鈴木いっぺい の 北米IT事情: 雲の向こうに何が見えるか?
アメリカのIT業界を渡り歩いたビジネスコンサルタントがユニークな切り口で新時代のIT市場を分析
クラウド上で可用性の高いアプリケーション環境を構築するのは一見、難しい作業の様に思えますが、重要なポイントは、クラウド上のコンポーネント全てに障害が起きうる、という事を認識しそれに対応した障害対策や自動化の対策を講じる、という意外と地味な作業を行う事です。
6月11~14日に予定している、RightScale User Conferenceにおいては、このHA (High Availability)とDR (Disaster Recovery)が重要なテーマとして様々なセッションが予定されています。多くの企業がこの課題に対して取組んでいる、という実情を反映している事からこのテーマを採用しているわけですが、RightScaleが取組んでいる "HA in the Cloud" に向けた4つのステップについて、下記の通り簡単に説明したいと思います。
1. Build for server failure
サーバの障害は必ず起きるという前提でシステム構築をする
クラウド上のインスタンスは、データセンタにあるサーバと同様のレベルのサポートが必要です。特にサーバの障害に対する対応策の設計は大事です。サーバ障害への対処の第1ステップは任意のサーバ/サービスのリブートに影響を受けない様な環境で動かす事です。下記の点への着目が必要です。
自動スケーリングを設定し、様々なトラフィックの増減のパターンに対して対応出来る様な設計にする。
データベースのミラー、マスター/スレーブ環境等を設定し、データの保全性を確保しダウンタイムを最小限に留める。
ダイナミックDNSや、固定IPを利用し、アプリケーションが利用するインフラのコンポーネントが常に同期している事を保証する。
2. Build for zone failure
クラウドゾーンも必ず障害が起きる、という前提でシステムを構築する
サーバ単位で障害が発生するばかりではない。停電、ネットワーク障害、落雷による電力系統の障害、等さまざまである。こういった複数のサーバ群を対象とした障害に対する対処もアプリケーションとしては必要になってくる。AWSのAvailability Zoneの様に、こういた地域単位の障害に対する保全性、耐久性を確保したサーバ群の単位をゾーン(Zone)と呼び、複数のゾーンにまたがった次の様なアプリケーションの実装が必要になってきます。
少なくとも2つのゾーンに対してアプリケーションが稼働するサーバ群を配置する。
ゾーン間でのデータの同期を行う。通常の範囲でのデータ同期は定額で行う方法がある。
3. Build for cloud failure
クラウド自体もも必ず障害が起きる、という前提でシステムを構築する
稀なケースで、一つの地域(リージョン)に配置される複数のゾーンが同時に障害を起こすケースもあります。2011年、4月に起きた、AWSのサービス障害がその一例です。ここでいう「リージョン」とは、個別のAPIをもつ独立したシステムリソースの事を指し、RightScaleが定義するクラウドの単位でもあります。
可用性(Availability)を限りなく100%に近くする為には、このリージョン(クラウド)単位での障害にも対応出来るためのプロセスを考慮する必要があります。しかし、クラウド間でシステムを構築する際にはいくつかの難しい課題に直面します。API、システム構成等、インタフェースの違い等がまず問題になり、これに対しては、アプリケーションとしては特定のクラウドAPIにとらわれない、汎用的なインターフェースを採用するコンセプトに基づいて構築される必要があります。
RightScaleの提供するクラウド管理システムはこういったクラウド間の違いを吸収し、開発者、システム運用管理者に対して、障害対応力に極めて強い、標準コンポーネントによって構成されるアプリケーション設計戦略を構築するのに大きな効果を発揮します。特定のベンダーが提供する複数のリージョン間にに搭載されるアプリケーションの実装ではなく、ベンダーにも限定されない複数のインフラ提供者にまたがった、次の様なアプリケーションの運用が非常に容易になります。
データのバックアップを複数のリージョンやIaaSプロバイダ間で行う。プロバイダ間のデータの転送はインターネット上で行われるので、特にデータセキュリティの保全が重要になります。
障害時の補完用のインスタンスを別リージョン/クラウドに配置することにより、ゾーンやクラウド上の障害に対するキャパシティ設計を行う。
いっぺんに大規模なクラウド間システムを構築するのでは無く、段階をもってシステムの障害対応戦略を拡張していく(複数ゾーン対応から複数クラウド対応へ)
4. Automate and test everything
全ての管理工数を自動化し、テストを行ってから実装する
システムの構成を順次サーバ障害、ゾーン障害、クラウド障害へ対応出来る様構築していくにつれ、障害に対する対策手順を自動化していく事が次のステップになります。クラウド管理ステムは、上記の様な複数サーバ、ゾーン、クラウドの単位それぞれに対して、障害対策手順を設計し、運用/管理出来る様な機能を提供します。障害時は大抵時間との戦いになるケースが多く、手順を自動化する事は非常に重要、且つ有効なソリューションになる事は自明で、次の様な対策が勧められる。
全てのステージに於けるデータのバックアップを自動化し、障害発生時にはデータの保全性を確保する様に設計します。
常に、システムを監視し、有事の際にアラートが発生する様にシステムをセットアップし、問題が発生した時にどこでどのような問題が起きたのかを迅速に検知出来る様な仕組みを構築する。クラウドプロバイダーからの連絡を待つ方法では、情報伝達が遅い上、精度に欠けるケースが多いのが現状です。(4月のAWS障害時はその問題がよく話題に上がっている)
障害対策プランは、実際にテストをする事によって初めて有効である、と判断出来る。クラウド上でのテストは従来のOn Premise上でのシステムと比較して非常に安くテストを行う事が可能になっている。特に過負荷テスト、障害のシミュレーション等は、RightScaleのコンソールを通して構造的な方法をもって行うことが出来ます。
クラウドのインフラは、DR(Disaster Recovery)やHA(High Availability)のシステム設計を非常に安く、そして確実に導入する事を可能にしている、という点は改めて評価する必要があります。最近、頻繁に発生しているクラウドサービスの障害のニュースが飛び交う中、クラウド上でMission Criticalな業務アプリケーションを何の問題も無く運用を継続し続ける会社も多いのも事実です。こういった会社はあまりニュースに登場していないだけだ、という現状を認識すべきであるが、多くの事が学べると考えます。
RightScaleの提唱するクラウドベストプラクティスと参照アーキテクチャについての上はこのリンクのWhite Paper on HA and DR Scenariosを是非ご参考にして下さい。
Brian Adler @ RightScale, Inc.
