。
Confirming Commercial Availability and Announcing Business Model

Windows Azure:

Compute @  $0.12 / hour

Storage @ $0.15 / GB / month stored

Storage Transactions @ $0.01 / 10K

SQL Azure:

Web Edition – Up to 1 GB relational database @ $9.99

Business Edition – Up to 10 GB relational database @ $99.99

.NET Services:

Messages @ $0.15/100K message operations , including Service Bus messages and Access Control tokens

 Bandwidth across all three services will be charged at $0.10 in / $0.15 out / GB

一見、ComputeチャージがAmazonのLinuxより高く、Windowsより安い、というあたりにしか
目がいかないかもしれないが、このプライシングには、様々な戦略や想いが詰められている。

キーノートで発表された内容では、Windows Azureの提供方法に、Consumption、
Subsctiption、Volume Licensingの3種類が用意されている点に留意頂きたい。

Azure_pricing_model_2

従来のクラウド提供メニューには「pay as you go」と言われるConsumption、すなわち
使った分払いしかなかったが、定額制のSubscriptionや、従来のライセンス販売で
おなじみのVolume Licensingモデルも用意されている。

pay as you go は一見、無駄なく効率的で便利なように思われるかもしれないが、
個人ならまだしも、企業ユーザーにとっては予算の見通しが立てにくく、意外と扱いにくい
ものである。携帯電話料金にしても、パケット単価の安いプランより安心して好きなだけ
使える定額制を好まれる方も多いだろう。ここでも選択肢を用意しようとしているのである。

また、ボリュームライセンスによるディスカウントはマイクロソフトのお家芸である。
ライセンス数の多寡によるグループ・プライシングが実現すれば、大企業での導入を加速する
要因にもなろう。そして、さらに、Enterprise Agreementなど、従来のライセンス製品との
組み合わせセットメニューが提供できれば、ユーザーにとってより利用しやすいものになると
思われる。ボリュームライセンスについては、PDCでの商用利用開始の後、一拍おいて
提供される予定だ。

次に、先日名前の変わったSQL Azureと.NET Setrvicesもあわせて価格が発表されている。
これらは、バンドリング価格戦略、すなわちセットメニューを構成する要素である。もちろん、
これらのサイドメニューだけを単品注文することもできるが、Windows Azureの
Computing基本メニューとの組み合わせを推奨するものである。

語弊を恐れずに言えば、SQL AzureはSQL Serverをクラウド上で利用できるサービスである。
扱うデータ容量によって、1GBまでのWeb Edition と10GBまでのBusiness Edition を使い分け
できるようになっている。容量の大きなバイナリファイルなどは扱わず、気軽に安く、
クラウド上のRDBMSを利用したいということなら、Web Editionから使い始めるということでも
十分なのではなかろうか。

今回発表した価格や提供モデルは、Windows Azureビジネスの基盤となるものであり、
今後ISVやSI'erのみなさまと調整しながら、エコシステムを作り上げてゆくことになる。

先日発表のあったOfficeの無償Web版についてはGoogleとの本格戦争といった雰囲気の
物議を醸し出しているが、マイクロソフトが先読みや戦略なく無謀に市場を潰すことはない。
クラウドコンピューティング、その中でもあえて区別するならパブリッククラウドの領域は、
まだ市場・産業として未成熟であり、健全な競争をしながらも、新しい利用価値を提案する
ことでパイ全体を大きくしてゆく努力が必要な時期である。

DVDをコピーするほどではないが、超大規模データセンターのリソースを利用して提供される
クラウドサービスは、限界費用が圧倒的に低いビジネスであり、競合を駆逐し、シェアを
とるだけなら他の戦略をとることもできるところを、従来のソフトウェアビジネスのノウハウを
活用しながら成熟させようとしているのである。

なお、今回価格発表のあったAzureプラットフォーム上にアプリケーションを提供して
ビジネスを展開したいと考えるISVの皆様には、是非このホワイトペーパーを読んで
いただきたい。プラットフォームの価値は、それ自体ではなく、その上に展開される
アプリケーションの多様性やそれを生み出す開発者のパワーで支えられていることは、
長らくOSビジネスを展開してきたマイクロソフトだからこそ、身にしみてわかるところといえるだろう。

願わくば今回の発表に触発されたGoogleやAmazon、その他クラウドベンダーがユーザーや
クラウドを支えるパートナー企業の存在を無視した過当な価格競争にのめり込んでいかない
ことを期待する。マイクロソフトが発表した内容が、少なくともここ1-2年のスパンで
ナッシュ均衡をもたらすものであって欲しい。

今回の価格決定、考えるべき要素がいろいろあって、プライシング戦略のケーススタディ
題材としてはもってこいだと思うのだが、どこかのビジネススクールでケース作ってみては
いただけないものだろうか。情報提供や監修くらいはお手伝いできると思われる。
少なくとも、仕事とはいえ内側からその過程を見るに、個人的にはかなり楽しませて頂いた。

念のため、くどいように言っておくが、ここに述べるのは、あくまで私個人の私見による
Azureのプライシング戦略に対する考察であって、マイクロソフトとしての公式見解ではない。

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