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ITコストの削減は、ITガバナンスの確立から

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様々なコスト削減が進む現在、IT コストの削減は全ての会社で避けては通れない課題です。しかしいざ IT コストの削減といっても、IT 投資の重要性がますます増してきている現在どこから手をつければ良いのか難しい問題です。

一般的な日本企業においては全設備投資の四分の一が IT 投資と言われています。確かに現在ではすべての新規ビジネスは IT のサポートなしでは立ち上げる事は困難です。新製品開発も新規店舗出店も新規サービスでも、競合他社との競争に対して優位になるためには、必ず IT の開発が必要になります。

ITコスト削減とはつまり、車を全力で走らせながら、不要なパーツを窓から捨てていく作業と言えるかもしれません。もちろん車を止める事は決して許されません。

しかし、IT は新規開発であれば投資とみなされますが、運用フェーズになればコストとみなされ、今や企業にとって IT コストは決して見過ごす事が出来ないほど膨大になってきています。しかしその IT は「本当に必要な IT 」なのでしょうか?その効果が不明であったり、ほとんど使用されていないシステムは存在していないでしょうか?

どうすれば、膨大は IT コストの中から、不要なコストを探しだして削減できるのでしょうか。
メインフレームから、オフコン、クライアントサーバー、Web アプリ、そしてクラウドへと、そして自社開発からパッケージの利用まで、IT への投資は形態を変えながら増大してきました。
しかし多くの場合、情報システム部門の仕事は「その場しのぎ」に終始してきたといっても過言ではありません。既存のシステムはそのまま残し、そこに新しいシステムを追加増設していく事を繰り返した結果、システムは複雑を極めてしまっています。例えて言うならば新館、別館と増改築を繰り返した温泉旅館のような有様です。部門毎に導入した各種サーバーが企業内に乱立してしまい、夜間バッチや、ファイル渡し、EAI ツール、個別カスタマイズによって複雑に接続されています。その結果システムの変更や停止の影響範囲の予測が極めて困難になっており、身動きが取れなくなってしまっています。

また運用管理にかかる人的コストも膨大です。システムの矛盾を解消するために新しいプロセスが追加されれば、そこに担当者がアサインされコストは膨らむ一方です。
例えば製造業であれば、工場や部門、事業所毎に個別に導入されたシステムが大量に存在しており、企業全体としての IT ガバナンスが成り立っていません。しかも最近では、情報システム部門の IT ポリシーやコントロールに反発する部門が、勝手に外部のクラウドサービスを使ってしまっている事例も多数存在しています。このような場当たり的で、ガバナンス不在の長年にわたる IT 投資が、今では膨大な運用コストとして企業にのしかかってきています。これが日本の IT の実態です。

さてどうやって IT コストの削減をおこなっていくのか、まず必要な事は IT ガバナンスの確立です。

2003 年の個人情報保護法以降、企業では情報保護の観点から IT ガバナンスへの取り組みは強化されてきました。しかしその取組も工場や部門毎で個別に行われており統合的な管理が出来ていません。まずは全てのITを情報システム部門で集中管理する体制の構築が不可欠です。CIO が強力にリーダーシップをとり、全ての IT 投資と運用を情報システム部門で一元管理し、IT ガバナンスを確立する事が必要です。

IT 投資は多くの場合、気がつくとシステムの導入自体が目的となってしまう事が多々あります。当初の業務のシステム化の目的はなんだったのか、IT 投資によってどのように改善されてきたのか、きちんと効果が測定される事はめったにありません。
例えば、営業プロセスの可視化と売り上げ向上のために CRM を導入してみたが、営業は膨大な日報入力が必要とされてしまい、だれもきちんとセールスステータスを入力する事がなくなり放置されてしまい、仕方がないので毎月サマリー情報だけを、アシスタントを使って入力させているため、その情報はまったく役にたっていない。それにも関わらず、CRM と勤怠管理システムの統合や、ワークフローとの統合などが随時進行している。

こうなってくると、せっかくいれたシステムを使うこと自体が目的となっており、売り上げの向上という目的とは程遠いものになっています。しかもシステムが入れられて何年かがすぎ担当者も変わると、そもそもそのシステムの目的すらも忘れされて、メインテナンス業務だけが延々引き継がれていきます。
IT コストの削減の第一歩は、IT ガバナンスの確立です。投資対効果の測定方法といった、企業の IT のルールを明確に構築して、情報システム部門が全てのITリソースを管理する事が重要になります。

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