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Googleにらしさを求めてしまうのは酷なのだろうか。Outlook連携の先行きに思う

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難癖つけるつもりはない。友好的な助言のつもりである。そして、Google Appsで
弊社製品Outlookに対応していただいた点には感謝したい。また、短期間の提案活動の中から、
エンタープライズ顧客は自分たちとは違うこと悟り、迅速に対応する姿勢は尊敬に値する。
しかし、それでも、Googleがエンタープライズ顧客の要望に応える戦略に傾倒するのは
やめておいた方が良いのではなかろうか。シェアを失うだろうと噂されているマイクロソフトや
IBMのためだけではない。世の中の適正な技術・ワークスタイル進化のために、である。

Googleは、そもそもソフトウェアベンダーではない。手段としてソフトウェアや
その他テクノロジーを活用しているが、収益構造は広告代理店のようなものだ。
サーチアプライアンスやGoogle Appsのビジネスが、現時点でさほど大きな収益源に
なっているとは思いがたい。マイクロソフト所属となっている私からすれば
なぜ厄介なエンタープライズビジネスに手を出そうとしているのだろうかと疑問に思う。

GoogleはWebのあり方を考え得る範囲で適切な方向に、進化させ続けてきた
尊敬すべき企業であり、その理念にも共感するところは多い。

が、なぜ企業内の情報システムをビジネスドメインにしようとしているのだろうか、
どの理念に基づいた活動なのか、傍目からはその大儀を読み取ることができない。
Web向けに開発してきた技術の一部が「たまたま」企業内の情報システムにも
適用できるのではないか、という仮説の元、サンクコストで対応できる儲け話が
あるならやってみようか、という活動にも見えなくはない。

一般論として、シナジーや効率に重きを置き、理念にそぐわぬ事業拡張は、
ろくな結果を生まないことが多いのでやめておいた方が良い。

どんな事業でも競合に、あるいは株主に約束した成長目標に、その他あらゆる苦難に
直面するタイミングがあり、常に順風満帆というわけにはいかないものだ。
その際、がんばりきれるかどうかは、単に資金量・体力の問題だけではない。
死にものぐるいでしがみつくに値する「価値」のありなしの方がよほど重要だ。
HTML5やGoogle Waveには覚悟を決める価値を見いだしているように見受けられるが、
Google AppsのOutlook連携はそうは見えない。

その点、Amazonは賢い。コンシューマだの、エンタープライズだのということはない。
これ以上深入りしてはいけない一線を心得ているように思える。
オラクルなどとのアライアンスでエンタープライズ「感」を適切に演出している。
基本的にはハードウェア貸しのビジネスで、最大の差別化ポイントは柔軟な
少額決済スキームである。自社の強みを活かした、よい戦略だ。

Googleの理念を達成するためには、インターネットだけではなく、企業内の
ネットワークにまで踏み込み、企業内個人のワークスタイルを、組織文化を変える必要があるのだ!
それならば、わかる。なら、徹底してそういえばいい。

そのための解が「Outlookと同じことができます。しかも、安いです」ではあまりに貧弱だ。

ただでさえ、マイクロソフトの卒業生が多く流入して遅かれ早かれ同化してゆく
危険性があるのに、それを助長してどうするのだろう。位相が5年、10年ずれた、
マイクロソフトみたいな会社がもう一つ世にできるだけである。
Googleが目指す姿はそんなものではないのだろう。
部外者の勝手な願望でしかないが、そうなってもらいたくはない。

Google Waveなどの新しいコミュニケーションのあり方を提唱し、味方になってくれている
先進的な考え方、スキルを持つユーザーと共に定着させる活動は、拍手喝采、
どんどんやってもらいたい。これはGoogleにしかできないことだろう。

ちなみに、日々進化を続けるGoogle Appsは他の何者とも似ていない。
大企業において業務・文化として根付いた電子メールとGmailとは、別物なのである。
いわゆる大企業の一員となったことがないのでわからないという人のためにいくつか。

- ある程度の職位になると、スケジュール管理は秘書が行う(代理での操作は必須)
- 組織をまたいだ予定の調整は、いきなり予定を登録するのではなく、
 会議出席依頼を送り、返信を待つのが礼儀
- 転送や印刷を禁止する必要のある、機密性の高い情報もメールで流通してしまっている
- 電子メールと文書管理・掲示板が連携したMail in DBのような仕掛けになっていることも多い
- 監査、バックアップ・リストア、誤送信防止などが操作性より優先される

これがいいとはいわないが、Outlook/Exchangeがデファクトになる以前、
Lotus Notes/Dominoの時代から引き継いでいる基本的な要求事項である。
そして、いずれもOutlookクライアントだけでは解決できない。サーバー機能との連携が必要だ。
基幹業務の一部となったメールと連携したシステムは多く、それらを作り替えるのは大変である。
NotesをExchangeに移行できないユーザーは、ExchangeからGoogleに移行できない。

画面だけOutlookにしたところで、エンタープライズ対応とはいえない。
NotesやOutlookを使うことで定着した業務ルールや不文律が完全に置き換わるまでは。
実現のための近道は、Google AppsをOutlookに近づけることではなく、Google Appsらしさや
Waveの魅力を直接訴求することではないだろうか。エンタープライズの世界はやりだしたら、
きりがなく大変な世界であることを、どこまでわかっているのだろう。

そちらの世界はExchange2010をはじめとする、Office2010シリーズでカバーできる。
せっかくGoogleに集結したWeb世界の英知、もっと別のことに振り向けていただきたいものだ。

※Exchange2010, Office2010の詳細はTechEd09で!

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宇宙(Web)の力を手にしたGoogleにとって、重力に魂をひかれた人々など恐れるに足らん、
とハマーン・カーンのごとく高をくくって考えているかもしれないが、地上での戦いは厳しい。

本来、宇宙戦用のモビルスーツを地上で運用しようとしても、稼働時間や機動力が
著しく低下し、撃破率が高まるだけである。砂漠や湿地のような環境では、
精密機器が露出した宇宙仕様のモビルスーツが標準装備で戦うことは難しい。

実戦中に砂漠の接地圧を補正するロジックを書き上げてOSに組み込み、瞬時に
地形特性に対応できるキラ・ヤマトのような天才コーディネーターがいれば別だが、
フェイズシフト装甲をもつ地球連合軍の最新機動兵器GAT-X105ストライクといえど
砂漠に降りれば地形適応の高い戦闘ヘリに易々と撃破されてしまうだろう。

もしかしたら本当にキラ級の天才がいるのかも?と思わせてしまうところが
Googleのすごいところか。

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