オルタナティブ・ブログ > 現状を維持するだけのIT投資には価値はない >

プロジェクト管理・ポートフォリオ管理ツールの活用方法を中心に、IT投資管理の考え方をご紹介して行きます。

ポイントカードは売上に寄与したのか?

»

会社のビルの2Fにあるコンビニに行くと毎回、「ポイントカードは宜しいですか?」と聞かれます。「いえ持っていません」「お作りしましょうか?」「結構です」という会話を毎回繰り返しています(笑)毎日行ってるので、いい加減に顔は覚えて貰えてると思うのですが。。マニュアルにあるから仕方ないのでしょう。

ポイントカードは顧客情報と購買情報を結びつけて、消費者の購買行動を分析し販売促進に活用する所謂、One to Oneマーケティングのツールとして普及してきました。確かに顧客行動の分析には絶大な効果のあるツールです。様々な情報を顧客の購買履歴の分析を通じて得る事が可能になったため、消費者の購買行動にもとづいたターゲティングや広告メディアの選定、プランニングなどの精度を格段に高める事が可能になりました。

問題は「顧客の囲い込み」に関してです。現実には誰もが複数のポイントカードを持っているため、囲い込みや差別化にはあまり繋がっていないのが現実です。ポイント欲しさに特定のコンビだけを使う人はそれほどいないでしょう。

One to Oneマーケティングを説明する書籍によく出てくる例え話しは、街の八百屋さんです。
昔ながらの街の八百屋さんは、常連客をしっかり覚えていて、家族構成に合わせた商品を進めたり、在庫になってる人参をこっそとサービスでおまけしたりします。このような個人別にカスタマイズされたサービスこそが、One to Oneマーケティングの理想の姿だと言うものです。

しかし、実際には画一的なサービスの大規模スーパーの前に、街の八百屋さんは消えてしまいました。顧客は「カスタマイズされたサービス」や「名前を覚えてもらう特別感」よりも、安くて品揃えの良いスーパーを選びます。これは老舗のシティホテルが、格安のビジネスホテルに侵食されている現状と同じでしょう。どんなにがんばってベルボーイが顧客の名前を覚えても。誕生日にフルーツが部屋においてあったとしても、どうせ寝るだけなら、安くて駅に近いビジネスホテルの方を顧客は選びます。

Amazonが成功しているのは、顧客の購入履歴に基づいたパーソナライズされた、リコメンデーショが素晴らしかった側面も、まあ多少はあるでしょうが、一番の理由は、安くて、便利で、品揃えがよいからです。
One to Oneマーケティングによる「顧客化」に成功している事例の大半は、既に市場を抑えている流通業者であるからこそ出来た施策である気がします。選択肢が複数あれば、移り気な顧客は直ぐに他の選択肢を選びます。CRMによる成功事例で語られているのは、すでに大きなシェアを持っている企業体であり、その成功要因はデータ活用ではなく、商圏の広さにあるのではないでしょうか。

全てのITの導入に関して言える事は、小手先の施策は結局計測可能な効果が出せないという事実です。Amazonのようなリコメンデーション機能を自社のサイトに取り入れても、品揃えや価格で負けていれば顧客は利用しないでしょう。ビジネスモデルやビジネスプロセスという企業の本質を改善して初めて、IT導入の価値が生まれます。

顧客セグメントにカスタマイズしたペルソナを策定し、グループインタビューなどの調査に基づくセグメントにパーソナライズされたメッセージを送ったとしても、残念ながら安い店があれば顧客はそっちに行ってしまうものです。

勿論、ポイントカードは顧客の購買行動を明確にし、商品開発やマーケティング活動に多大なる変化をもたらしました。しかしおそらく顧客の囲い込みにはあまり貢献できていないのではないかと思います。

コンシューマービジネスよりも、法人ビジネスの方がより明確に顧客を特定し過去の購買に基づく顧客毎の施策を詳細に計画する事が出来ます。しかし実際には法人ビジネスでも、データに基づく施策は多くの場合出来ていません。法人ビジネスは担当営業個々人の経験に全て依存しているのが実態です。

個人的にはBtoB企業の方が、データ活用にとっては未だに大きな課題を持っていると思います。BtoB製品のマーケティングは、データなしでは考えられません。顧客毎の販売履歴、仕掛り案件のパイプライン情報、Webへの問い合わせ履歴。企業のマーケッターが、レバレッジの高いキャンペーンを立てるには、その様な様々なデータの参照が必要になります。しかし通常このようなデータは、部門毎にサイロ化しており一元化されていないのです。

営業の持っている案件のパイプラインデータ。経理が持っている過去の売上履歴のトランザクションデータ。マーケティングが持っているキャンペーンや、セミナーやイベントの来場者データ。マーケッターは、これらを手作業で連携しているのが実態です。当然データの正規化がされていませんので、名寄せなどきちんと出来ません。データーフォーマットもExcelから、RDBMS、SFDCまでバラバラです。

膨大なコストをかけて入手したそのようなマーケティングデータも、1年もたてば鮮度も落ちてしまい、データは再利用されずに捨てられているのが現状です。しかし現実的に分断化して、別システムに格納され、正規化もされていないこれらの情報を活用するのは困難です。

「データサイエンティスト」が、今最もセクシーな職業、だそうですが、このように企業に埋もれている複数のデータソースを集計し、横断的に分析する事で、BtoBマーケティングは格段に進歩する事だと思います。
アナリティック情報はこちらが参考になります。
https://www.facebook.com/analyticsjapan

Comment(5)