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近未来におけるICTサービスにおける新たなビジネス創出

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総務省は2015年10月6日、「ICTサービス安心・安全研究会 近未来におけるICTサービスの諸課題展望セッション」において、「ICTサービス安心・安全研究会 近未来におけるICTサービスの諸課題展望セッション」の取りまとめを公表しました。

総務省では、2015年5月から本セッションを開催し、ICTサービスの5年から10年先の近未来の動向を展望し、今後、重要と思われる論点や将来起こりえる様々な課題等についての議論・検討を行い、これらの議論・検討を踏まえ、5年から10年先を見通した取りまとめを公表しています。

本とりまとめでは、 IoTの衝撃と社会全体の変革において、

IoTの衝撃の中、ドローン、ロボット、車とICTの融合、デジタルファブリケーション、シェアリングエコノミーなど新たなサービス・ビジネスがICTにより創出されつつある。そして、ICTやデジタル技術が社会・経済のあらゆる分野に浸透することにより、「デジタルトランスフォーメーション」とも呼ばれる、社会経済全体の構造自体の変革を起こしつつある。

としています。

取りまとめの構成は以下のとおりです。

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出所:「ICTサービス安心・安全研究会 近未来におけるICTサービスの諸課題展望セッション」の取りまとめ 2015.10

ICTによる新たなビジネスの創出では、 ICTにより今までにない新たなサービスやビジネスとして、ドローン、コミュニケーションロボット等が出現するとし、 ドローン、コミュニケーションロボット、車とICTの融合、デジタルファブリケーション、シェアリングエコノミーの5つの新たなビジネスやサービスをあげています。

(1) ドローン

□ 空撮、測量、農薬散布などへの利用が進んでいる(「空の産業革命」)ほか、通信(緊急時の中継局等としての利用)、セキュリ ティ・防犯、物流、災害情報収集等への利用が期待。日本でも農薬散布ヘリや趣味でのラジコン利用が進んでいた下地があり。
□ 携帯電話の普及による電子機器の小型化、低廉化の進展、バッテリーの性能の急速な向上が、ドローンの技術革新及び低 価格化に大きく寄与。 欧米で開発・利用が進んでいるが、日本も高い要素技術を保有。利用には電波利用も不可欠。
□ 本年4月に首相官邸にドローンが落下した事件などを踏まえ、危機管理面、安全面、プライバシー面での議論が高まる。

【課題】
・我が国におけるドローンの普及・発展に関しては、まず社会的信頼感の醸成が必要。
①安全の確保については、本年9月4日に「航空法の一部を改正する法律」が成立し、空域の設定や目視飛行義務等が規定。
②犯罪・テロ等への不正利用防止に関しては、本年6月に国の重要施設等の上空の飛行禁止に関して議員立法が提出。
③ドローンの利用におけるプライバシー保護に関しては、本セッションでの議論、パブリックコメントで寄せられた意見なども踏まえ、本年9月11日 に総務省が「『ドローン』による撮影映像等のインターネット上での取扱に係るガイドライン」を策定・公表。
・利用増大や高度化等への対応に関しては、電波利用に関し情報通信審議会で審議中。上空の利用権や保険等も課題。

(2) コミュニケーションロボット

□ 産業用ロボット等に加え、人間に近い形状で人間と会話が可能なコミュニケーションロボットが出現。
□ コミュニケーションロボットは、個人向けのみならず、介護支援・見守り、接客などの利用にも期待。接客としては、集客効果 が大きいだけでなく、電子商取引で可能な各種データの取得がリアルの店舗でも可能となる可能性。

【課題】
・「ロボットからの安全」(物理的安全性・サイバーセキュリティの確保)と「ロボットによる安全」(利用者が危険な場合の通報等)。
・コミュニケーションロボットが取り扱う個人情報やプライバシーの保護。 ⇒現在実用化されている「Pepper」の例では、
①事前同意の取得、
②利用者が過去の会話等のデータを消去できる機能の搭載、
③譲渡の際の データ消去等のルール化、
④データにアクセスできる管理者の限定、
⑤外部と通信する場合の暗号化 等の取組が行われている。
⇒今後、開発・実用化されるものでも、このような取組は不可欠。個人情報の取扱い方法の明確化に関しては、ロボットの種類や機能、収集デー タの内容や目的は多様であることから、技術進化や社会生活への浸透の様子等を注視しながら進めていくようにすべき。
・アプリケーションの開発環境において参入機会や開発条件等のオープン化、悪質アプリの排除も重要。

(3) 車とICTの融合

□ スタンドアローンのカーナビゲーションが通信連携サービスへ、そして現在はAI、ビッグデータを利用するまでに進化。
□ 「コネクテッドカー」に代表されるように、路車間や車車間の通信を利用する「自動運転」に関する取組、さらには車載Wi-Fi ルータを利用した防災情報の配信や提供に向けた取組も開始。

【課題】

・ハッキング対策等サイバーセキュリティ対策が不可欠。この場合、ICTに限らずシステム全体でのフェイルセーフを考慮すべき。
・自動運転時の事故における責任分担の整理が必要(また、責任分担に関しては保険の在り方とも関係してくることに留意)。
・車車間通信や車載ルータについて、必要な端末や機能を実装した自動車が普及する必要。そのための仕組みづくりが重要。
・通信コストを負担に感じることなく利用できるビジネスモデルが有効。 ・日本の自動車産業が優位を保つためには車の自動化やネットワーク化の潮流においても世界をリードしていく必要。

(4) デジタルファブリケーション

□ 3Dプリンタに代表されるデジタル工作機械によってデジタルデータを物質に出力(成形)する技術であり、価格の低廉化に より普及。従来の大量生産型市場とは異なったロングテール市場の創出・拡大をもたらす可能性。ヘルスケア等に相性がよい。
□ これまでは情報通信を「ICT」と呼んできたが、今後、製造という新たなファクターが組み合わされた「ICF(Information Communication Fabrication)社会」が訪れることも予想。
□ 今後、モノをデータとして送信し、受信先の3Dプリンタで出力する「3次元FAX」が出現することも考えられる。

【課題】
・現状では3Dプリンターは精度、速度等で金型に劣っており、技術革新や品質保証の在り方についても検討される必要。
・合鍵や拳銃など、社会的安全等の観点から問題となる場合の製造防止の方策や、製造物責任、保険の在り方等も課題。

(5) シェアリングエコノミー

□ ICTを利用し、自分の使うモノを「所有」するのではなく「共有」する文化が生まれ、カーシェア、インターネットオークション等、 空いているリソースを必要とする者へ引き渡すビジネス・サービス(シェアリングエコノミー)が出現(B2CからP2Pへの萌芽)。
□ 例えば、UBERは、既存のサービスの情報の非対称性をICTにより解決するために生まれたものと考えられる。

【課題】
・シェアリングエコノミーのサービスは、個人間取引となる場合も多く、安全の確保や利用者保護の仕組みが必要。
・既存サービスの価値観と異なるシェアリングエコノミーによるサービスでは制度上の位置付けの再定義が必要な場合も想定。
・シェアリングエコノミーにより雇用のシフトや雇用スタイルの変化が生じ、既存のビジネスやサービスとの摩擦を生む場合も。

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