マルチクラウドに向けた、具体的なソリューション事業は既に北米市場を中心に動き始めている。
特に今後注目していく必要があるのは、SaaS/PaaSを中心とした企業に取ってのアプリケーション事業でのクラウド環境と、IaaSを中心としたITプラットホームを中心としたクラウド環境の融合にある。それぞれのクラウド事業は、独自の市場を形成しており、下記の様に異なる顧客層とベンダー構成を形成している。
SaaS/PaaS市場
主たる顧客層:企業の各事業部門
主要プレイヤー:Google Apps, Microsoft Office 365, Salesforce.com, etc..
IaaS市場:
主たる顧客層:企業のIT管理部門(system administrator)
主要プレイヤー:Amazon Web Services, RackSpace, Microsoft Azure, etc...
同じクラウドコンピューティングというキーワードを共有しているにも関わらず、上記の様に別々の市場形成、顧客構造を持つビジネスになっている状況が今日のクラウドコンピューティングの姿である、と言える。当然ながら、この別々の市場が次第に融合の方向に向かっていく事が今後の動きとして期待される、と言える。
課題は、この2つの異なるクラウド市場がどの様に融合していく、と言う事である。
マルチクラウド化の動きがこの融合に寄与する、と期待されており、次の様な事例を通して、マルチクラウドソリューションが市場に登場していくもの、と予測される。
1)クラウドアプリケーションのマルチクラウド稼働
通常、SaaSアプリケーションや、PaaS環境で開発したアプリケーションは、特定のクラウド、若しくはデータセンタで稼働する様、デザインされている。負荷分散、障害対策、SLAの向上、という観点から、複数のクラウドでこのアプリケーションを運用したい、というニーズが発生する事は明らかであるが、SaaSベンダーとしては複数クラウドプラットホームにアプリを移植、運用する事は負担が大きくなるため、難しくなる。それを実現する為にもマルチクラウド環境でアプリケーションを統合的にサポート/運用出来るソリューションが必要になってくる。
2)クラウド間のデータの互換性
企業のクラウド利用が進むと、複数クラウドサービスを個別に利用するケースが増えてくる。一部門ではBox.net、他部署ではAWS S3の様に、企業情報が分散的に管理される状況が容易に発生する。各クラウドストレージ事業社は他の事業社とデータの互換性は保証する事は殆ど無い上、業界標準的な共通仕様もまだ存在しないため、第3社が異なるクラウドストレージ間のデータ変換を個別に行う必要がある。運用方法としてはいろいろあるが、複数クラウド上で運用されているデータのバックアップを一カ所のクラウドで統一して行う等、コスト面、セキュリティ面、運用管理面に着目し、MDM(Master Data Management)戦略の一環としてクラウドストレージを採用するケースは増加している。
3)クラウド間のバースト、バックアップ、DR等の複合運用
ゲーミング、SNS、ストリーミング、等、ユーザからのアクセスのトラフィックに大きな時間的案格差があるアプリケーション、また、その増減が予測しにくいアプリ等は、仮想マシンを必要に応じて自動的に増減出来る、オートスケーリングの機能を採用するケースは多い。これを俗にバースティングと呼び、通常プライベートクラウドで運用しているシステム(もしくはパブリックもある)のCPUもしくはデータアクセスの負荷が急激に増加した際に、別なクラウド(通常パブリック)のリソースを使い、自動的にインスタンスを増やし、システム性能に影響を出さない方法を指す。
また、こういったマルチクラウド間の運用方法として、自動バックアップのシステム等も採用される。特に、DR対応を必要とする際に、クラウドインフラに2時的なバックアップシステムを確保する方法は米国では多くなって来ている。
4)マルチクラウドの統一した監視、報告、自動化、等の運用管理
マルチクラウドを利用した運用が始まると、システム全体の状況を監視し、状況を報告し、障害の未然防止、迅速な対応等を確保する為の管理システムを対象となる複数クラウドに対して提供する必要性が出てくる。特に、業務全体のSLAやセキュリティを高めるためのマルチクラウド運用、と言う事であれば、システム管理も大変重要な要件になってくる。それぞれのクラウドの特性を良く知り、尚かつ特定のクラウドベンダーに偏らない独立なベンダーである事が理想的である。
上記の4つはまだ現在採用されているもののみであり、今後もっと多くのクラウド運用機能が出てくるもの、と想定される。また、仮想化技術、クラウドAPI技術、各社IaaS, PaaS事業社と同様に、複数のプレイヤーが登場するもの、と考えられるが、どのベンダーも上位、下位のベンダーとは独立な、全く異なる技術力を持ったベンダーが市場をリードするもの、と考える。
IT市場全体で果たしてクラウドコンピューティングがどの程度広がっていくのか、という意見は、未だに業界内で大きく別れている。恐らく、クラウドコンピューティングが影響を与える市場セグメントが非常に広いため、そのセグメントによって捉え方が大きく異なってくる、というのが原因である、と想定される。
例えば、ERPを利用する立場からすれば、クラウドとは、即ちSalesforce.comをはじめとしてSaaSアプリの事を指す。
MSPや、企業内のIT管理者の立場からすれば、クラウドはAWSを代表とするパブリッククラウドや、企業内に構築するプライベートクラウドを指す。
企業内の部門ユーザからすれば、クラウドは、即ちOffice365若しくはGoogleAppsの事や、各社登場しているクラウドストレージサービス等を指す。
それぞれのセグメントによって、クラウドの定義、価値観が異なる為、全部を一緒に評価する事が難しい上、ある意味ではあまり意味の無い事の様にも思える。
上記はIDC社が発表したクラウドコンピューティング業界の市場シェア予測に基づいて作成されたグラフである。このグラフを通して、IDC社が見ているクラウド市場の動向がいくつかのポイントに整理出来る。
1)クラウドコンピューティングの市場シェアは、2012年においてもIT市場全体の8.5%程度しか無い。ただし、2008年からの成長率を見ると、年間で25%の成長率を達成し、従来のOn-Premise ITの市場の成長率(18%)と比較して大きく伸びている。これからの伸びに大きく期待が寄せられている事である。
2)クラウドアプリケーションの半分以上(52%)は、ビジネスアプリケーションであり、いわゆるSaaSアプリケーションで占められている。主要なアプリケーションとしては、Google Apps, Office365といった企業のメール/ドキュメント管理系のアプリケーションに加え、Salesforce.comに代表される、SCM, CRM系のアプリケーションが大方を占めている、と考えられる。
3)クラウドアプリケーションの残りは、ITプラットホームやインフラに関するもので、IaaSやPaaS等のソリューションが中心である。クラウド市場が、アプリケーション系の市場とインフラ系の市場の2つに大きく分類され、市場を半分ずつ占めている、という状況が見えてくる。
