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プロジェクト管理・ポートフォリオ管理ツールの活用方法を中心に、IT投資管理の考え方をご紹介して行きます。

流行に流されない

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随分前に、藤沢にあるキャンパスの学祭で、学生の皆さんに話をさせて頂く機会がありました。IT業界を目指している学生が多いキャンパスでしたので、IT業界でどのような仕事を選ぶべきか、そんな話をさせて頂いたと思います。IT業界で長く働くには、軸足となる自分の専門分野が必要になります。しかし、その専門分野が流行のものだとしたら、10年後その流行が去りコモディティ化した時に、業界の中で自分の居場所を探す事が非常に難しくなります。自分のスキルもまたコモディティになってしまうのです。流行に流されないようにという事を話しました。

振り返ると、イントラネット、データウェアハウス、ポータル、グループウェア、ユビキタス。様々な流行がIT業界には存在しました。ベンダーや雑誌も率先してそのような流行を作って来ました。学生の多くは耳あたりの良いそのような流行の最先端の企業への就職を希望するかもしれません。しかし永久に続くトレンドはありません。いま最先端の企業は、近い将来には必ず新興の企業にその座を追われてしまいます。ほんの10年前にはFacebookは存在していなかったのです。

しかし企業のコアのビジネスは簡単には変化しません。金融、医療、流通、製造といったそれぞれの産業のプロセス自体は本質的には普遍だと思います。当時学生の皆さんに話したことは、長期的に自分の価値を高めていくためには、現在の流行に流されないで、各産業の業務に関してのIT構築を担う仕事を選ぶ事が重要だという事でした。それは若干華やかさにかけ地味な仕事かもしれませんが、おそらく自分の価値を長期的に高めていく事が出来ます。

企業のIT投資もまた、流行に流されるべきではありません。企業のビジネスの本質自体が大きく変わる事はありません。確かに流行のテクノロジーであれば、雑誌などでも大きく取り上げられますし、ベンダーも様々なセミナーを実施しています。企業の上層部にも受けが良いでしょう。リスクはありますが最初にテクノロジーを導入した企業は大きなメリットを手にします。初めてソーシャルで広告を行った企業は、物珍しさもあり非常に高いROIを獲得しました。しかしそれも長くは続きません。所謂フォローワーにはあまり多くの利益を得るチャンスがないのです。逆にコモディティ化した後に、価格も落ち着いてきた頃に導入した顧客は、より高いROIを得る事が出来ます。

つまり、イノベーターとラガードのみがテクノロジーから高いROIを得る事が出来るのです。最先端の流行を追いかける事は戦略的ではありません。それよりも重要な事は、本業に対してのIT投資の比率を高める事です。

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