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ピボットから2年、世界に突っ込んでみて感じたこと

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今日はビジネス側の話をするのでアプリディベロッパーの方には少々退屈する内容かもしれません。

今日シリーズBのラウンドとして総額10億円の資金調達を実施しました。昨年のちょうど今ごろシリーズAのラウンドで4億円弱の調達をした時から約1年、会社をピボット(方向転換)して現在のAndroidアプリ収益化プラットフォームを 全世界で展開する事業に参入する準備をした時からちょうど2年が経過していました。(時間がたつのは本当に早い)

サービスを導入して頂いているアプリも世界で累計6000万ダウンロードを越えて、事業の売上も昨年1年間で170倍以上に成長させることができました。昨年夏以降のAndroid端末の急激な普及が追い風になりました。

事業を開始した当時の「Android×アジアでNo.1になる」という目標もようやく達成できそうなフェーズに来たので、もう一段高いステージで勝負したいと考えて今回のラウンドを実施しました。

実はこの事業にもうひとつ別の目標がありました。それは「経済的な国境が無くなるこれからの時代に、日本人がどのように生きて、日本企業がどのように成長していくべきか、そのロールモデルを作りたい」というずっと個人的な目標です。 4ヶ月ぐらい前に書いた「ベンチャー企業がグローバル展開する難しさ」というブログ記事の続編として自分の中でひと区切りつけたいと思います。

資金調達した後はおとなしくしているように無言のプレッシャーを多方面からひしひし感じますが、個人的に重要なことなので空気を読まずにブログに残しておきます(これ書いた後おとなしくします)。

経済成長が頭打ちになり、これからどのように発展していけば良いか方向性がわからない時代だなとつくづく思います。

海外をうろうろしながら自分なりに考えてみて、『外貨を稼ぐ日本人と日本企業の存在が重要になる。内需に頼らない形での成長モデルへの転換がこれからの日本には必要。』と強く感じるようになりました。

机上の空論だけを展開してても世界は1ミリも変わらない事は今まで26年間生きてきてうんざりするほどよく理解しているつもりです。 このテーマに強い問題意識を感じているのであれば、それを解決するのがきっと自分の役割なんだろうと思い込むことにしてこの実証のために走ろうと思いました。

自分たちだけで成長するよりも、そこでの経験やノウハウを持ち帰って次につなげること、そして流れを止めないことのほうが1000倍価値のあることだと私は思います。

この記事はピボットから今までの2年間で私が個人的に感じた完全な私見ですので、世界で勝負をしたいと考えている人がクラックにはまらないように、参考程度に読んで頂けると嬉しいです。



●ピボット(方向転換)のきっかけ

現在の事業を始める前はグローバルとはまったく関係のないWEBマーケティングを主事業としていて、約3年前の当時は私自身は飛行機にも乗った事が無いスーパードメスティックマン。 既存事業は安定的なビジネスとして利益を出せていましたが、当時アメリカではfacebook・Zynga・GROUPONなどの桁違いの成長をする企業が頭角を表してきたときでした。 いまで言えばSquare、DropBox、Evernoteあたりが近い。特にfacebookとGROUPONは自分とそれほど年が変わらない20代の創業者によって運営されていました。

「数字の桁が「二つ」違う。。。」

売上の桁がひとつ違うのであれば、努力でカバーできますが、2桁違うとこれは もう根本的な「何か」が異なる。今の延長線上を10年継続していったとしても、あのスケールには到達しえない、能力が違うわけではなく価値観や考え方そのものが異なるだろうと感じました。

どうして自社と変わらない時期に立ち上がった企業が自分の100倍以上のスケールを実現している理由がまったくわからない。 その理由がどうしても知りたくなり「外」の世界に目を向けるようになったのがきっかけでした。



●ベンチャー企業と優良企業の違い

「外」の世界の起業家や投資家の考え方に触れるまでは、自分の経営している会社がイノベーションを目指すベンチャー企業なのか、100年続く優良企業になりたいのか、 その目指す方向性も恥ずかしながらわかっていませんでしたというか2つの違いがよくわかりませんでした。ひとくくりで「会社」でした。

