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世界で一番やさしい会議の教科書~電話会議のコツ~

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世界で一番やさしい会議の教科書~実践編~が出版された!
「ベストセラーの第2弾」という位置付けらしい。感謝!
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さて、本書はざっくりこんな構成になっている。(あ、意図したわけじゃないけど全部に数字が入ってる・・・)

  • 会議ファシリテーションの8つの基本動作
  • ファシリテーター7つの心構え
  • よくある18の困り事と対策 
  • 会議で効く3つの図解パターン
  • 定着4段サイクルと、浸透の6パターン

「会議ファシリテーションの8つの基本動作」は、このブログでも紹介している。そちらで概略が掴めるはずだ。
ブログ:「なぜこれほど日本の会議はクソなのか? 会議を変える8つの基本動作」



今回は「よくある18の困り事と対策」から、1つ取り上げて紹介したい。

【会議でよくある18の困り事】
1.誰も発言しない
2.議論が盛り上がらない
3.一部の人しか会議に参加しない
4.独演会が止まらない
5.発散や脱線が多すぎる
6.議論がかみ合わない
7.会話がまどろっこしく、スムーズに進まない
8.議論が間延びする
9.論点が多すぎて、議論が難しい
10.意思決定に時間がかかる(トップ合意編)
11.意思決定に時間がかかる(現場合意編)
12.決まったことが後から蒸し返される
13.時間通りに始まらない
14.大人数の定例会が難しい
15.プロジェクトの進捗報告会が難しい
16.電話会議が難しい
17.テレビ会議が難しい
18.オンライン会議が難しい


よくある困り事16.「電話会議が難しい」

今回は取り上げるのはこれ。
最近は働き方の多様化やフリーアドレス、グローバル化に伴って、テレビ会議やチャット会議など、オンライン会議が増えてきた。
会議の選択肢が増えるのはいいことだし、その場にいなくても打ち合わせができるのは効率的でもある。
しかし、対面での会議ほどスムーズにはいかない。何がオンライン会議を難しくしているのかは分からないが、どうもうまくいかない。上手くやるコツは無いものか・・・。そんな風に感じている方も多いだろう。

【電話会議が難しい3つの理由】

対策を紹介する前に、電話会議独特の難しさを理解しておきたい。そうすれば自然に、必要な対策が見えてくる。
電話会議とは文字通り電話、つまり音声だけで会議をする方法だ。通常の対面での会議と電話会議の決定的な違いは、相手の顔が見えないことだ。これが思っているより厳しい制約になる。具体的にどんなことが問題になるのか、あらかじめ知っておこう。

制約① 表情や仕草を観察できない

1つめの問題は、表情や仕草を観察できないということだ。
電話会議では相手の顔が見えない。顔が見えないと、あの人は「意見がありそうだ」「質問したそうだ」「つまらなそうだ」「気に入らなそうだ」といった人が放つ雰囲気をとらえることができない。
「メラビアンの法則」というものがよく知られているが、要するに、人のコミュニケーションは非言語な要素(仕草や表情、視線、姿勢など)が約半分を占めているという話である。
つまり、電話会議ではコミュニケーションの5割が削がれてしまう状態になる。だから難しい。雰囲気が分かると的確に発言を促したり、話を振ったりできるが、電話会議ではそれができない。

制約② 誰が話しているのか分からない

2つめの問題は、誰が話しているのか分からないということ。電話会議は声しか聞こえないので「誰が発言しているのか、よく分か らない」という問題も出てくる。
基本動作⑦で触れたが、意見の下には隠れて見えない「価値観や経験」がある。合意形成の氷山モデルを思い出してほしい。
だから「A案には反対。B案を推したい」という意見でも、営業のエースであるXさんが言ったのと、財務部長のYさんが言ったのとでは、場に与える影響が変わり、次に議論すべきことも変わってくる。
例えば、会議の議事録を見返す際に、発言者が誰かが記載されていないと、誰の発言なのか気になるはず。発言者が分からないと、何だか味気ない議事録にも見える。それは発言の背景にあるものを想像できないことが原因である。
基本動作⑦のブログはこちらを参照のこと「ダメ会議を変える!会議の基本動作⑦「対話を促せ」」