4)企業におけるクラウドコンピューティングの利用は年ごとに増加していく事が予測されるが、急激に従来のIT資産を置き換えるのではなく、時間をかけて確実に移行していく姿が予測されている。
クラウドコンピューティングは新規の技術として捕えるのでは無く、新しいITの利用方法として解釈する必要がある事がこの資料から伺える。現在はSMBやゲーム/SNS市場での浸透が目立つが、時間をかけて業界全体に等しく広がっていくもの、と見る必要がある。過去の登場したインフラ系のITモデル(クライアント/サーバ、Webアプリケーション、等)と同様に、セキュリティ、プライバシー等の課題を解決する必要があるが、これも過去のITインフラが解決していったのと同様に着実に解決する方向に向かうもの、と考えられる。
この浸透に伴って、従来のインフラと同様に幾つかの共通課題に対する取り組みも登場してくる、と言える。具体的には次の様な項目は少なくとも明確になっていく、と想定される。
1)セキュリティとプライバシーへの対策の明確化と市場の理解
2)それに伴うコンプライアンスの考え方の定着
3)主たるベンダーの登場と市場の確立
4)標準的な価格帯への落ち着き
5)事実上のde-facto standardの登場、等がある。
個人的には、NISTを主軸としてAPIの標準規格化が動きとして進むと思うが、業界自体はそれより遥かに速いスピードで事実上の標準規格、ユースケースモデルをつくりだしていくもの、と思われる。クラウドコンピューティングの市場は、オープンソフトウェアの市場と非常に緊密な関係にあり、その世界での規格化のスピードは、NISTより遥かに早いものがあるからである。
標準化、という方法論についても大きく考え方を変えて取組むべきである、と考える。
この図は、Gartner Groupが昨年11月に発表した、同社としては初めてのクラウド市場に関するMagic QuadrantとHype Cycleのレポートから、Hype Cycleの表を抜粋し、その分析を行ったもの。
クラウドは、そのキーワードが登場してからかなりいろんな新しいキーワードが派生して登場しており、いくつかのグループ分け、分類なくしては非常に混乱の要因になる市場になって来ている事がこの表だけでもわかる。
次の様な4つの傾向と分類が考えられる。
1)IaaS、PaaS、SaaSといった、クラウドコンピューティングが登場した当時から存在していたキーワードは既にピークを越え、”Trough of Disillusionment”(幻滅、失意)の領域に入りそうである。これは、当初の大きな期待が持たれていたこれらXaaSといったキーワードは話題程の価値を業界全体に提供していない、という状況を反映している、と言える。当然SalesForce.comやAmazon Web Servicesの様に一定の成功を収めている企業も登場しているが、IT市場全体の規模と比較すると、まだごく一部のシェアを獲得している、と言う方が正しく、当初市場を席巻するのでは、と想像されていたクラウドは実はある特定の市場領域での成長に限定されている、という意識が特にエンタプライズ市場において持たれている、というのがGartner Groupの見解の様である。
2)Big Dataに関連した新技術に大きな注目が置かれ始めている。企業内のデータを如何に有効活用するか、特に大量の情報を整理し、必要な時に必要な情報を引き出せる能力、重複している情報を統合し、一元化する能力が基幹システムに要求されており、クラウドインフラを利用してそのデータを比較的安く一括管理出来るソリューションが期待されている。その技術としてHadoopやCassandra等のBig Dataが注目されており、それを利用するアプリケーションとして、クラウド上のBPM等が今後成長していく、と予測されている。クラウド利用事例の有効なモデルとして評価されていく事が想定される。
3)クラウド間コラボレーションは、クラウド利用が段々と定着し、企業内で複数のクラウドを利用する環境が出来た時に必要となってくる管理面での課題に対するソリューションの総称である。Cloud Collaboration、Hybrid Cloud Computing、Cloud Services Brokerage、CloudBursting等のキーワードは全て複数のクラウドを組み合わせてより高度なクラウドの利用方法を実現しようとする方式である。
4)クラウドセキュリティに関しては今後は強化されていく方向は業界全体が求めている事であり、具体的なソリューションが今後登場していくと期待されている。従来のOn PremiseやWebアプリケーションの導入/運用で要求されて来たセキュリティの提供をクラウド環境にも適用していく動きはある上、一部その業界標準化、もしくは業界をして受け入れることが出来るセキュリティ基準の様なものが作られていく事が想定される。
こうやってみていくと、クラウドビジネスは段々と実際に採用、導入、運用し始める事を通して生じてくる、より具体的な課題に話題が移行しつつある事がわかる。当然と言えば当然であるが、この中で一番押さえどころは、やはりセキュリティを明確に打出すクラウドソリューション、と言うところではないかと思う。定量的な評価がしにくいファクターである上、クラウド上のセキュリティの基準、と言う者が存在しないため、何を持ってセキュアなクラウドなのか、という共通の理解を得るのが難しいからである。

2012年が始まり既に1/4が過ぎましたが、クラウド業界は想定通り、さらに活発化している模様である。
しかしながら、クラウドコンピューティングが技術として、さらにビジネスモデルとして浸透していく中で、市場の関心は段々と進歩していっている、と言える。
2010年、クラウドコンピューティングが話題として大きくなった頃はクラウドの定義についての議論が市場を賑わしていたと言える。既にSaaSやPaaS等のキーワードは或る程度市場に浸透しており、Salesforce.comに代表される新しい時代のベンダーの成c長著しい状況が紙面を賑わしていた。とは言え、現実にクラウドコンピューティングを自社のITソリューションとして導入するケースはまだまだ少なく、注目はクラウドコンピューティングの定義、と言うものについての話題が多かったといえる。SaaSとは何か、PaaSとは何か、そしてIaaSとは何か、業界内でも意見が異なるケースもあり、明確な定義を求める市場に同期して、標準化を試みる団体の登場も増えてきました。
当時、特にキーワードの定義の面で話題になっていた要件としては次の様なものがある。
• SaaSアプリケーションとウェブアプリケーションの違い:マルチテナントでSubscriptionモデルで課金/請求すれば仮想化環境では無いプラットホームで動くウェブアプリケーションもSaaSと呼べるのか?
• PaaSも同様に、クラウドプラットホームで稼働するアプリケーションを開発する環境ではなくても、開発環境自体がマルチテナントでSubscriptionモデルで提供されればPaaSと呼べるのか?