ベンチャー企業であれば目的は市場の破壊と創造が最優先。優良企業を目指すのであれば、企業の継続性と雇用の維持のほうが最優先にあります。

自社は実際にはそのどちらでも無くて、イノベーションだとか言っておきながら、「失敗しないように」少しづつ投資をして勝負なんてまるでしていませんでした。 そこらへんが何とも言えない違和感というか、不完全燃焼を感じていた原因でした。

そして前述した桁違いの速度と規模で成長していた企業はあきらかに「ベンチャー企業」であり「イノベーター」であって、堅実な優良企業になるとは創業者達は考えてはいません(周囲の人達は考えていたと思いますが)。 実際に各社上場した後もまったく安定はしていません。どちらの条件も両方満たすのが一番なんですが、勝負する時は何を優先するかが重要になります。

このまま続けていてもたどりつける所はもう分かっているのであれば、いっそ優良企業になる選択肢はここで捨てて、市場の破壊と創造を目的にしようと決め、そこから日本に戻り経営スタイルを180度転換しました。彼らと同じ目線で本気で勝負しようと。



●「誰の」アドバイスを聞くか?

20代で会社を経営しているとありがたいことに色んな人からアドバイスを頂きます。 他人のアドバイスを謙虚に聞き入れる姿勢が重要、と言われていて異論を差し挟む余地は無いかと思われます。

ただ私はこれは半分当たってて、もう半分は間違っていると思っています。

アドバイスはその人が過去に経験した失敗談と成功談を前提にして成り立つので、人によって千差万別。全員のアドバイスを聞いていると右を見ながら左を見るような矛盾した行動を取らなければいけないこともあります。 自分の目指している方向とはまったく違う方向へ進んでしまうこともある。

私は自分が到達したい目標地点に既に「行ったことがある」人のアドバイスのみを聞くようにしていました。逆にそれ以外を意識的に頭の隅に追いやっていました(ごめんなさい)。 身近にいるからという理由でアドバイスをあおぐのはあまりお勧めしません。 人間は誰と一緒にいるかで思考や価値観が形成されます。現在よりも大きく飛躍したい、もっと先にある世界を覗きたいと感じているなら、そっち側にいる人の意見を求めるべきです(相手にしてくれるかどうかは別の問題)

もうひとつ注意したいのは権威とされている人たちが必ずしも未来まで見通せるとは限らない点。彼らは過去の実績によりそのポジションを得ているので未来がどうなるかはまったく別の話です。

この事業を参入する前の段階で色々な人に話をしましたが、「ベンチャービジネス」に詳しい人たちには「うまくいかないから考え直したほうがいい」と言われました。 人によっては1時間かけて「うまくいかない」理由を説かれることもありました。

2010年当時はスマホがここまで普及し巨大なプラットフォームになることにはかなり懐疑的な見方が多かった。ただ中国市場やアメリカ市場の熱気を間近で見て確信に近いものを感じていました。 自分が信じるほうに賭けて見ることにしました。

多くの人が「それはきっとうまくいくよ」とアドバイスをもらえるのは、既に誰かが思いついてやっているか、準備をしている場合が多いです。 逆に誰も予想していないことを軌道にのせたときには、自分にも予想外な未来がまっていることがある。競馬で言えば万馬券が出るのと同じ理屈です。

最近パズドラの衝撃的な数字がIRで明らかになりましたが、パズドラに限らずに現段階でスマホで好調な企業は、ネイティブアプリがまだ注目されていなかった黎明期から参入して競争が激しくなる前に多くのノウハウを蓄積することが出来た企業です。 1~2年前の当時は業界世論の真逆に投資をした人たちなので、「なぜそんな儲からない市場に投資をするの?」というリアクションをもらったんじゃないかな、と勝手に想像しています。



