オルタナティブ・ブログ > Azureの鼓動 >

クラウド戦役をZガンダム視点でわかりやすく解説するブログ+時々書評。

Google Apps攻略任務で発揮されるExchange Onlineの真価

»

昨日、マイクロソフトはExchangeをはじめとするBPOS(「びーぽす」と読む:
Business Productivity Online Suiteの略)の価格帯を発表した。
GoogleAppsより安く仕立てる構成も可能な戦略的な料金体系である。

この発表で、クラウドの中でもSaaSにあたるレイヤーでの戦いがさらに白熱するだろう。
みずほ情報総研の吉川氏もブログで見解を述べている。
「クラウドの衝撃」著者のNRI城田氏をはじめ、クラウドサービスを分類する際、
SaaS、PaaS、HaaS の3階層に分けて説明されることが多くなってきたように思われる。

それぞれのレイヤーごとにユーザーのニーズが異なり、鍵となる技術が異なり、
参入企業や競争環境が異なり、結果ビジネスとしてのKey Success Factorが異なるが、
SaaSレイヤーのBPOSの戦況はPaaSレイヤーのAzureにも影響を及ぼす重要な局面だ。

SaaSでの戦いをもう少し細分化してみると、大きく戦渦が広がっているのは
CRMと電子メールの領域であるといえる。業務の特性上、リアルタイム性を厳密に
求められることがない、いわゆる「情報系」の代表的アプリケーションである。
付け加えるならば、Sharepoint Onlineでカバーするワークフローや
ナレッジ共有の仕組みもその周辺に存在する。

ちなみに私の前の職場では、初期の頃からGoogle Apps Premier Editionを導入し、
Gmailを「電子メールの代わり」として業務で使用していた。

今ではおそらく日本でも代理店が増えてきて問題は解決されているのだろうが、
100名規模の企業で使うにしても、それなりに苦労させられていた記憶がある。
保守・運用面でサポートが英語のみだったことで、担当者は悩まされていたようだが、
ユーザーである社員側も、ホワイトリストのないSPAMフィルタのおかげで
お客様からの重要なメールを見落としてしまっていたという事故も少なくなかった。
また、多くのユーザーは一般的な電子メールクライアントを使用していたが、
POPやIMAPのパフォーマンスは高いとはいえずフラストレーションはたまっていた。

電子メールだけでなく、カレンダーとスケジューラーの違いも大きい。
ある程度の規模の組織であれば、社内のスケジュール調整を行う際に、
さまざまなビジネスルールが存在していると思われる。
会議室やプロジェクタの予約が連動していたり、依頼と承認による調整が行われていたり、
予定重複時のロジックが規定されていたり、秘書による代理操作が行われていたりする。
ネット上のシンプルな仕組みを業務に当てはめてみると、Lotus Notes/DominoやExchange、
国産グループウェア群は実に複雑な処理をこなしていることに改めて気づかされる。

以上はあくまでユーザーとしての一個人としての経験談ではあるが、要するに
Google Appsを「グループウェアの代わり」として使うのは無理があるのではないかと思う。
私もプライベートでGmailアカウントは持っているが、その使い方であれば
正直それほど不便は感じない。(ブラウザからのみ、チェックは不定期に気づいたとき、
スパムも含め数や容量は気にしない、メールの発掘はテキスト検索中心)

つまり、同じ電子メールというプロトコルにのっとった通信を行っていても、
業務で使用している「電子メール」とGmailとの間には大きな違いがあるのである。
がんばれば転用できなくもないが、元々適した使い方があるのであれば
素直に活用して労せず恩恵を被った方が賢い選択だ。

メールで非常に機密性が高く重要な情報がやりとりされることも少なくない。
文書管理やポータル、ワークフローに分散させてメールの量を減らした方がよいと
わかっていながらも、メールへの依存度の高さを否定できない企業が多いだろう。

また、タイミングの問題で、グループウェアをGoogle Appsに置き換えようという話は
現時点において魅力的ではあるがやや一足飛びであるといえる。
現在ビジネスを中心的に支えている40代、50代のネットリテラシが急激に高まることは
期待できないため、世の中がネットコンビニ世代化するのを待つしかない。
社内ブログやSNSと同じように、人口分布が若い世代に偏った企業では成功例も
でてくるだろうが、鵜呑みにすると失敗につながり、その痛手はNice to haveの
SNSとは比べものにならない。

そしてセキュリティや運用コストを考えるとディレクトリ管理の問題も見落とせない。
すべてクラウドに!といっても、いきなりディレクトリを社外に移す勇気のある企業は
少ないだろう。となれば、電子メールやスケジューラーは自社内のディレクトリと
何らかの方法で連携を図る必要がある。

Active Directoryを運用している企業にとって、Exchange Onlineへの移行はたやすい。
詳細はTechNetの「ディレクトリ同期ツールをインストールする」参照されたい。

その他、既存の資産を活用した運用方法の具体的方法をTechNetに掲載しており、
自社のセキュリティーポリシーなどの状況にあわせた計画策定の参考にしていただきたい。
長い間エンタープライズ分野でお客様やパートナー様の叱咤激励を受けながら
つくりあげてきた仕組みは一朝一夕にどうこうできるものではない。

Exchange Onlineは多くの企業が使い慣れてきた「電子メール」の使い勝手や
運用面のメリットをそのままに、ホスティング環境をマイクロソフト側に移して
月額料金で利用していただけるようにした商品パッケージである。

安さにつられてGoogle Appsにたなびいていた方、Google Apps導入と同時に
企業変革を実現するのだ!と息巻いている方には冷静に考え直していただき、
一度Exchange Onlineを含むBPOSの価値や自社とのフィット感を
キャンペーンや戦略的な価格とあわせ、ご検討いただきたい。

元@IT編集長の新野氏がBPOSのレビューを掲載されているのでリンクさせていただく。

「同じ変形でも、地球で開発されてこっちで使うんだ!こっちの能力は違う」 by ヤザン・ケーブル

Comment(0)