海外で注目されているブロックチェーン企業の創設者と独占インタビュー

なぜブロックチェーンか?:SEALのビジネスモデルとトークンの役割について創設者に聞く

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なぜブロックチェーンなのか?

ブロックチェーン業界でよくあるのは、とりあえずブロックチェーン化しますという話。ヘッドハンティングのブロックチェーン化、音楽視聴サービスのブロックチェーン化、データベースのブロックチェーン化。調べたらきりがないほど、各業界で何かしらのブロックチェーン・プロジェクトは存在する。ただ、肝心なのは「なぜその課題を解決するために、ブロックチェーンを活用すべきなのか?」という質問である。

ブロックチェーンは既存のデータベースとは異なり膨大なデータ処理には向いていない。一方で、ハッキングに対するセキュリティと、透明性を担保した情報管理は得意であるため、互いに信用していない人ないしは組織が複数参加するネットワーク上での取引や記録の管理には向いている。したがって、仲介人を排除して個人間取引の速度アップとコストダウンを実現し、ハッキングから守られながら、神戸製鋼やフォルクスワーゲンのような改ざんを防ぐことができるわけだが、万能薬ではないため、ブロックチェーンで達成したいことを明確にし、なおかつ使う領域を絞っておかないと、

高級ブランドの管理にブロックチェーンは必要なのか?シールがブロックチェーンを使って実現しようとしているエコシステムについて、CEOのバート氏に詳しく話を聞いてみた。

unnamed.png※シールCEO:バート・フェルショール氏(Bart Verschoor)

まずはシールの仕組みについて教えてください。

バート氏:「シールは商品にNFCチップを埋め込んで、それを弊社のアプリか、弊社のSDKを使う他社のアプリを使って消費者がスキャンできるというものです。重要なのは、特に海外の工場で製造している場合、しっかりと製造段階からホンモノの管理をすることです。」

高山:「製造段階からホンモノの管理をするというのはどういうことでしょうか?そもそもニセモノは違うところで粗悪な材料で作られているものを指すのでは?」

バート氏:「海外でよくあるケースは"深夜シフト"と呼ばれるもので、工場は日中にブランドとの契約通り製造をするのですが、深夜に同じ材料を使って非公式商品を大量生産することです。したがって、商品の品質という意味ではまったく問題ないのですが、ブランドが管理できない状態で同じ品質の安価商品が大量に市場に出回るため、値崩れを起こし、従来のニセモノよりももっとたちが悪いのです。そういったニセモノも防ぐべきです。我々シールがやろうとしていること、それは製造段階からブランドと製造量に応じたチップを用意し、それが埋め込まれているものだけをホンモノとすることです。もちろん一つひとつのチップには固有のIDが付与されており、出荷前に予め決められた担当者がスキャンすることによってすべてブロックチェーン上に登録されるので、偽造はできません。」

高山:「出荷後の管理はどのようにできるのですか?」

バート氏:「市場に流通してからは、消費者の参加が必要不可欠です。消費者は、目の前にある自分のほしい商品がホンモノであることを確認するために、店頭で弊社のアプリを使って商品に埋め込まれているNFCチップを読みます。商品一つひとつの出荷データはブロックチェーンに記録されているので、小売店や卸などが改ざんすることはできません。また、購入の際に消費者はその商品の所有者が自分であるという記録をブロックチェーンに残すことができるのです。記録を残すためには手数料を払う必要があるのが、万が一商品をなくしたり盗まれたとしても、NFCチップのIDで特定することができる上に、その記録は誰も上書きできないので、将来的には中古も含むすべて販売チャネルでIDを管理し、ホンモノかどうかだけでなく、それが盗まれたものかどうかも管理できるようにすることを目指しています。」

高山:「なるほど。偽造者にハッキングされる心配もないですし、万が一盗んだ人がそれをどこかで売ろうとしても、取引の際にIDをスキャンされたらバレるということですね。たしかに高級ブランドでは安心感につながりますね。ただ、消費者がアプリを持っていることが条件になる点について、どのように普及させる予定でしょうか?」

バート氏:「現状弊社のアプリでしかスキャンはできませんが、私たちの目標はSDKも開発して、たとえばNIKEアプリでもそのまま商品スキャンができるようにすることなのです。つまり、わざわざベンチャーの私たちが消費者に告知をし続けてアプリダウンロードを促進するのではなく、私たちはB2Bの交渉を通じて、各ブランドの既存アプリユーザーに利用してもらうのです。」

高山:「でもそうなると、B2Bのハードルがなおさら高まると思いますが、いかがでしょう。ただでさえNFCチップを埋め込むために製造工程を変えなければならないのに、アプリにSDKまで入れてもらう必要があるということですよね。大手になればなるほど、ベンチャーのそういった提案を受けいれてくれないのが、今まで自分の経験で見てきたことですが。」

バート氏:「私たちもその点は見越して、既にコンサルティング会社との協業をする予定です。私が元デロイトのコンサルタントであるため、まずはデロイトと組んで、デロイトがデジタル・トランスフォーメーション支援の一環としてシールを提案するというスキームが互いにメリットのあるものだと考えています。※1 彼らは様々な企業の上層部と既につながりがあるため、ベンチャーとしてアプローチするよりも圧倒的に効率的です。またNFCチップの埋め込みについて、たしかに製造工程を変更するハードルは高いかもしれませんが、消費者が所有権を記録するたびに、その手数料の一部はブランドに還元されるため、商品の数にもよりますが、ある一定期間内には回収できるモデルになっています。」

高山:「それがブロックチェーンならではのメリットということですね。」

バート氏:「そういうことです。消費者が買い物時に商品が自分のものだという記録を残す際に手数料を払います。その一部はスキャンされるたびに自動的にプラットフォームとブランドへ付与されるようになっているのです。裏側では仮想通過として価値の移動が発生するわけですが、利用者に対して負荷を減らすために、表向きにはポイントとして使われるものです。したがって、中古市場において所有者が何回も変わる商品は、その都度ブランドへもお金が還元され、今まで初回の販売で終わっていた商品の収益性が、それ以降も続くという、まったく新しい世界になるのです。また、その工程はすべてブロックチェーンに記録されているので、透明性は担保されていますし改ざんもできません。」

まとめ

シールは今までにない、高級ブランドの販売後の「流通管理」という意味では非常に興味深いモデルである。中古市場の売買の一部がブランドに還元されるという発想は今までなかった。

一方で、それがブランドにとってどれくらいの収益になるのかは気になるところだ。バート氏は別の会話で手数料はブランドが設定できると言っていたが、逆に高すぎると消費者がスキャンしてくれなくなるため、所有権の記録の価値についてはまだ調査が必要かもしれない。

あとはデロイトとのパートナーシップを通じて、どこまで本格導入を促進できるかは気になるところだ。かなりハードルは高いだろうが、既に小規模の実証実験は実施中であるという点と、一度各業界の上位にいる企業との成功事例をいくつか作ることができれば、その後はスムーズに広まることが期待できるため、はじめのステップ、ぜひ頑張ってもらいたい。

なお、シールはまだ資金調達前段階の企業であるため、それでここまで話が進んでいるというのはブロックチェーン業界では珍しい。調達がうまくいった場合には資金を使って自社のブロックチェーンを開発予定とのことだが、今までICOを行ってきた企業の中でも数少ない有望な企業だと感じた。

※シールのサイト:https://seal.network/jp/

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※出典:Seal Network

※1:先日デロイトとのパートナーシップについてリリースが出た:https://seal.network/press-releases/seal-network-and-deloitte-to-build-blockchain-anti-counterfeiting-network-with-the-european-commission.html

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