●あるファウンダーのアドバイス

この事業を開始した当初はまだ実績が無くB2Bの事業だったので、「大企業といかにパートナーシップを構築できるかが重要だ」というアドバイスをよくもらいました。 私達自身も実際にそう考えていましたし。

実は1人だけまったく別のアドバイスをくれた人がいました。「今のフェーズでそんなことをしても時間の無駄だから、小規模な顧客の声に集中しなさい」と言われました。 実はそれはある世界的な広告ネットワーク(IT業界の人なら必ず知ってる)の創業者の1人でした。

当時は「そんなことしててもスケールしないだろ」と思ってましたが、後になって彼の考えのほうが正しかったことがわかりました。 サービスには段階があり、正しい手順を踏まないと次のステージには上れないことを経験則上知っていたんでしょうね。 これ以降は実践した上で出てきたものなのか、借り物の知識なのかをよく見極めて、話を聞くようになりました。 外から見ていた見物人の話と実際に橋の向こう側まで渡れた人の話は、同じ事象を語っていても別の話のように聞こえるのと似ています。



●いままでの経営の常道が通用しない時

ここでの経営の常道と言うのは、近くの本屋の「経営」コーナーにある中小企業・ベンチャー企業向けの経営戦略本に乗っている方法論です。戦略コンサルタントの人がよく教えてくれる「あれ」です。 ピボット前ではそれらの知識を吸収することで「会社っぽい」ものがなんとかできあがりました。

最初から日本以外で事業を展開し、急速に世界中で普及するスマートフォン市場に飛び込んで、これらの方法論はまったくうまくいかなかった。。。本当にもう全然うまくいきませんでした。

「俺がアホなだけか」とも最初は思いましたが、あまりにも違和感があるというか。。。いっそのことその逆を繰り返したらどうなるか。 意外にこっちのほうがうまく周り始めたんで驚きました。

自分がいままでお手本にしてきた経営理論は安定成長を続ける優良企業を目指すための教科書であって、グローバルに突っ込むメガベンチャーを目指すための体系をまとめたものではありません。 よく考えたらうまくいかないのは当たり前でした。サンフランシスコに東京から新幹線で行こうとするのに近い。

目的地をどこに設定するかによって方法は異なるはずなんですが、「正解」は無いんだな、とコケそうになって初めて気付いた。

例えば、こんなこと。


・権限委譲と現場

企業が拡大してくるとマネジメントは現場から離れて権限委譲できるかが拡大の鍵とよく言われています。 一定の規模になっているのに経営者や役員が現場に近いところにいることはNGで、経営者は組織マネジメントを本業にするように、とよく書かれています。

これは変化がゆるやかなマーケットを前提として組まれたものではないかなと感じています。少なくとも私が知っている奇跡を見せてくれた人達はこれには当てはまらなかった。

例えばスマートフォン市場でかつグローバルで勝負しようと思うと、市場の速度があまりにも速すぎて3ヶ月間「現場」や「市場」からトップが目を離して、採用や組織マネジメントのほうに専念して、 久しぶりに戻ってきて見ると、もうまったく別の市場になっています。まるで浦島太郎です。

そのタイミングで違う方向に舵をきらないと死んでしまうんですが、自分の手で組織を大幅に分業体制にしてしまっているので、いざ舵を切ろうとしても組織がスピーディーな変化に耐えられなくなります。

この手の市場は世界中で色々なプレイヤーが出現し環境が週単位で変わります。意思決定をひとつ間違えるだけで取り返しのつかない損失が発生します。猛スピードで流れる濁流の中では意思決定と取捨選択の連続です。

意思決定をするトップが最も情報に敏感でありマーケットと現場の状況把握をできていないと、方向を定める人と、責任を取る人が別になり手と足がバラバラに動くような事態に陥りかねないです。 人間ならまず転びますし、企業はもちろん潰れます。

変化が激しすぎる市場で、かつ復数の国にまたがって事業を拡大させている企業のCEOは、プロダクトやマーケットに対する深い洞察を持っている人が多いような印象を受けます。 その時に「最適な」意識決定をするのが得意な人たちです。

