Social_exchange_3

非営利な活動、ボランタリーな活動は、「称賛」や「感謝」を得たい為にやっているのかもしれない。また、そのような意識は、「非営利」だけでなく、「営利」においても、同じ流れがあるように感じる。「『ボランタリー経済』と『インターネット』」で取り上げた「マネタリー経済」は、次のようなものだと考えることができる。

  • コンビニエンスストアで客が150円という「資源」を支払ってジュースを買う。コンビニエンスストアは、ジュースという「資源」を客に渡す。
  • 労働力を会社に渡し、給料をもらう

これを、「経済交換」というらしく、一方の「ボランタリー経済」では、別の価値観が作用しているのかもしれないと思ったりする。例えば、「社会的交換」と呼ばれているものが、そうかも知れないなぁ・・・と。

社会的交換理論は、実は一言で定義できる。 「人や組織間の関係を、有形無形の資源やり取りとみなすこと」である。 この意味でこれは理論というよりも、むしろ研究のための見方や視点と言ったほうがいいかもしれない。社会的交換理論は一九三〇年代に文化人類学で生まれた。

(略)

経済行為以外でも「交換」という観点から社会を分析できることがわかったのである。その後、この社会的交換理論は、社会学や心理学にも取り入れられるようになった。

不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)』より

参照:社会学講座/社会的交換理論 - Scientia

マネタリー経済(経済交換)では、「金銭」「商品」という「誰から貰うか?」にあまり依存せず「具体性」のある「資源」が流通するが、ボランタリー経済(社会的交換)では、「愛情」「地位」など、属人性の高い「誰から貰うか?」に依存して「個別性」のある「資源」が流通する。例えば、「やった行為で誰かから称賛される」「やった行為で誰かから感謝される」など、「称賛」や「感謝」と「労働力」を交換するというのが、ボランタリー経済では主流ではないか?と仮説を立てることができる。

社会起業家になる方法」のなかで、シンクタンク・ソフィアバンク代表、多摩大学大学院教授の田坂広志さんは、インタビューの中で、「すべての日本人が社会起業家となる時代」ということを言っている。「企業の中においても、世の中に貢献するという社会起業家精神が再び見直されるようになる」という風なことが書いてあった。僕もそういう「流れ」を感じている。「金銭」や「商品」と「労働力」を交換することよりも、「称賛」や「感謝」と「労働力」を交換するということが、今までよりもクローズアップされてくるのだろうと考える(もちろん、「称賛」や「感謝」の向こうにライフタイムバリューなど「金銭」を求めているのかもしれないが)。また「マネタリー経済とボランタリー経済という視点からみると、社会的起業家と企業は、反対の経済原理から、互いに近づき合っているのです。従って、近い将来、この二つは融合していくでしょう。」とも述べているが、確かにその傾向を感じることができる。

「正社員」と呼ばれる人たちの労働への価値観は、「より責任のある立場で、大きな仕事がしたい」、「任せられて裁量の大きな仕事がしたい」「新しい分野を開拓していきたい」といった「称賛」をもらえるような「大きな仕事を積極的に」という価値観が28%を占め、次に「個人でこつこつ取り組む仕事がしたい」、「多くの人とかかわらず個人で仕事がしたい」という「コツコツと」という価値観が17%、「顧客に満足してもらえる仕事」、「世の中や人のためになる仕事」、「仕事を通じて所属する組織発展を」と自分以外のためにという「感謝」をもらえるような「顧客・世の中・組織発展のため」という価値観が16%を占める。その次に「報酬のため」という「金銭」をもらえるような価値観が14%になっている。我田引水かもしれないが、シンプルにまとめると、正社員の人は「称賛のため(28%)」「感謝のため(16%)」「金銭のため(14%)」になり、「社会的交換」を大事にしていると判断できる。もちろん、「称賛」「感謝」を得ると、より多くの「金銭」がもらえるかもしれないと思っている人が多くいると思うが、順序としては、「称賛」「感謝」が先で「金銭」が後だ。

参照:2007/12/5:働く上での考え方・価値観に関する正社員5049人の意識調査結果

「マネタリー経済」と「ボランタリー経済」が表裏ではないように、「経済交換」と「社会的交換」は表裏ではない。相互に補完するもの、もしくは、どちらかに内包されるものであるとおもうが、一歩踏み込んだ中の価値観のバランスとしては、「金銭」のような「具体性」の高いものより、「愛」などの「個別性」の高いものが求められている。企業の中では、まだまだ「経済交換」を中心にしないと、食べていけない。なので、僕をはじめ、非営利な活動を行う人の多くは、精神的な補完のため、「社会的交換」が中心の「非営利な活動」を行うのだ。しかし、世界中の、日本の、「経済の豊かさ」と「心の裕福さ」が高まり、「食べていけない」という状態が減っていくと、次第に、企業の中においても「社会的交換」を重要視していかざる得なくなってくると思う。「世界的不況」が逆に切っ掛けとなり、自分自身の「経済の豊かさ」と「心の裕福さ」に気付くこともあり得る。


不機嫌な職場~なぜ社員同士で協力できないのか (講談社現代新書)
河合 太介 高橋 克徳 永田 稔
講談社
売り上げランキング: 988


社会起業家になる方法
大島 七々三
アスペクト
売り上げランキング: 31695


参照:
『善良』とは何か?
『ボランタリー経済』と『インターネット』
「非営利」と「営利」の補完作用
「非営利」を考える
社会的企業について


写真:iron fillings

はしもとまさのり

Special

- PR -
コメント

コメントを投稿する
メールアドレス(必須):
URL:
コメント:
トラックバック

http://app.blogs.itmedia.co.jp/t/trackback/77444/19211061

トラックバック・ポリシー


» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP


プロフィール

橋本 正徳

橋本 正徳

株式会社ヌーラボの代表取締役を勤め、「Seasarファウンデーション」や「福岡で働くWebの人々」などの非営利な活動も行う。

詳しいプロフィール

カレンダー
2012年1月
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
カテゴリー

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 富士通元社長の山本卓眞氏が残した次代へのメッセージ
富士通の社長、会長を務めた山本卓眞氏が亡くなった。哀悼の意を込めて、日本のIT産業界の大御所が残した次代へのメッセージを紹介しておきたい。(2/6)

news094.gif Facebook就活はもう古い?
約260人のブロガーが、ITにまつわる時事情報などを日々発信しているビジネス・ブログメディア「ITmedia オルタナティブ・ブログ」。その中から今回は「就活」「都心の雪」「ソーシャルメディア」などを紹介しよう。(2/4)

news094.gif 東北をコットンの生産地としてブランディングしたい──リー・ジャパン・細川取締役
塩害に強い綿の生産で東北に新たな産業を作りたい。オーガニックコットンの採用など、環境負荷を下げるジーンズ生産に取り組んできたリー・ジャパンの新たなチャレンジとは──。(1/30)

news094.gif 東北から始まるイノベーション
企業のICTを活用と若手IT技術者による東北発のイノベーションが、中長期的な震災復興の鍵となる。(1/27)

news094.gif 貧困国の雇用を創出する印刷屋、丸吉日新堂印刷の挑戦
全国から約2万7000件の名刺制作を受注をする札幌の小さな印刷会社の成功の秘密は、地道な社会貢献にあった。(1/16)

Special

- PR -

サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