制約③ 議論が可視化できない

3つめの問題は、議論を可視化できないこと。スクライブができないから、目隠し将棋の状態に戻ってしまう。この問題がどれだけ深刻かは、「ダメ会議を変える!会議の基本動作④「議論を可視化せよ」」で解説した通りだ。結果として「今、何を議論しているのか」「結論は何か」「決まったことは何か」の認識合わせが難しくなる。


こんな風に、電話会議は多くの制約がある状態での議論になると、まず理解してほしい。対面の会議でもファシリテーションは難しいのだから、制約が多い電話会議はもっと難しい。やり取りできる情報が音声しかないため、会議の難易度は極めて高くなる。それを踏まえたうえで3つの対策を紹介する。(書籍では5つの対策を挙げているのだが、多すぎるのでポイントを絞って)



【対策1:発言前に必ず名乗る】

最も簡単で効果が大きいのは、発言する前に名乗ることだ。「田中です。A案について質問があるのですが」「佐藤です。確かにそうだと思います」といった感じだ。これだけでも不思議と電話の向こうの雰囲気が伝わってくる。発言者を特定できるため、発言者の「氷山の下」を想像できるようにもなる。
発言する側にも利点がある。名乗ることで一瞬の間ができ、その間に多少、発言を整理できる。その後に続く発言が端的でクリアになる傾向がある。地味ではあるが経験上、名乗るのは絶大な効果がある。

【対策2:普段の3倍、声を張る】

電話会議では相手の方で何が起こっているのかが全然見えない。だから小さな話し声が聞こえたときには無視してもよいのか、拾った方がよいのか迷ってしまう。電話会議で議論するときは、いつもの3 倍くらい大きな声で滑舌よく話すように心がけたい。「小さな声」「こそこそ話」「独り言」は禁止だ。
同じ会議室にいるなら聞こえる声の大きさでも、電話の向こうでは聞こえない。一定以上の音量が発生しないと、マイクがオフになる電話会議システムもあるくらいだ。はっきりと大声で、電話の向こう側に話かけるようにしなければならない。
とにかく、いつもの調子で会議ができるとは思わない方がいい。にもかかわらず、普段通りのトーンで話す人が非常に多い。電話会議は「普段の3 倍、声を張る」と肝に銘じておきたい。

【対策3:コミュニケーションの大原則を徹底する】

電話会議ではコミュニケーションの非言語要素が使えないので、発言者の意図は言葉から判断するしかない。
つまり「言葉」に全てかかっている。そのため、はっきりと誤解なく話す必要がある。あやふやな表現は許されない。
発言をはっきりさせるのに効果的なのはコミュニケーションの大原則を押さえることだ。

【コミュニケーションの大原則】
 A) 最後まで言い切らせる

 B) 質問にはストレートに一言で答える

 C) 何をしようとしているのかを宣言する

この3つを押さえるだけで、途端に発言がクリアになる。少しでも不明確な発言があると、すぐにぐちゃぐちゃした議論になってしまうから、全員でこの3原則を守る。少しでも曖昧な発言があったら、理解できるまでしつこく問い直す。
「言いたいことは何なのか?」「もう1回、端的に言ってもらえる?」「質問にストレートに答えると、どうなるの?」という感じで、電話会議ではビシビシとツッコミを入れて構わない。
というかこのくらいどんどんツッコミを入れないと、スムーズにコミュニケーションできない。話し手もいつもの3倍、はっきりとストレートに話す。電話会議では不明瞭な発言を徹底的に糾弾することで、ようやくまともな会議ができるようになる。

ここでは中身まで全て紹介できないが、AとBはこのブログの別の記事で触れているので興味あればそちらも参照いただきたい。
ケンブリッジ語録#21 「発言は最後まで言い切れ」
ケンブリッジ語録#1 質問には「ストレート」に「簡潔」に答えよ

まとめ「電話会議をナメてはならない」

電話会議は本当に難しい。
非言語要素が根こそぎ使えない状況を甘く見ないほうがいい。
参加者全員が普段以上に気をつけること。
特に「発言の仕方」を変えるだけでかなり良くなる。


新刊。どうぞご贔屓に。

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