オルタナティブ・ブログ > インターネットの第二の波とソーシャルメディアマーケティング >

テレビのデジタル化がドライビングフォースとなり、全ての情報メディアが一旦、収縮する時代の羅針盤

スマート革命と自動運転、究極のサービス支配論理「自動運転」は既存の自動車メーカーを破壊するのか!!?

»

<序文>

 アウディとかBMWとかフォードとか、世界中の自動車メーカーが自動運転に熱心な中で日本のトヨタの姿勢が煮え切らないと日経新聞(2013328日付)が報道しています。CES2013において自動運転のデモを実施したもののトヨタは持ち時間45分の内、10分を使って早々に引き上げたというものです。

 

自動運転は一体、トヨタにとって何が問題なのでしょうか?

 

 

★★ 「自動運転」は破壊者か 攻めるグーグル、悩むトヨタ 

グーグルの無人運転にはトヨタのレクサスなどトヨタカーが使われている!!

Googles_lexus_rx_450h_selfdriving_c

Google_driverless_car_trimmed

<出所:ウイキーペディア>

 

<トヨタの悩みは通信キャリアやパソコン業界の悩みと同じ>

 1990年代、Windows95の登場でパソコンが一挙に広まりました。しかしパソコンに参入した家電メーカー間の競争は激烈であり、稼いだのは中心的なモジュール部品であるWindows95やオフィス製品を提供したマイクロソフトだけでした。マイクロソフトは胴元として競争に関係なく、実に安定した売り上げを稼ぎまくりました。一方多くの家電メーカーは疲弊してしまいました。

 

 スマートフォンが出る前、世界中の通信業界が恐れていたのは、マイクロソフトのプラットフォームOSであるWindows モバイルでした。携帯電話がインターネットに繋がるスマートフォンの時代になれば、各通信機器メーカーや各通信キャリアはWindows モバイルの採用を余儀なくされ、全体の支配力と収益力をマイクロソフトが握ると恐れていました。

しかし実際に勝ったのはIOSを擁するアップルであり、一方グーグルは稼いでこそいませんが、アンドロイドOSにより、マイクロソフトに代わって通信キャリアに対して大きな支配力を発揮する立場を得ました。最早、通信キャリアはアップルやグーグルの動きを無視できません。こうなれば業界の支配権を一部放棄したようなものです。

 

 もうすぐテレビでも同じ事がおきるかもしれません。

 

一方自動車の場合にはICT革命が関わる領域は、制御系のシステムと娯楽及びナビ系のシステムに明確に分かれており、スマートカーなどスマート革命に関連するのは娯楽及びナビ系のシステムであると考えられてきました。これならば各メーカーにとっては、例え一部をアップルのIOSやアンドロイドOSに握られたとしても、自動車の中心基盤である制御系のシステムは、自社がしっかりグリップを握れる領域であると考えられてきました。

 

しかしグーグルがトヨタ車を活用して自動運転をリードする時代が来て、トヨタが何故か悩んでいるようです。その理由はかつての通信キャリアやパソコン時代の家電メーカーと同じ悩みであると考えられます。

 

<自動運転により制御性システムの支配をグーグルに譲り渡す?>

 従来の消費者インターネットにおけるナビや娯楽の領域に関しては、GMのように自社でコントロールする動き、フォードのようにスマートフォンや通信サービスと連携する動きなどさまざまです。

 

 しかしグーグルなどが主体的に実施する自動運転が支配的となれば、自動車会社のコア技術である制御系のシステムの心臓部分=プラットフォームOSを将来、グーグルや当然、アップルに譲り渡す可能性が高まります。これは自動車開発の心臓部をグーグルなどに握られたも同然の事態です。グーグルがトヨタの車を使って自動運転を実施する中でトヨタはこの事に気がついたと言う訳です。(日経記事参照)

 

自動車が電気自動車化や燃料電池化する動きの中で自動運転の実施となれば業界共通のデファクトスタンダードな制御系のシステムをもカバーするプラットフォームOSが必要となります。欧州のスマートテレビ標準であるHbbTVの動きのように業界を挙げて自動車業界共通のプラットフォームOSを作る動きもありますが、業界が一丸となって取り組む仕組みの多くは大抵、失敗しています。(ハリウッドが作ったロッカーサービスのウルトラバイオレットがよい例です)

 但し、多くの場合、失敗していると言うだけで通信標準のLTEの設定のように成功した事例もあります。確かにサービスの事例では大抵、失敗していますが。

 

「その時にはグーグルやアップルにプラットフォームOSを頼るのか?」と言う多少先見えした悩みをトヨタは持ったと推測されます。(記事の見方が正しいと仮定して論を進めます)

 

グーグルは将来、あらゆる機器が人と自然な交流が出来るインターフェースを持つソーシャルロボット化(MITのシャリー・タークル教授のコンセプト)すると考えています。音声を解し、ジェスチャーや人の表情を解する時代がもう目の前に来ています。自動運転はそれを更に進めます。

 

そうなればスマート機器がロボットになる時代のロボットOSが必要となります。アンドロイドOSをロボットOS化する為には、自動運転の実施はグーグルにとって必須の課題だと言うことでしょう。自動運転により汎用技術としてのロボットOSを磨き上げると言う戦略です。

 

車に限定して考えればグーグルは、米国でネットスーパーとECを統合したような当日配送サービスShopping Expressを準備しています。その中で2020年頃から輸送用トラックの自動運転を始める計画を持っていると言う見方もあります。

 

<これって敗北主義?または先見え心配?>

 

 一方欧米の自動車他社は航空サービス業界がワンワールドやスターアライアンスを作ったように、自動車用OSに業界標準が必要な時代が来れば、数社ずつ組んでVHS対ベータのような戦いを行って、業界内の関ヶ原の戦に勝ったグループの業界標準を採用すればよいと思っていると考えられます。数社ごとに組んで勝ち残りで業界標準を追求する方式ですね。

 

一方トヨタの悩みとは「この手の業界標準などは上手く行かない」と言った感じで戦う前から敗北主義に陥っているのでしょうか?筆者に言わせれば、これは賢すぎるエリート集団の心配、一種のリスキーシフト(集団極化現象)かと思います。(飽くまで日経記事の見方が正しければと言う仮定の話ですが)

 

豊田章男社長がスマート革命に非常に理解のあるトヨタも、ここは腹を決めないとまずいですね。然し凄い時代が始まろうとしています。

Comment(0)