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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマート革命とソーシャルメディアの新旧交代、巣移りの儀式が始まったフェースブックの仕組みの欠陥、Whatsapp、LINE、Path、カカオトーク、Wechatなどメッセンジャーアプリの台頭の訳

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<序文>

 フェースブックからの若者離れが止まらないようです。フェースブック自身がそれを認めている上に欧米では、WhatsappKikPathなどのメッセンジャーサービスが急速に成長しています。アジアでもLINEやカカオトーク、Wechatがあっという間に席捲しています。

 

ビジネスウイーク誌はフェースブックのピンチを「スマートフォン上で誕生したメッセンジャーサービスは、最早、止められない。既に1億人の参加者を獲得したサービスが9個、それを追うサービスが20個もある」と述べています。

 

これは明らかにソーシャルメディアの新旧交代を意味する「巣移りの儀式が始まった証拠」と考えられます。

 

ではメッセンジャーサービスはソーシャルメディアとしてどこが優れているのでしょうか?フェースブック型のSNSが恐竜であり、メッセンジャー型のサービスが哺乳類である訳を考えてみましょう。

 

★★ Pew Study Finds Two-Thirds Of Facebook Users Have Taken A Multi-Week Break, 27% Plan To Reduce Time On The Site In 2013

 

★★ The age of the brag is over: why Facebook might be losing teens

 

★★ Is Facebook Losing Its Edge?

 

★★WeChat’s Quest to Become China’s First Global Internet Product

 

★★Chris Dixon: 3D Printing Will Transform Manufacturing, Social Media Startups Are Facing “General Fatigue”

★★What's Facebook up to With Android? (ビジネスウイーク誌)

 引用

On mobile, things are different—and we know this. Facebook’s efforts to reorient itself toward mobile are well established. The company has taken a mobile-first approach, which has led to such apps as Messenger, Camera, and the not-awesome Poke as well as the purchase of Instagram. But the mobile field is far more competitive when it comes to messaging and communication. Facebook’s Messenger has amassed tens of millions of users, but independent chat apps such as Whatsapp and WeChat have users in the hundreds of millions. “There are nine [social] services with more than a hundred million users each,” says Benedict Evans of Enders Analysis. “And at least another 20 with more than a million users each.”

引用終わり

 

 Pewによるフェースブック疲れの秘密の調査

The full breakdown of the Facebook vacationers’ reasons are as follows:

Pew Facebook study

  <出所:テッククランチ>

  <出所:Path>

 スタンプだけで会話するホンク!!

Honk

★★ホンク

<出所:ホンク>

<フェースブック疲れの秘密>

 調査会社のPewによればフェースブックを一定期間離れて休養する人々、時間を減らそうとしている人々が参加者の3分の2に及ぶと言われています。

フェースブックは既にクールでは無く、飽き飽きしたと考える人々の数が増えていると言っています。

 

また投資家のクリス・デイクソン氏(上記ブログ)によれば、ソーシャルメディアにおいては「一般的なSNS疲れの為、3Dプリンターなど具体的なモノ」を求める人々が増えていると言っています。特にソーシャルメディアに関わっていた技術者がインターネット日用大工に惹かれていると言うのです。

 

この辺りの議論はとても面白いのですが、フェースブックなど既存のSNSの弱点は「色々な異なる群れの知り合いを一緒にしてグループ的なコミュニケーションを取ろうとする点」にあります。最近の社会心理学理論では人は「複数の顔」を持っており、個々の顔は所属する様々な群れと対応していると考えられています。例えば会社の群れでは部長の顔、家族の群れでは父親の顔、土日の群れではサッカーのコーチの顔ですね。「それぞれの顔を一緒にして会話をしようとすると色々な気疲れが生じるので全てが中途半端になる」「だから夕ご飯の献立のような飽き飽きする写真しか共有しない」と言うのが「フェースブック疲れ」論の主張です。(仮想の友達、ネットの友達をテーマとしたミクシィ疲れとは切り口が明らかに異なります)

 

だからこの一般的気疲れに飽き飽きして参加者の一部はフェースブックから離れて行く訳ですね。

 

注)「群れ」と言うのは進化生態学や人類学などのコンセプトであり、メッセンジャーサービスは「6次の隔たり論」(スタンレー・ミルグラム)よりも群れを説明した「言葉の起源、猿の毛繕い、人のゴシップ論」(ロビン・ダンバー)を重視しています。

ことばの起源猿の毛づくろい、人のゴシップ (ロビン・ダンバーの社会脳仮説)

  群れ理論に基づいてPathなどは知り合いの数を150人に制限している

ことばの起源―猿の毛づくろい、人のゴシップ

                 


  <出所:アマゾン>

<巣移りの儀式によるソーシャルメディアの洗練>

 このフェースブック疲れの現象はかなり早くから指摘されていましたが、フェースブックは参加者を増やそうとするあまり、逆に様々な群れの知り合いを個人の会話に引き込む方向(例えばタイムラインなど)を追求して来ました。

 

一方メッセンジャーサービスは一対一の個人の関係が基本であり、それぞれの群れの会話は100人程度のグループチャットに押し込められています。個人間のチャットのプラットフォームの上に群れ単位、群れのテーマ単位のグループチャットが載っています。このように個人間の一対一の会話の上にグループの会話を載せると言うのは、フェースブック疲れを解決する非常に秀逸なやり方と考えられます。

 

さて一般的に申し上げてグーグルの検索サービスのように理性だけが働くサービスと異なり、ソーシャルメディアには感情要素が伴う為、中毒症状とある種の飽きが見られます。そしてこの中毒症状と飽きを体験しながら人々は群れをなしてサービスからサービスへと定期的に移行します。この繰り返しが「巣移りの儀式」であり、それを通じてソーシャルメディアは次第に洗練されて来ました。

 

現在、フェースブックと各種メッセンジャーサービスの間で発生している事象は、スマート革命がきっかけで仕組みの洗練と巣移りの儀式が大規模に進行していると考えられます。

 

その背景にはスマート革命(一人一台のパソコンから一人が7台のスマートデバイスを使いこなす新たな個人コンピューティングへの移行)による、インターネットの社会への更なる定着があります。

<今後どうなるか>

 米国ではLINE型のPathが1週間に百万人の参加者を得たり、カナダのKikが毎日二十万人を獲得するなどメッセンジャーサービスが急速に伸びています。そして各社は嘗てのフェースブックを見習ってプラットフォームカンパニーを作ろうとしています。プラットフォーム企業と言うのは、メッセンジャーサービスをプラットフォームとしてAPIを開放し、その上に第三者の様々なサービスを載せて行く形態です。既に電子書籍、漫画、音楽、占いやゲーム、アバターなど様々なサービスが載り始めています。

 

果たしてフェースブックはスマート革命と言う隕石爆発時代の恐竜であり、メッセンジャーサービスは哺乳類に脱皮出来るでしょうか?

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