• VMWareベースの仮想化環境でマニュアルでVMを供与する環境もIaaSと呼べるのか?
現在、クラウドコンピューティング全般に関する定義として市場でも最も認知度が高い、とされているのは、米国政府機関である、NIST(National Institute of Standards and Technology)が発行している、”The NIST Definition of Cloud Computing”である、とされている。特に政府機関向けのクラウドコンピューティングに関する受注要件としてこのドキュメントに準拠している事が要求される事が多い。民間市場でも等しく影響力はある、とされているが、市場での技術の進歩は早く、ドキュメント自体の改訂がそのスピードについていけないのでは、という懸念も一部ではあり、そもそも標準化、ユニバーサルな定義、というもの自体の価値観については意見が分かれ始めているのも、クラウドコンピューティングの市場の一つの特徴である。
2011年は、さらにクラウドを実際に導入し、ビジネスに適用するモデルとして様々な事例が登場し始め、プライベートクラウド、パブリッククラウド、ハイブリッドクラウド、マルチクラウド、等のキーワードが頻繁に登場する様になって来た。いずれも、単一のクラウドを利用する環境から、複数の異なるクラウドを組み合わせる環境に移行し、より高度なIT環境を構築しよう、という動きの中から生まれたキーワードである。もう、この時点に於いてはパブリッククラウドとして、Amazon Web ServiceのTokyoリージョンは稼働を開始しており、実際に利用する企業、またはシンガポールリージョンに既に運用をして東京にそれを移す企業等が増加している。同時に、日本国内のクラウド事業社として数社サービスを開始するところも登場し、今までコンセプト的な位置づけだったクラウドが、2011年には実際に利用出来るサービスとして定着し、複数組み合わせた利用方法に議論が移行し始めている。
2012年は、その状況からさらに発展して、より具体的な利用方法についての議論が進むもの、と考えられる。特に、今まではクラウドを利用する事に置かれていた関心が、クラウドを利用することによって得られるROI(投資対効果)を具体的に見いだす事に移行するが大きな動きとして上げられる。
クラウドを利用する事によって実際に得られるビジネス上の効果、というのは広義の意味では、コスト削減やスケーラビリティ等の効果が考えられているが、企業として本格的にクラウドを採用する為に必要な機能もまだ十分に整備されていない、という事も明らかになってきている。2012年はこれらの不足している部分を補完する為の様々な動きが活発化する事が予測され、それに伴ってクラウドの利用度が一気に拡大するものと思われる。
次が特に注目すべき機能や利用モデルである。
1)BigDataを利用したクラウド
クラウドが特に威力を発揮するのは、大量のデータを保存、管理し、同時にそれを検索等を通してアクティブに利用することが出来る、という面である。BigDataやNoSQLと呼ばれる技術は正にこの大量のデータを効率よく管理、運用する為の技術であり、そのデータの管理先をクラウドストレージに置くことによって、従来の企業内に置く高額なSANインフラ、Data Warehouseシステム、等をリプレースするソリューションとして注目されていくもの、と考えられる。
今後登場するキーワードとして、次の様なものがある。
✴ Data Sharing/Collaboration: 企業内、企業間で大量のデータを共有しコラボレーションアプリケーションを運用する事。企業内SNS等の動きが活発である。
✴ DBaaS (Database as a Service):企業内のデータベースシステムをクラウド化する動き。SQLアプリケーションをクラウド上で運用する為のインフラが必要となる。
✴ CloudBPM (Business Process Management), Data Warehouse, BI(Business Intelligence):企業のデータを管理、さらに分析を行うことにより、事業判断を迅速に行う為のツールは従来よりエンタプライズの戦略的なアプリケーションとしてIT投資が行われて来たが、クラウドを利用する事により、コストを大幅に下げ、さらにモバイルデバイス等のサポートも容易にする点、大きく評価されている。e-Discoveryやe-Document等のコンプライアンス向けのアプリケーション等も登場しており、今後急激に成長するもの、と予測されている。
✴ Cloud MDM (Master Data Management):企業内で各部門間で共有されるデータを総合的に管理するシステムとして構築されるツールやプロセスの集合体。Cloud MDMはこのデータの統合をクラウド上で行う方式を採用し、物理的に離れたシステム間の統合を効率よく行う点で有利な面がある。特に企業間の合併、M&A等による統合等がMDMを適用するニーズが多く発生している。
2)マルチクラウドコラボレーション
✴ ハイブリッドクラウド:複数のクラウドを統合して運用/管理する状態を指す。特に最近注目されているのは、企業内で構築したプライベートクラウドと外部のパブリッククラウドの両方で企業のアプリケーションを運用するケースであり、セキュリティ、パフォーマンス、コスト管理、ID管理、等複数の面で総合的な管理をする事が要求される。
✴ クラウドバースティング:通常はプライベートクラウドで業務を運用し、データ、CPUのいずれかのニーズが急増し、プライベートクラウド上のリソースだけでは運用しにくくなった状況において、必要に応じてパブリッククラウドのリソースを利用し、システム全体として性能、許容量、拡張性等を維持するソリューションである。e-Commerceアプリケーションや、ゲーミング、SNS等、トラフィックの増減が急激に、それも予測しにくい状況の中で変動するアプリケション等はこの方式を取る事によってシステムの最適化が図れる。
✴ コミュニティクラウド:ある特定の団体が、ある特定の目的を達成する為に共同で構築し、運用するクラウド環境。プライベートでもパブリッククラウドの両方で運用する事が可能である。
✴ DRソリューション:複数のクラウドインフラを利用して、企業で利用する業務環境の一部または全てを多重化し、パブリック、もしくはプライベートクラウド運用で起きうる障害に対するシステムの可用性を確保する為のマルチクラウド運用方式。単一のクラウドの運用方式では、業務運用がそのクラウドプラットホーム上で起きる障害に100%依存してしまう為、クラウド運用の多重化をする事によりリスクを分散する方式であるが、運用管理インタフェースは統一する事によって複数クラウドの運用を容易にする事が狙いである。
3)セキュアなクラウド
