プロジェクト管理・ポートフォリオ管理ツールの活用方法を中心に、IT投資管理の考え方をご紹介して行きます。

戦略とは、願望と個々の戦術をつなぐシナリオ

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戦略とは何でしょうか。戦略という言葉は、かなり曖昧で様々な意味合いで使われています。例えば多くの企業が発表する経営戦略、「次年度10%の売上げアップ」や、「クラウド市場の獲得」などは、単なる目標で戦略ではありません。言い換えれば経営者の願望です。あるいは、「組織のフラット化」、「製品の絞り込み」、「契約ポリシーの変更」を戦略と語る経営者もいます。しかしこれはどちらかというと個々の戦術であり手段です。

戦略とは、願望と個々の戦術をつなぐシナリオです。目標を決めて戦術を決めて、あとは担当者にプレッシャーをかけるだけでは、現状を打破する事は出来ません。現実問題として、企業の全ての意志決定を経営者自身で行う事は出来ないのです。適切な権限移譲を行いつつ、全てのレイヤーの社員に経営者が思い描くシナリオを、高いモチベーションでそれぞれに実施させる事が重要になります。

レストランオーナーが、売上の目標と、来て欲しい顧客層と、メニューと原価率を決めて、あとはスタッフに日々のプレッシャーをかけていれば、売上は上がるものでしょうか。もちろん、そんなレストランは、優秀なスタッフから逃げ出してしまうでしょう。レストランオーナーが自分で料理を作れるわけではありませんし、自分で接客するわけでもありません。戦略とは目標や願望と現実を橋渡しするシナリオの事です。経営者に求められる事は願望を絵に書くことではなく、シナリオを提示する事です。限られたコストや人的リソースの中で、どのような新規顧客にアプローチしてどのようにリピーターを増やし、どのように、利益を上げていくのか、どのように現場を自立的に改善させていくのか、その筋道を定める事がシナリオです。

IT戦略も同様です、IT戦略とは企業の願望(セキュアなインターネット接続。低価格なオペレーション。迅速なアプリ開発。テスト工数の削減・・)と、個々の戦術(ERP導入。クラウド。仮想化。OSS・・・)を結びつけるシナリオの事を指します。誰もが方向性を認識出来る、企業全体のIT投資のシナリオを構築する作業が、CIOに求められます。往々にして技術畑を歩んできたCIOは、技術に目を向けすぎるあまり、会社全体としての目標への意識がおろそかになり、個々の戦術に走りがちで、手段と目的とを混合してしまう事があります。CIOに求められる事は現場にシナリオの策定を丸投げするのでも、納期やコストのプレッシャーをかけることではなく、自ずから適切なシナリオを提示する事です。

もし、企業のリソース(コスト、人、時間)が無限であれば、そもそもIT戦略は不要です。しかし現実的には様々な制約があり、個々の戦術には複雑な依存関係があります。
戦略策定とは、プロジェクト・マネージメントに近い仕事です。企業の様々な制約条件の中で最大のフォーマンスを出すためのシミュレーション・What-iF分析を行い、最大のレバレッジを実現するシナリオを構築する事が求められます。
そして、時々の方向修正をしながら、チームをモチベートしてゴールを達成する事が求められます。有限な企業のリソースを最大限活用するためには、チームメンバーの自発性が重要です。正しい方向性・戦略をCIOが提示出来れば、メンバーは自発的にゴールに向かって進んで行けますし、シナリオがなければ、バラバラな作業をメンバーは勝手にやってしまいます。

正しい戦略とは、マイクロマネジメントの対極に位置するものです。

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