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プロジェクト管理・ポートフォリオ管理ツールの活用方法を中心に、IT投資管理の考え方をご紹介して行きます。

社員の利便性を高めても生産性は向上しない

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かつて、PCや、Eメール、スプレッドシートは、ビジネスマンの生産性を大幅に増大させました。これはまさにデスクワークの革命です。それまでのワークスタイルとPCが導入されて以降のワークスタイルでは、比較出来ないほど進化し大幅に生産性が向上しました。もはやPCのなかった時代など思い出せないのではないでしょうか? しかしそれ以降、このような革命的なITによる生産性の向上があったかというと、正直「あまりなかった」のが本当のところではないでしょうか。企業はしかし今でも、ITによる生産性の増大を夢見てIT投資をつづけています。しかしそれは多くの場合幻想です。

社員の利便性を高めても、生産性は高まらないという事は、実は誰もが気が付いていながら、あまり公然と語られていない事実ではないかと思います。会議室のイスを新しくしても、斬新な発想は生まれてきませんし、社員の机を広げても書類の山が増えるだけです。

正直な話、携帯電話やiPodを社員に支給した結果、具体的に企業収益が改善したという話しはあまり聞いた事がありません。公衆電話を使おうが伝票に手書きしようが、営業社員の顧客あたりに消費する時間には、実は大きな差異はないでしょう。ツールが変わっても営業社員の業務自体に大差はありません。顧客と会話し商談を進める事が最も重要な作業です。例えばPCを持ち歩いて、その場で見積もりを作り在庫が確認できたとしても、おそらく、営業あたりの売上が見違える程増大する事はないでしょう。

OSやスプレッドシートの新しいバージョンへのアップグレードは、確かにユーザーの利便性を向上させてはいますが、そこで実施している業務に大きな違いがない以上、社員の生産性の向上への貢献は軽微です。しかし、その準備にかかるコストはあまりにも膨大です。

これはテレワーク。在宅勤務に関しても言えます。在宅勤務を推進しても生産性があがりません。自宅で仕事する事で通勤時間がなくなり、他の社員からインタラプトされないため、集中力が高まり生産性が向上すると説明されていますが、実際には人のインタラプトが出来ないという事は、誰かの生産性を下げています。オフィスに皆で集まり誰かをいつでもインタラプトできる環境がもっとも生産性が高いといえます。

では生産性を高めるにはどうすればよいのでしょうか。例えば「営業活動」という業務自体を見直さないと生産性はあがりません。一回の訪問での確度を高める、顧客あたりの売上単価を上げる、といった営業フロー自体をまずは変革して、ITでトラッキングする仕組みを作る。あるいは、営業活動を一部のリーピート顧客に絞り込みそれ以外の顧客は電子取引に移管する、といったドラスティックな変更をして初めて、社員あたりの生産性の向上が実現してくるでしょう。ただITに投資しても「社員力」は向上しません。社員のモチベーションはITでは決して高まりません。

プロジェクト管理に関していうと、例えば全社でプロジェクト管理ツールを導入しても、生産性が向上する事はありません。
WBS標準テンプーレートを準備して、リソースのスキルレベルや、標準業務フロー、バッファーのない標準見積もり工数、標準マイルストンなどを詳細に記載して、標準開発プロセスを順守する事で、計画精度の向上と生産性の改善が可能になってきます。

開発業務を標準化する事は、今後のオフショアへのアウトソースを見据え、世界中どこでも同じ品質で業務が遂行できる体制を作るための基盤になります。

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