✴ クラウドセキュリティの可視化:クラウド運用で最も懸念されている2つの問題は、セキュリティとプライバシーである。この2つの問題が解決されることによる効果非常に大きく、クラウドサービスを提供するIaaS事業社の殆どは、この問題に対する取り組みを最大の課題として取組んでいる。2012年はむしろこの2つの課題の解決策をクラウドサービスの強みとして打ち出していくベンダーが増えていく、と予測される。戦略の打ち出し方として最初に想定されるのは、セキュリティに対する取り組み、対策の可視化である。ユーザにクラウドサービスのセキュリティレベルを定量的に評価、比較する事が出来る次の指標を打ち出す事がポイントとなる。
✦ セキュリティポリシー:顧客資産管理のセキュリティに関するポリシーの策定、公表
✦ データ暗号化:どの様なデータをどういう技術を利用して暗号化しているのか
✦ ウィルス防止:どの程度の頻度でウィルス対策を行っているのか
✦ 外部からの攻撃:DOA(Deny Of Access)攻撃への防御、DPI(Deep Packet Inspection)等の対応
✦ 24時間技術サポート:24*7体制で電話/eメールの保守サポートの有無
✦ 物理的セキュリティ:データセンタ拠点のセキュリティ(警備員、入出退管理)
✴ Private PaaS:従来企業内の閉鎖された環境の中で行われていた業務アプリケーションの開発を、パブリッククラウドに移行し、ただしその条件として、セキュアな環境をPaaS事業社に要求するケース。VPC(Virtual Private Cloud)の提供に加え、上記のセキュリティ対応も要求される。
✴ VPNクラウド:AWS等は既に提供しているが、顧客とパブリッククラウドの間に専用のVPNネットワークを構築し、さらに場合によっては、クラウド上の資産も特定のハードウェアし、他企業の資産と物理的に切り離す運用をサービスオプションとして提供する方。
エンタプライズ市場にクラウドの利用が浸透していく為には、この辺の技術の提供、サービス内容の充実が必要な要件になって来る事は明らかである。技術的には然程難しい事ではない一方、恐らく課題になるのは、従来のOn Premiseでの運用と比較してROIが改善されるかどうか、コスト面での評価がポイントになる、と考えられる。
さて、先日述べました、クラウドポータルの話について、もう少し具体的な説明したいと思います。
ユーザに対するクラウドサービスを、人を介せず提供するシステムであるクラウドポータルとして、クラウドサービスに付随して提供する必要がある機能がいくつかあります。
(1)ID管理
クラウドポータルのユーザを管理する機能です。クラウドサービス自体は、複数のアプリケーションの集まりなので、構造上そのインフラ上には、IaaS環境のユーザディレクトリの他に、クラウド上の各SaaSのユーザディレクトリ、下記の機能がそれぞれ管理するユーザディレクトリ、等複数のユーザ管理DBが存在するシステムになります。これらのユーザディレクトリをLDAP統合し、統一したユーザプロビジョニング/デプロビジョニングが出来る機能がどうしても必要になります。ユーザの個人情報を扱う機能でもあるため、クラウドサービスのセキュリティにも直接的に関係してくる機能である上、J-SOX準拠の条件にもなってくる重要な機能である、と言える。クラウドアプリ上のLDAPの統合が出来、尚かつ場合によってはクラウド上でその統合ディレクトリを管理できるID管理システムが必要になってくるわけです。
クラウドサービスを開始すると、無償ユーザも含めて、管理対象となりIDの数が極端に多くなる可能性があり、そういう意味でも効率よく管理する必要性も出てくる。
(2)課金管理
e-Commerceサイトと同様に、クラウドサービスもユーザから収益を上げる事がビジネスモデルですので、IaaSサービスにとっても、ユーザのクラウドサービスの利用度に則して課金をするシステムが必要になってきます。クラウドサービスの大きな特長は、課金の対象となるのは、様々な”単位”に基づいて課金を行わなければいけない、という事である。確たる定義が業界である、という訳ではないが、次の様な単位での課金が要求されます。
ストレージデータ量(MB単位)
使用時間(分/時間単位)
ユーザ数(ユーザ単位/グループ単位)
CPU単位(実CPU数/サイズ)
VM単位(実VM数/サイズ)
メモリ単位(GB単位)
IPアドレス単位
また、課金方式もAWSが展開している方式を事例に多様化している。次の様なモデルがあります。
オンデマンド(必要時に利用する時の課金方式)
予約方式(事前に一定期間利用する事をコミットする際に予約できる方式:少し安くなる)
データセンタ指定価格(特定のデータセンタを指定して利用する方式:少し高くなる)
オフピーク価格(余剰のクラウドリソースを安く売る方式:安くなる)
無償トライアル(初期使用を無償で提供する、俗にFreemiumと呼ばれる方式)
バンドル価格(上記の複数の価格体系を纏めてわかりやすくパッケージ)
プロモーション(特定のプロモコードを設定して無償で提供)
こういった機能の提供に加えて、PCI-DSS準拠等の要件に応えるためのセキュリティ要件、しかるべきペイメントゲートウェイとの連携、等かなり広い範囲の機能サポートが必要になってきます。
ビジネスとしてのクラウド事業の収益を決める重要な機能であるため、十分時間とリソースをかけて設計していく必要のあるコンポーネントです。
(3)コミュニティ運営
クラウドコンピューティングが他のIT事業と大きく異なるポイントは、ユーザ主導のビジネスである、という事です。つまり、ユーザにとって魅力的なサービスでないと、クラウドコンピューティングのモデルの性格上、直ぐにユーザが離れていってしまう、という意味を持ちます。クラウドサービス自体の魅力でユーザを引き止める、と言うのは段々とクラウドサービスが汎用化されていく中で困難になってきている上、価格で勝負するのも、よっぽど運用コストを他社と比較して低く抑える要素が無いと、リスクが大きい、と言えます。
そこで、主たるクラウドサービスが採用しているのは、ユーザ参加型のコミュニティを構築し、様々な有用な情報が集まるサイトを運営する、という方式です。企業向けのソーシャルネットワーキングサイト等も多く登場している状況の中で、クラウドサービスのSNSを提供したり、オープンソフトウェア事業者がよく運営する、フォーラムやユーザ主体のFAQの運営等、いくつかのアプリケーションを組み合わせて、ユーザが情報を提供しながら、ベンダーが適切なアドバイス、技術質問に対する回答等を提供する様な環境です。このようなコミュニティの運営を通して、特に貢献しているユーザに対して、割引等のクーポンを提供する等、インセンティブを提供するサイトも増えてきている。
(4)CRM等の顧客管理システムとの連携
クラウドサービスを提供する事業社は、既に他のITサービスを提供しているケースも多く、既存のシステム上で顧客管理システムが運用されているケースが多い。この既存のCRMやERPシステムに新たに構築したクラウドサービスを連携させる事によって、クラウドサービス事業の利用状況、収益状況等のレポーティングが出来る様になります。また、既存のITサービスのユーザを新たに追加したクラウドサービスに移行させる際にも、ユーザ情報等を出来るだけ簡単にクラウドシステム上のID管理システムに移す際にも、既存の顧客管理システムとの連携が継続的に必要になってきます。
