プロジェクト管理・ポートフォリオ管理ツールの活用方法を中心に、IT投資管理の考え方をご紹介して行きます。

IT投資を行っているにも関わらず、企業の生産性が変わらない

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最近の子供には野球よりもサッカーに方が人気のようで、リトルリーグのチームが減ってきていると聞きます。ところでサッカーと野球の大きな違いはなんでしょうか。野球は、監督の裁量権が非常に大きいスポーツです。監督のサインで配球を変えたり、送りバントしたりと、多くの作戦を監督が判断します。

それに対して、サッカーは、プレイヤーそれぞれが常に自分自身で判断する事が求められるスポーツです。リスクを取って前にでるべきか、残ってカウンター備えるべきか、全ては個人個人の判断です。場面に応じてメンバーは流動的に自分の役割を変化させながら、攻撃や防御に参加していきます。パスなのかシュートなのか、ドリブルで突破か、瞬時に自分で判断する事が求められます。

現在、経済環境の変化のスピードアップに伴い、企業組織の在り方も、野球型のトップダウン型から、サッカー型のボトムアップ型に移りつつあります。

踊る大捜査線パート2で描かれていた、リーダーのいない犯罪組織に翻弄される、ピラミッド型の警察組織を例にだすのは若干気が引けますが、メンバー個人が自分で判断して、自分でリスクを取り自分で行動を起こす組織に対して、意思決定を会議室で行う、旧来のピラミッド型組織は極めて非効率です。

さて、毎年膨大なIT投資を行っているにも関わらず、企業の生産性が殆ど変わらない、ROIが算出困難であるという悩みは全企業共通ものであり、いわゆる「生産性パラドックス」として広く知られています。

企業の生産性を高めるためには、単にIT化を進めるだけではあまり意味がありません。全社員の最新のPCを配って、モバイルを渡して、タブレットを配布し、最新のソフトを購入しても、おそらく社員の満足度は高まるかもしれませんが、社員の生産性の向上を示すことは困難です。

これは、企業組織がこれまでの野球型のトップダウン組織のままであるためです。現場に最新のITを導入して、現場の仕事のスピードを倍増させたとしても、これまで通りの業務フローでは、生産性向上を実現することは出来ません。

たとえば、企業のコミュニケーションを改善するために、フリーアドレスのオフィスレイアウトを採用する企業が増えています。好きな場所に自由に座れる事で、社員同士のコミュニケーションが活発になりイノベーションが生まれると言われています。

しかし、席を自由にしても、組織構造がプロジェクト型になっていなければ、あまり意味がありません。フリーアドレスにしたところで、みな固定席のように使ってしまいます。無理やり毎日違う席に座るように会社が指導していたら本末転倒です。

これまで通りの機能型の組織でしたら、もっとチームのメンバー同士が近くに座り、「島」になって仕事をした方がより生産性は高まるはずです。組織をプロジェクト型にして、各メンバーに権限を委譲して初めて、社員は部門の枠を超えたコミュニケーションが必要となり、フリーアドレスのオフィスが生産性に寄与します。

生産性を高めるためには、ビジネスプロセス自体を変更して、現場への権限移譲を強く進める事が必要です。社員が自分で判断し自分で率先して動く事が求められます。

ITが安価になり広範に普及する中で、これまでのように組織の頂点に全ての情報を集めて意思決定を行うという旧来の組織は機能しなくなります。全社員が情報を使った意思決定をリアルタイムで行えるようにIT基盤を整えるとともに、社員に対して十分な権限を移譲する事が重要です。社員全員に、最新のITツールを配布して、現場のスピードが大幅に向上させたとしても、従来のままのピラミッド組織では、企業トップの意思決定の遅さがボトルネックになり、ITのスピードを有効に使い切ることができないのです。

サッカーの試合で監督がすべてのプレイを意思決定して指令を出して、選手は監督からの指示をまっていたら、瞬時に相手チームに点を取られます。このような企業では、どれだけ最新のITツールを導入しても、スピード感のあるビジネスは出来ません。

監督にできることは、事前にどうやって攻めるべきか戦略を立てて、プレイヤーを日々トレーニングし、どんな状況にも自発的にメンバーが対応出来る環境を作りあげ、そして当日の選手のモチベーションを高める事です。そしてこれらが現代の組織において企業トップに求められている事です。

多くの企業では、組織の変革という本質的な改革を行うよりも、目先のIT投資で問題を解決しようとしてしまいがちです。ITという付加価値にばかり気を取られてしまい、本質的な価値を見失うことが往々にしてあります。クラウド、VDI、BYOD、といった手段が優先されてしまい、本質的な業務プロセスの変革が後回しにされてしまうのです。ITは企業改革の必要条件ですが十分条件ではありません。

生産性を高めるためには、現場への大幅な権限移譲が重要です。裁量権、情報へのアクセス権、それらを末端の社員に与えてはじめて、ITの価値が生かせます。分析ツールは意思決定を行うためにもっとも重要なファクターです。それを一部の幹部社員だけがもっていても仕方がありません。

そして、現場にはさらなるスキルアップが求められます。ITを駆使して、与えられた裁量の中で最大のパフォーマンスを実現することが個々の現場のメンバーには求められてきます。企業にはメンバーのモチベーションを最大化するインセンティブの設定が求められます。

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