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「新機軸」となるミッション志向の産業政策

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経済産業省は2023年6月27日、「産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 第2次中間整理」を公表しました。

今回は、この中から「新機軸」となるミッション志向の産業政策を中心にとりあげたいと思います。

■日本の「失われた30年」

日本は、いま、「失われた30年」と言われ、デフレマインドが蔓延しています。

人口が減少する日本では、将来が悲観され、「成長しない」→「国内に投資しない」→「賃金も上がらない」状況となっています。世界との国際競争力のランキングをみても、その状況は顕著です。

多くの企業は既存事業のコストカットと海外投資に注力し、新事業創出に向けて大胆に投資せず雇用維持重視の経営で、失業率は低水準を維持も、賃金・個人消費は横ばいとなっています。

そして、経常収支もかつては貿易収支に支えられていましたが、国内産業の競争力低下・海外投資の進展により海外からの投資収益に頼る構造となっています。

政府も、民間主導という考えの下で、民間の制約を取り除く市場環境整備策を中心とし、新たな価値創出に向けた取組が、結果として不十分となっています。

円安も進み、「安い国」日本という状況にもなっています。

■持続的な成長につなげるラストチャンス?

こうした中、今がこの「潮目の変化」を持続的な成長につなげるラストチャンスであるとの認識の下、非連続なイノベーションを積極活用し、危機感を持って、

付加価値の高い事業の創出、事業構造転換、新陳代謝を通じた賃上げ原資の確保、そうした変化を推進する企業経営の変革

②個人に対するリスキリング円滑な労働移動を実現することによりセーフティネットを確保

に取り組むことが必要としています。

同時に、多くの国民に蔓延している30年間で染みついた将来悲観を払拭し、安いものを買おう、投資を抑えようという縮小均衡のサイクルに陥らないようにすることが必要としています。

世界経済の不透明感(今年の世界成長率予測は2.8%(IMF)、過去20年平均は3.8%)
国内の人口減少の加速(人口は毎年0.5%減から年々加速。2050年には足下16%減の1.05億人)
・国際的な国内投資誘導競争(GX, DX, バイオ等の先進分野で、自領域内に投資を誘導する産業政策競争)

■「新機軸」の考え方(=「潮目の変化」を持続的成長に繋げる「期待の醸成」)

<ミッション志向の産業政策>

こうした変化の中で、経済産業省では、2021年以降、世界的な社会課題を起点に、「ミッション志向」で政府も一歩前に出て大規模・長期・計画的に取り組む「経済産業政策の新機軸」を始動しています。

長期持続的な成長に必要なのは、新たな需要の喚起、そしてそれを満たす供給側の高付加価値分野への投資です。これらに通じるのは、成長するという「将来への期待」です。

将来にわたる世界的な社会課題は明確です。こうした社会課題解決を、他国の産業政策に引けを取らない政策対応により、予見可能性を高め、設備の維持にとどまらず能力増強や新商品・サービス展開につながる戦略投資を加速する「ミッション志向の産業政策」で解決することを通じて、国内の新たな需要を創出しつつ、同時に輸出力を含む国際競争力を強化し、海外にも展開

<(社会基盤(OS)の組替え>

同時に、危機感を持って構造転換に取り組むことの重要性も示しています。

人手不足環境における労働力確保には、継続的な賃金上昇、それをもたらすリスキリング等の人的投資労働移動円滑化に加え、賃上げ原資確保のための企業活動の高付加価値化が必要となっています。

こうした30年ぶりの環境をテコとして、政府も、現状維持に甘んじることなく付加価値向上に向けた経営変革に挑戦する企業をより応援。また、新しい価値を生むスタートアップ・中小企業を含め足腰の強い企業を育成し、新陳代謝を後押し。同時に成長産業をリードする人材(博士、理系女子等)を育成・世界から受入る。こういった「社会基盤(OS)の組替え」等の重要性を挙げています。

■「新機軸」の継続・発展~3ー5年を「集中取組期間」に

2年前から始動した「新機軸」(政府も一歩前に出て、大規模・長期・計画的に取り組み、市場に予見可能性を与え、新たな官民連携により、成長市場を創り出す政策体系。それを通じて、民のアニマルスピリッツにも火をつける)を継続・発展していくことが、今こそ求められているとしています。

今後3-5年は、向こう10年の成長に向けたジャンプ・スタートを切るための「集中取組期間」とし、中長期的(5-10年)に国内投資・イノベーション・所得向上の3つの好循環を持続化することを目指すとしています。

■14テーマの再構成

この1年の検討を踏まえ、「ミッション志向産業政策8テーマ+OSの組替え5テーマ」に構成を見直しています。

ミッション志向の産業政策(8分野):

炭素中立型社会の実現
デジタル社会の実現経済安全保障の実現
新しい健康社会の実現災害に対するレジリエンス社会の実現
バイオものづくり革命の実現
成長志向型の資源自律経済の確立
少子化対策に資する地域の包摂的成長

社会基盤(OS)の組替え(5分野):

人材スタートアップ・イノベーション
価値創造経営
徹底した日本社会のグローバル化
行政:EBPM・データ駆動型行政

経済産業政策の新機軸=「期待」の醸成→国内投資・イノベーション・所得向上の3つの好循環の「持続化」を目指しています。

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経済産業政策の新機軸=「期待」の醸成
出典:経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 第2次中間整理 2023.6.27

■マクロ(結果としての経済全体)のフレームワーク

マクロ(結果としての経済全体)のフレームワークでは「国内投資」「イノベーション」「所得向上」で整理しています。

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マクロ(結果としての経済全体)のフレームワーク

出典:経済産業省 産業構造審議会 経済産業政策新機軸部会 第2次中間整理 2023.6.27

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