ここも、課金方式の違い、ユーザ管理方式の違い(トライアルユーザが極端に多い状況、等)、契約形態の違い、等、従来のITサービス事業とクラウドサービス事業との違いを意識した連携を図る必要があり、意外と工数が大きくなる可能性がある、と言えます。
いずれも、通常のE-Commerceシステムには当然実装される機能ではあるが、クラウドサービスであるが故の特徴があり、それが実装上の違いとなって出てくる、という事が理解されると思います。
昨今では、クラウドプラットホームをサポートする製品、という位置づけで、クラウドサービス向けのID管理、課金管理、コミュニティインフラ、レポーティングインフラ、セキュリティインフラ、等のソリューションが多く登場しており、多くはSaaSとして提供されます。SaaSであるが故に、統合も比較的簡単で、以前にも紹介した、クラウドIntegration APIの存在が大きく寄与してきます。
VMWareをベースとした、ほとんどのインスタンス管理作業が人を介した手作業で行われる今日のクラウドインフラと、世界で広く普及しつつあり、上記の機能を有する自動化クラウドサービスインフラとでは、かなり大きな差が生まれてきている、という状況を理解して頂けたと思います。
問題は、これらの機能を実装するとなると、複数のコンポーネントを統合する必要が出てくる、という事です。基本的にSaaSの組み合わせなので然程技術的には難しい事ではないんですが、他で実績をあげている事例をを参考にする事が重要な要件になるでしょうし、とにもかくにも、様々なコンポーネントを連携できるクラウドAPI基盤を実装する事が何にも増して重要な選択になる、という事です。
小生が最近強く提唱しているのは、クラウドAPIの独自開発はもう既に遅い、という点です。
むしろ既に市場で実績をあげている3rd PartyクラウドAPI製品を出来るだけ早く導入し、その上での各種サービスのレイヤーにおいて差別化を図るべく、開発リソースを投入すべき時代に入っている、という事を主張してます。
日本市場は、2011年はクラウド技術からクラウドビジネスの時代に本格突入する、と予測してます。
クラウド基盤の是非を問う事は愚か、クラウド基盤を導入する事だけをゴールとする、という技術主体の事業戦略は既に大きく先に進んでいるクラウド市場に対して、更なる遅れをとる大きなリスクとなります。今でこそ、一歩先を行ったクラウド”事業”戦略を打ち出すタイミングに来ている、と述べたいところです。
明けましておめでとうございます。
去年に続き、今年もクラウドビジネスが盛り上がる一年になりますよう、お祈り申し上げます。
しばらく間が空きましたが、クラウドサービスの重要なコンポーネントとなる、クラウドポータルについて論じます。
クラウドポータルとは何か?
名の通り、クラウドサービスを提供するポータルサイトの事を指します。
Yahoo!やGoogleのように、企業としてユーザに提供する様々なサービスの入り口としての役割を持つポータルサイト。
クラウドポータルはIaaSを提供する入り口としての役割をもつサイトの事を指します。
Amazon Web Serviceのクラウドポータルサイトの入り口はここ。
http://aws.amazon.com/
Rackspace Hostingのクラウドポータルサイトはここ。
http://www.rackspacecloud.com/index.php
SoftLayer社のクラウドポータルはここ
http://www.softlayer.com/cloudlayer/build-your-own-cloud/
GoGrid社のクラウドポータルはここ
http://www.gogrid.com/?Camp=GG%20NA%20Brands&kw=gogrid&gclid=CLzD9-HDhaYCFR9NgwoddiY5mw
見ての通り、まさに各社が提供するクラウドサービスの入り口となるサイトです。
これらのクラウドポータルサイトを利用する事によって、特に日本市場で現在提供されているクラウドサービスと比較して、大きく異なる点は次の通りです。
1)クラウドサービスを受けるためのプロセスが人間を介さず、ほぼすべてが自動化されている事。
2)ユーザが参加できるコミュニティの形成に力を入れている事。
3)技術サポートを提供するオンラインヘルプが非常に充実している。
こういった違いがどういう所からうまれているのか、少し分析してみたいと思います。
一つには、こういったIaaSサービスの提供に対して、技術的な角度からメリットを説明するのではなく、企業のITソリューションの角度、特にビジネスソリューションの角度(具体的にはコスト削減と時間短縮)から説明をしており、ターゲットを企業のIT部門ではなく、企業内のITユーザに完全に照準を置いている、という事です。北米では、AWSのエンタプライズでの利用者が急増している、とされているが、大企業の各部門単位での利用から始まり、段々と企業内に広がり、最終的に企業全体としてのAWSの利用ポリシーがIT管理側で後付で決まっていく、というパターンが多い、との事です。AWSがそもそも狙っているのは、大企業の基幹業務ではなく、各部門で使われる情報系のアプリ、特定の業務アプリケーションのクラウド化であるため。
各部門のユーザの立場としては、技術的な優位性よりかは、自分たちの業務を如何早く、安く達成できるかどうかが重要課題であるため、クラウド提供側からのメッセージも自然とそういう内容になっていく、という理屈です。
もう一つは、こういった部門毎のユーザを如何に引きつけておくか、という事です。理解しやすい顧客サポートインタフェース、ユーザが積極的に参画できるユーザフォーラムやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)の提供、等ユーザからのフィードバックを背局的に収集できる仕組みを提供する事です。これによって、常にユーザのニーズを把握する事が容易になり、そのニーズに応えるための動きを迅速に図れる、というわけである。サービスである以上、常にユーザの求めている事にアンテナを張り、『活きているサイト』というイメージをユーザに植え付ける事が重要でる、と言えます。
クラウドポータルを構築する上では、これらのサービスを、如何に自動化するか、という要件です。
北米のほとんどのクラウドサービス事業社は、自分のクラウドサービスの通常の運営を、ほとんど人手をかけずに運用している、というのが現状です。様々な自動化ツールの採用、トラブルシュート等の技術サポートについてはサイト上のFAQの充実、フォーラム等の運営等を通して、サービス提供側から人間が登場しなくても大方のサポートが提供されるシステム構造を持つためです。
ここまでくると、クラウドポータルというもの、単なるWebサイトではなく、ユーザシステムとしてはかなり高度なものとして捉える必要が出てくる、という事がいえるます。
さて、ポイントは、どれだけ高度なものにすべきか、という点であります。
