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米GIZMODOの被爆者茶化し記事から学ぶべきこと

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 昨日の出来事なのですが、とりあえず事態収拾までいったので報告しておきます。

 発端は、GIZMODO米国版に掲載されたこの記事。

93-Year-Old Japanese Man Certified as Double A-Bomb Victim

 APが報じた「二重被爆」をネタに、GIZMODOのAdam Fruttiという記者が書いた記事です。二重被爆というのは、広島と長崎の両方で被爆された方のことで、APの記事自体は、現在93歳の二重被爆者山口彊さんがようやく両方の被爆者健康手帳を得られたという話。

 詳しくはこちらをどうぞ。

映画「二重被爆」
なんで二重被爆したのか?

 話を戻すと、このGIZMODO記事には次の記述が:

Of course, if the bombs were that bad, he wouldn't still be alive 64 years later.

 彼が生き延びたってことは、原爆ってそれほど悪くないんじゃね? といった書き方。まともな神経の人間ならば怒ると思います。

 そこでTwitterに次のような投稿をしたのが午前8時53分。

・GIZMODOってほんと最低だ。“Of course, if the bombs were that bad, he wouldn't still be alive 64 years later.”

・GIZMODO日本版がこれを直訳しないことを祈る。日本のスタッフはぜひ抗議すべき

 これにはかなりの反響があり、何人かがRT(ReTweet)してくれました。

 わたしもコメントで抗議しようと思ったのですが、既にコメント欄は原爆を浴びた人はおでこで肉を焼けるだとか、さらにひどいヘイトスピーチで埋め尽くされており、ここでの抗議活動は埋没してしまうと感じてあきらめ。

 そうしたら、日米のテクノロジー交流で活躍している外村仁さんがGIZMODO編集長に直接抗議をしてくれました(12時31分)。外村さんが編集長から削除したとの返事をもらったと書き込んでくれたのが。約12時間後の翌1時9分。そのおかげで記事で最もひどい部分は現在削除されています。その部分をネタにしたコメントは現在も残っています。

 その内容がいかにひどいかは記事をご覧いただくとして、ここで考えるべきは、いたずらに悪意をあおる内容の記事を掲載することに対し、編集サイドの目が行き届いていたか否か、ということだと思います。

 林信行さんのWIRED偽コメント事件もそうですが、おそらくコストカットが原因で優れたライターを抱えることが不可能になり、執筆陣の質が低下し、編集部のチェック機能も甘くなっています。センセーショナルな記事を量産しているGIZMODOも、おそらくはそういう状態なのでしょう。

 このひどい記事を書いたAdam FruttiはGIZMODOのAssociate Editorですが、コメディアンとの兼業だそうです。彼はその後も新しい記事を執筆し、掲載されています。質の悪い記者とつきあっていかなければならない編集長は大変だと思いますが、ぜひチェック機能を発揮してほしいと思います。

 そもそも、原爆について何も語るべきことを持っていないくせにAP記事をピックアップしてコメディアン的なコメント加えて一丁上がりという記事を成立させるというのが間違いでしょう。

 ただ、米GIZMODOに関しては過去にもこんな例があるので、それほど期待はしていませんが(日本版は別です)。

GIZMODOのタイトル付けで感じた疑問

 もちろんITmediaにも言えることです。国と国との問題などいたずらに悪意をあおる内容については特に意識をしておく必要があります。政治色の強い記事が混じっていて、そういう記事が掲載されてしまったことも。コストカットはさらに厳しくなり、GIZMODOの記事品質をとやかく言うことができなくなるかもしれません。

 それでも最終的に掲載される記事について責任をもって対処することの大切さが、オンラインメディアには強く求められるのです。新聞における「整理部」的な機能に重きを置いているYahoo! Japanの「トピックス」を追った産經新聞の記事に再度目を通したいと思います。

【ヤフーニュースの舞台裏】(上)日本を動かす「トピックス」
【ヤフーニュースの舞台裏】(中)仕掛け人は元新聞記者
【ヤフーニュースの舞台裏】(下)ニュースをどう「選ぶ」のか

 オンラインメディアの「整理部」の役割。もう一度考えるべき時かもしれません。

追記;ギズモード・ジャパンの「翻訳記事」が出たので、それについて新たに書きました。

二重被爆報道:米GIZMODOの茶化し記事と対照的なギズモード・ジャパンの「改変翻訳」
山口彊さん、二重被爆初認定(ギズモード・ジャパン)

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