海外で注目されているブロックチェーン企業の創設者と独占インタビュー

IT部門に丸投げするな:"本当にブロックチェーンは必要ですか?"

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先日、某ブロックチェーン企業の創設者に会いに向かっている飛行機の中で、隣の席の女性が読んでいるタイトルに「ブロックチェーン」と書いてあることに気づき、会話が始まった。

彼女はヴィクトリア・ルミュー(Victoria Lemieux)博士。ブロックチェーンに関する研究をされている、ブリティッシュコロンビア大学の有名人だ。彼女は「ブロックチェーンは必要ですか?」という記事を書いており、とても共感できる内容だったため、以下に紹介する。

ブロックチェーンというワードが出ると、「そういうお話はIT部門に・・・」だったり「それはシステム部門に聞いてみないと・・・」と避けられるケースが多い。たしかにブロックチェーンの特徴を理解していないと答えられないかもしれない。だが、概要を把握した上で、事業のどの領域で活用したらいいのか、どこまで日常のオペレーションが効率化されるのか、また、消費者に対する向き合い方がどのように変わるのかなどは考えられたほうが良い。そういった判断はIT部門だけではできないわけで、それは経営者、また先日紹介したワリマイのようなサプライチェーン・マネジメントでの活用が想定されるものに関しては、マーケティングがすべきだと考える。

ルミュー博士の記事では、これから紹介する10点の条件がすべて当てはまらないのであれば、必ずしもブロックチェーンは必要ではないと主張する。技術革新の流れに乗り遅れないようにすることは大事だが、「本当にブロックチェーンが必要なのか」という問いに、ぜひ経営者が答えられるようになってほしい。

問1:現状のデータ記録システムに満足しているか?

大量のデータを記録し、それをほぼリアルタイムの分析などによく活用している場合、同じ環境をブロックチェーン化するには膨大なリソースが必要になる上に、まだタイムラグが生じるため、あまり現実的ではない。

問2:取引などにまつわる"真実"について、互いに信用していない複数の関係者たちが、その情報を確認できる必要はあるか?

データを確認する必要ある人間や組織が複数ない場合や、信頼関係に基づく関係者の場合、ブロックチェーンは必要ないかもしれない。

問3:複数の信用していない組織同士の取引が、すべて同じルールに基づいて行われているという保証は必要か?

マーケットプレイスのように、売り手と買い手が複数おり、互いに信用できる関係にない場合は、ブロックチェーンはとても便利。

問4:取引の仲介役を取り除きたい理由はあるか?

たとえば手数料を下げたいだったり、取引の実行スピードを上げたいだったり、あるいは日時に関する拘束をなくしたいなどといったケースの場合は、ブロックチェーンは非常に便利。また、自社の生業そのものが仲介業の場合は、今のうちにブロックチェーンの仕組みを理解し、それとどう共存するのかを考えておいたほうが良い。

問5:一つひとつの取引のセキュリティはどれだけ大事か?

ブロックチェーンの仕組みは、取引の透明性と不変性が担保されるため、セキュリティ度は高い。一方で、まだデファクト・スタンダードと呼べるものは生まれておらず、セキュリティと取引速度や手数料などといった使い勝手の良さのどちらかを選ばなくてはならない状況だ。どのプロトコルを採用するかに関しては、時期も含め、社内でじっくり検討する必要がある。(高山の主張は、ここ数年間は自社開発をせず、外部との提携で試行錯誤することだ)

問6:ビジネス上の取引履歴をすべて関係者全員が閲覧できるようにする必要はあるか?

ブロックチェーンの特徴は取引の一部ないしはすべてを、そのネットワークに参加しているコンピューターに記録することだ。もちろん、その中身はハッシュ化されているため見えないが、取引の履歴はすべて閲覧可能な状態になっており、それを通じて、後からの事実確認などは可能になる。

問7:同じ資産が二度使われるというケースを避ける必要があるか?

たとえば、A氏がB氏に家を売却し、B氏がその家に引っ越す前にC氏にも家を売却するなどといったことはブロックチェーン上では不可能なため、管理者が不在のシステムの中で、B氏もC氏も安心して家の購入手続きをすることができる。

問8:取引は一切改ざんされていないという保証は必要か?

フォルクスワーゲンや神戸製鋼に加え、政府の森友学園に関する改ざん問題もニュースに取り上げられていたが、ブロックチェーンは情報を追加していくことしかできないため、過去の履歴は残ったままになる。したがって、仮にある情報を変更しても、変更される前の情報とそれを変更したという履歴が残ることになり、その結果、改ざんは不可能。

問9:常に複数のコンピューターにおける記録内容が、管理者不在の中でも自動的に同期されている必要はあるか?

ブロックチェーンの特徴は、ネットワークに参加しているコンピューターの一つが他と異なる記録を持っている場合、その記録は信用に値しないと見なされる。

問10:現状の自社を取り巻く環境は規制が多いか、それともより柔軟か?

現状では、あまり規制が厳しくない環境でのブロックチェーン導入が進んでいるため、金融やインフラ、更には不特定多数の個人情報を取り扱う業界ではブロックチェーンの活用にまだ時間がかかるだろう。

まとめ:これからブロックチェーン利用の活発化が見込める業界

ルミュー博士が挙げる10点の条件はたしかにそうだが、それぞれの比重は異なるであろう。ブロックチェーンの特徴は管理者が不在でも、互いに信用できない者同士が取引できること。この点は非常に大きい。したがって、自社の従業員だけが使うデータベースではなく、利害関係も様々な複数の企業で使うものの場合、特にB2Cで消費者に対して、情報の透明性を保証する場合、もしくはC2Cで消費者同士の取引を管理する場合には非常に便利だ。

したがって、各業界にいるビジネスパーソンには、新しい技術だからといってITやシステム部門に丸投げせずに、しっかりと自分たちでその必要性、またその導入前のポジ・ネガの整理をしてほしい。その際に上記の10のリストなども、非常に便利なツールになると信じている。

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