一寸長くなってしまいましたので、続きは次回に。
前回のブログの続きです。
クラウドAPIについて書きましたが、今度は、クラウドアプリケーションたるべき条件ということについて少し言及したいと思います。
クラウドプラットホームになると、従来のSIの中核的な作業であったアプリケーション間の連携、という事に対する考え方が大きく変わってきます。クラウド上の世界は、ある意味では「何でもあり」の世界です。
あっと、ここで明確にしておきたいのは、クラウドアプリ、というのは必ずしもSaaSだけではない、という事です。SaaSは、
言葉の通り、Software as a Serviceを意味しており、ソフトウェアの使用権をライセンスで販売するのではなく、月額費用で徴収する、という販売モデルをもったソフトウェアビジネスの事を指します、厳密には。月額収入のモデルでは、従来のライセンス事業で別枠になっていた保守サポート費用というものが、使用権と一緒に含まれるため、極力バージョンの数を減らし、保守コストを少なくする事が重要になります。バージョン数を減らす、という事は顧客の利用するコピーの数を減らす、という事であり、つまりシングルインスタンス/マルチテナントの構造を持つ、という事に結びつきます。
クラウドアプリケーションたる条件として、今は次の2つの要件がある、と考える様にしています。
(1)Integration APIを持つ事
クラウド上では、アプリケーションの統合、連携が非常に簡単に出来る事がどうしても必要になります。クラウド環境に於ける標準化、というのは当面期待できそうも無いので、アマゾンクラウド、Rackspaceクラウド、合わせて日本のクラウド市場で開発されている様々な独自仕様のクラウドAPI、等いろんな仕様のクラウドが乱立しています。アプリケーションも、自分が乗っているクラウド以外の所との連携がどうしても必要になってきます。その際に、その連携先のアプリケーションを自分のクラウドプラットホームに移植するのではあまり意味がありません。異なるクラウド同士のアプリケーションがお互い連携し合うためのAPIを公開する事によって容易な統合を実現するのが筋です。これがIntegration APIの考え方です。APIの内容はアプリケションの種類によって異なってきます。ID管理、セキュリティ、課金、データバックアップ、をはじめ、いろいろと種類が出てきてますが、それぞれ、ある程度汎用化されたAPIセットを公開する事によって、比較的簡単に他のアプリケーションとの連携を実現できる様にする、という事です。
こういったAPI公開が一般的になってくると、クラウドアプリケーション同士の自由な連携が出来る様になり、尚かつそれがSIサービス事業によって支えられる、というビジネスモデルが成立します。
(2)Template APIを持つ事
クラウドアプリケーションは、基本的にユーザの固有のニーズに対するカスタマイゼーションを行わないのが基本です。シングルインスタンス+マルチテナントの構造なので技術的に出来ない、という事です。しかしながら、各クラウドアプリケーションが、ユーザ独自のテンプレートを構築できる様なインフラをサポートする事によって、こういったニーズにある程度答えられる様になる、というのが最近のクラウドアプリの動きです。テンプレートの対象になるのは、帳票等のフォーマット、付加価値を提供するアプリケーション、等顧客固有のニーズに答えるためのユーザ付加機能です。
さらに、
● クラウドアプリケーションベンダー自体が開発し、提供するテンプレートライブラリ
● ユーザコミュニティを通してユーザが公開(有償の場合もあり)するテンプレートマーケットプレイスの運用
● 3rd partyアプリケーションベンダーがこぞってテンプレートを提供するライブラリ
等、いろいろな形でのテンプレートを公開するビジネスモデルが登場し始めている。
さながら、パズルを組み合わせる様に、各々のクラウドアプリがそれぞれ「つなぎ口」を用意し、他のアプリケーションとの連携、さらにクラウドならではのカスタマイズの手法を提供する事により、ユーザにとっては非常に多様性があるシステム構築の方法が出来上がる、というのが今後のクラウドコンピューティングの大きな強みとなって成長していくのではないか、と思うところである。
今までは、SaaSアプリケーションというのは単独で顧客層を稼ぎ、単独の事業としての力を問われてきた面があるが、これからはいかに複数のクラウドアプリを複合化する事によって付加価値、差別化、をうむことが出来るのか、に注目が集まるのでは、と感じる所である。ましてや、SI中心のIT市場である、日本の様な国に取っては、この辺のソリューション事業は多いに育つ可能性があるのではないか、と感じる所である。
ガートナーグループが自社のコンファレンスをラスベガスで開催し、昨今のクラウドのビジネスについて論じている。特に興味深いのは、同社のVPであり、 Distinguished Analystの肩書きを持つ、Thomas Bittman氏の発表内容である。
要約すると、今後のクラウド市場は様々なクラウド事業が乱立する市場になり、その中には消えていくサービス事業社も出てくる、という事である。
非常に興味深いのは、消えていくクラウド事業者の中には、大手の企業も含まれる公算が大きい、という事をしてきている事である。 Bittman氏の分析によると、クラウド事業というビジネスにとって、最も重要な要件は、"Agility”、つまり迅速性だ、という事である。
この迅速性、という重要な要件に対して、特に大手のクラウドベンダーがついていけなくなる可能性がある、という事を指摘している。
過当競争の中で一部のベンダーが敗退し、事業撤退する、という事は何も今日に始まった事ではないが、特にクラウド事業という話になると、企業の重要な資産、個人情報、機密情報を管理するインフラ事業になるので、企業としては、万が一の際のバックアッププランを常に用意しておく必要がある、という事が述べられている。先日欧州でAWSが障害を起こし、一部EC2サービスが停止したが、今後も規模のかなり大きい障害が起き、企業の運営に支障をきたす事件が起きる可能性が大いにある、と考えられる。クラウドベンダーにとって、こういった障害事件は致命的な結果をうむ事もありうる。
Bittman氏が述べている中で、もう一つ興味深いのは、今後上記のリスクを避けるためにもクラウドブローカー事業が伸びていく、と述べている。具体的には複数のクラウド環境に企業の資産を分散もしくは多重化し、有事の際にもビジネスに支障を来さないための戦略を構築し、運営を関する事業者の事である。Gartnerの予測では、2015年には、20%のクラウドビジネスはこういったブローカーを通した運用になる、と予測している。
筆者もクラウドビジネスの最重要課題は、「Agility=迅速性」である、と強く感じるところである。
