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テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマート革命と電波活用の未来、放送事業の大きな転換点か?米国ABC放送が遂に24時間のライブ放送をインターネットで流すに到った訳!!

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<序文>

 一人一台のパソコン時代が終焉し、一人が七台のスマートデバイスを使いこなすスマート革命が進行する中、米国ABC放送が遂に24時間のインターネット・ライブ放送を開始します。最初の都市はニューヨークとフィラデルフィアです。(2013514日からです)この夏には他の6都市でもサービスを開始します。このプロジェクトはABC放送の社内ではProject Acelaと呼ばれ、戦略的なアプローチとして特別扱いされています。かつてのボストンとワシントンを結ぶ高速鉄道を意味します。ABC放送による技術革新を大胆に提示し、視聴者があっと驚くサービスの実現を狙っているのでしょう。

 

視聴者の8割から9割が有料テレビで視聴する時代に地上波がインターネットでライブ放送を流して成功すれば、将来の電波活用のあり方に大きな影響を与えかねません。現在の地上波などテレビ放送電波は不要、インターネットをサポートする通信キャリアに周波数帯を全て移せと言う声が米国議会から出る可能性もあります。

 

そう言ったリスクを承知の上でABC放送は何故、24時間のインターネット・ライブ放送を開始するのでしょうか。

 

★★ How ABC plans to use live streaming and the cloud to challenge Aereo

 

★★ ABC to Live-Stream Its Shows via App

 

★★ ABC will reportedly launch TV streaming app this week

 

★★Now CBS is threatening to become a cable channel if Aereo isn’t shut down

 

 

★★Aereo could cause Fox to become a cable channel, according to News Corp.

abc logo

 ニューヨークタイムスのインタビューに答えるDisney-ABC Television Group

Tina Fineberg for The New York Times

Anne Sweeney, the president of the Disney-ABC Television Group, and Albert Cheng, its executive vice president.

<出所:ニューヨークタイムス紙>

 

ABC放送の戦略>

 サービス開始日の2013514日はABC放送などが秋のタイム広告の約8割を販売するアップフロントにおけるABC放送の広告主企業に対するプレゼンテーションの当日に当たります。インターネットライブ放送は地上波電波放送とは異なる広告を付けると見られている為、ABC放送はタイム広告販売のアプフロントに間に合わせたと言われています。スマート革命により大きく変化する視聴環境にABC放送は着実に対応していると広告主企業に表明する意味もあります。(タイム広告とは番組に紐付いたテレビCMです)

 

最初のアプリはiPhones iPads用に準備されています。そしてアンドロイドなどには今後提供されます。

 

但し、インターネット・ライブ放送は地域の各地域の局から提供されており、提携先のCATVなどの有料契約者だけに提供されるサービスです。

一言で申し上げればABC放送はスマート革命戦略として「広告と有料サービス化」の二本柱で稼ぐ戦略です。

 

そしてパソコンとしてabc.comHuluなどにパソコンで提供している無料の見逃し放送は、次第に中止する方向だと言われています。

 

<打倒Aereo、ネットフリックス対抗>

 これまで米国地上波はロンドンオリンピック時のNBC放送への対応、CBS放送の夕方ニュースなどがありました。しかし24時間のライブ放送をインターネットで提供するやり方はABC放送が初めてです。尚、フォックステレビも同様のインターネットライブ放送の提供を計画していると言われています。

 

 さてABC放送に戦略転換を強いたのはネットフリックスの再成長によるスマートテレビの台頭と地上波電波をアンテナで受けてiPhones iPadsなどのIP信号に変換して各家庭にサービスしているAereoに裁判で負け始めた結果だろうと見られています。

 

何しろフォックステレビやCBS放送はAereoを著作権違反で訴えた裁判で敗訴した時点で「将来、地上波放送を辞めることもあり得る」と発言して物議を醸しています。今回のProject Acelaは、ABC放送によるその第一歩と見ることもできます。裁判に勝ったAereoは勢いに載ってボストンなど全米にサービスを拡大し始めました。

 

またネットフリックスの「ハウスオブカード」などの独自番組の13話一挙公開が未来のドラマ視聴スタイルとして大変な話題になる中、ABC放送はモーニング番組などライブ放送を朝早くから働きに出ている家庭にいない生活者やオフィスに届けたかったのでしょう。

 

Aereoより圧倒的にコストが安い手法>

 今回のABC放送の手法は地方局が1,000ドルのリナックスサーバーを一台買えば実施できます。またサービスはアマゾンのAWSから実施するそうです。このやり方はAereoより圧倒的にコストが安い手法と見られています。これはABC放送の戦略検討の本気度を示しています。

 

<地方局と関連CATVなどとの交渉>

 ABC放送がインターネット・ライブ放送エリアを一挙に拡大しないのは、地方局や関連CATVなどとの交渉が必要だからです。例えばHearst Televisionとの契約では今後ボストンを含む13都市でサービスを提供します。

 

<フォックステレビやCBSNBCは追随するか?>

 こう言ったABC放送の動きに対してフォックステレビは同様のサービスを独自に検討中と見られています。また当然、CBS放送、NBC放送も何らかの動きをしてくるでしょう。

 

しかし地上波のインターネット・ライブ放送が成功すれば、「将来、地上波を廃止する」可能性も高まる為、ABC放送などは相当の覚悟で事に臨んでいるのでしょう。そうなればスマートテレビも放送波とインターネットのハイブリッド方式では無く、インターネットだけを意識すれば良いことになります。(まるで電気自動車、燃料電池車ですね)

 

<小手先の日本放送業界と異なる本気度>

 日本の地上波のスマート革命対応は「ネットにちょろちょろ見逃し放送を出したり、ロケフリ機器を認める方向」で動いています。またワンセグ方式も携帯用のマルチメディア放送も現状の電波中心主義から一歩も出ていません。

 スマート革命、地デジの本質から言えば、インターネットを次世代のチャネルと考えて24時間のライブ放送を大胆に流す道が王道と考えられます。

 

変化の本質に対応し始めた米国ABC放送に注目です。

 

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