以前も書いたが、ユーザの方がむしろ、クラウドに対する期待として、「直ぐに使える」という事を第一に考えている、と解釈しており、クラウドサービスを提供する立場からすれば、この第一の期待に答えるスピード感のあるサービスを提供でき空ければ、あっというまに競合に客を取られる危険性がある、と感じる。意外と、組織の規模が大きい、大手のITベンダーが、この迅速性を提供するのに苦労するのではないか、と感じるところである。 現に、北米のクラウド事業者のリーダーは、どちらかと言うと昔ながらの大手IT企業ではなく、新興企業である、という理由もわかるというものである。
迅速性を優先すると、顧客のニーズをきめ細かく聞いて、SIがシステム構築を代行する、というスタイルよりかは、ユーザが直接オンデマンドでシステムを構築し、自分でシステムを運用するスタイルが多くなる、という事も想定すべきである。完全にユーザ主導のIT構築である。SIはどちらかと言うと、後から入ってきて、ユーザが独自に構築できない部分をカバーする、という方法論かも知れない。
サービスビジネス、というのはそういうものだ、とかえって割り切って考えないと、ユーザの期待とIT企業の思惑に大きなずれが生じる可能性がある、と思うところである。
最近、CloudAPIというキーワードをよく聞く人が多いのでは、と思います。
CloudAPIとは、いわゆるVMハイパーバイザーのレイヤーの上に乗っかるソフトウェアコンポーネントが提供するものです、簡単に言ってしまえば。コードベースとしては然程巨大ではないですが、ハイパーバイザーの統合に加え、ストレージ、ネットワークのインタフェースの統合も一緒に行う事が期待されます。
また、このソフトウエアコンポーネントは、複数VM上に乗っかるケースが多く、場合によっては異なるハイパーバイザーを同時サポートするケースもあります(Cloud.com等)。さらに、仮想マシンやISOイメージ等を生成/コピー/削除したりする機能を自動化したり、GUIを通して非常に簡単に管理できる様な管理者コンソールや、ユーザ画面等もあります。課金システムとかID管理システムとも連携し、さしずめ、VM環境のAggregatorツール、という風に解釈する様にしてます。
このCloudAPIを提供するソフトウェアベンダーは数社存在します。日本で恐らく一番有名なのは、Eucalyptusだと思います。Open Softwareとして提供され、無償版はダウンロードして評価を簡単に出きます。気に入ったら、Enterprise Editionという有償版を買うステップに移ります。そうすると保守サポートや、定期的なアップデート等、製品ととして必要な支援をベンダーから受けることが出来ます。
他にはCloud.com、Nimbula、そして過去のブログでも結構取り上げた、Open Stack等があります。 他にも数社ありますが、新しい会社が多く、これから市場が伸びていくものと思われる領域です。
この辺の技術が伸びている訳は、やはりAmazon Web Serviceが背景にあります。いまやサーバ数では市場の半分近くを占めている、と見込まれているAWSは、CloudAPIの事実上の標準仕様(deFacto Standard)を作りあげ、そのAPI上に非常に大きな 3rd Party ISVのエコシステムを築いています。
上記の製品群、当然の様にAWS準拠を必須機能としてサポートしてます。あっ、Open Stackだけは例外です。これはどちらかと言うと、Rackspace Hosting等、Amazonに対抗するベンダーが集まって作った標準化団体なので、準拠させるモチベーションがあまり無いと思われます。
最近、日本でも独自のクラウドAPIを開発する動きがある、と感じます。日本ではVMWareベースのクラウドソリューションが多い中、vCloudの登場をそれなりに待ちつつも、独自仕様を開発する動議付けが強まったから、と分析してます。動議付けの理由は次の通り。
1) vCloudは恐らく、かなり高額な商品になる、と想定されている。VMWareだけでもかなりのコストなのにvCloudが加わったら、クラウド事業が赤字経営になってしまう。
2) 日本のベンダーとしては、クラウドインフラのエコシステムの中で、どこかコントロールが出来るソフトウェアを保有したい、という気持ちが非常に強い。
CloudAPIのレイヤーは、上記の状況の中で、独自開発(=コントロール)するのに非常に都合の良いレイヤーである、とされています。このレイヤーをベースに、クラウドポータルのカスタマイズ、様々なクラウドアプリケーションの開発、レガシー環境からのアプリ、データの移行、ミドルウェアの連携(課金、ID管理)等、SI事業の可能性が満載だからです。
問題なのは、このレイヤーはAmazon Web Serviceと真っ向から対抗するレイヤーだと言う事です。つまり、このクラウドAPIのレイヤーは、クラウドコンピューティングが生まれたのと同時に、de Facto標準化されて、既に巨大なエコシステムが出来上がっているのです。
この市場に参入する前に、クラウドAPIを開発している日本のベンダー、ビジネスモデルとしてAWSと対抗するのか、協調するのか、大きな選択を強いられているはずなんです、本当は。 この分岐点をよく吟味し、どちらが得策なのかを判断する必要がありますが、どうもそれを考えずに独自仕様を開発しているケースが多くなっているのでは、と感じます。いわゆる「囲い込み事業」「SLA差別化事業」が先攻している、という事でしょうか。
AWSがまだ日本に本格上陸していないので、日本にいると今ひとつ現実感を感じない、と思いますが、北米市場において、Amazon Web Serviceの存在はほぼ絶対的なものになってきている、というのが業界内の共通理解です。未だに主たる顧客層はSMBやWeb2.0系のベンダーであるという事は否めないが、提供する機能セットの充実度、新機能を発表するスピード、斬新な価格戦略、値下げ攻勢、等、他のクラウド事業者を大きく引き離す、まさにInnovationの固まりです。
さらに、AWSのクラウドAPI上で開発されている3rd Partyアプリケーションの数は、かなりの数に上っており、ここだけで一つの巨大なエコシステムが構築されています。クラウド上のアプリというものは、非常につなげやすいので、同じクラウドプラットホームに乗ってさえすれば、アプリケーション連携がものすごく簡単にできるのです。
独自仕様のクラウドAPIの必要性については、デメリットの方が多いのでは、というのが小生の正直な意見です。ましてや、この先、クラウドインテグレーションの層が厚くなってきたら、クラウドAPIというのは下のハイパーバイザとの間に挟まれる技術になるので、独自仕様を採用したためにクラウドインテグレータにも繋がらない、という問題が発生します。クラウドインテグレータに認識されないクラウド、というのは悲しいものです。
でもこうやってどんどん北米のソフトウェア技術をAs-Isで採用する、という事にも不安を感じます。日本の技術力を発揮できる領域がどんどんとなくなっていく、という不安です。
どうしたもんでしょうかね?
ご意見をお待ちしてます。
鈴木いっぺい
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