彼らはメンバーが数百名規模で、ユーザ数千万人とかいてもかなりプロダクトの詳細まで突っ込むマイクロマネジメントをする人が多い、まあ嫌がられるでしょう。はた迷惑と思われる人も実際多い笑。ただそれでも企業は前には進みます。 反対に変化がゆるやかな市場では組織マネジメントに長けたCEOが多い印象を受ける。舵を真逆に切ることは少ないので管理能力が長けているほうがこの場合はおそらく最適なんだと思います。


・3年分の事業計画

組織が大きくなると事業計画・予算計画なるものが作られて組織はそれを中心に回るようにルールが統一されます。この事業計画なるものが非常に曲者で、新しい事業をやる時はまずこれ通りにいかない

事業計画は「市場がある」ことを前提に作られますが、ベンチャー企業が手がけるビジネスは「市場があるかどうか」を確かめるプロセス、もしくは「市場そのものを創る」プロセスなので事業計画の前提が崩れています。

目標を定めるのは問題ないですが、むしろこの時期は「成長のドライバー」がどこにあるのかを探すほうが100倍重要、これ以外は二の次だと思います。

一度ドライバーが見つかればそれを基に事業計画を作ったほうが精度の高いものが作れます。予算計画や事業計画に縛られて軌道修正ができなくなるほうがずっと恐怖です。 「3年分の損益計画を作るべきだ」というのは全事業において当てはまるわけではないと思います。速度の速すぎる市場では3年先の事業計画はコンパス程度の働きで、とてもカーナビやグーグル・マップにはなり得ない。


●「大きいこと・多いこと」は善か?

事業が軌道に乗ってくると色々なものを「増やす」作業が増えます。もちろん手が足りなくなるので、メンバーも増やす必要が出てきますし、売上もどんどん増えます。 顧客の要望も多様化してくるので機能もどんどん追加されます。当事者としては企業が拡大していく様を見れるので気分も良くなります。

ただ世界でスケールさせていきたい場合は、「大きいこと」と「多いこと」は必ずしも「善い」ことでは無いと今は思っています。

拡大すれば焦点が合わなくなりがちです。また前述のように組織化・効率化のプレッシャーはますます強くなり、スピーディーな意思決定はしにくくなってきます。 いつのまにかよくわからない企画や追加機能が走り出して、拡大のために人が必要だったのに、余剰人材に仕事を与えるために焦点の定まらない狂った企画や部署が膨張していく。

さらに海外の拠点が絡んで来るともっと厄介。すべてのメンバーとフェイストゥーフェイスで意思の疎通が完全にできない場合もあります。 十分に絞り込まれて針のように研ぎすまされた製品では無いと、メンバーも自社サービスの特徴を顧客に伝えることすらままならない。

総花的に様々な方面に機能を膨張して収集がつかなくなった後にいっきに無駄なものをそぎ落として救われた体験が何度もあります。 それから膨張の力学が働く中で、いかにシンプルかつコンパクトに製品も組織も維持できるかがひとつの価値判断基準になり、カルチャーっぽいものにもなりました。数字は大きくなってもいかに小さくできるか、小さくいられるかのほうがずっと難易度が高いと感じました。

数百名~数千名の大企業であればリスクなんて無いので、とりあえず全方位的にやればOKですが、小さな企業であればひとつのプロジェクトが転んだら壊滅的なダメージを負います(というか潰れる)。 何をやるかよりも、何をやらないかのほうがずっと大事だと今も常に意識しています。



●まったくゼロからのほうが飛躍する

「何言ってんだコイツは」と突っ込まれそうですが、これには確信があります。 カネ・ヒト・モノ・ノウハウ・ジカンのいずれも無い場合のほうが大きくブレイクスルーする可能性が高い、ずっとそう思ってきました。

もちろん全部あったほうが楽です。ただ既に手元に使えるリソースがあれば、それをどう有効活用しようかということに縛られます。現在の強みは将来に対する足かせにもなり得ます。

何も無いと新しいアイディアや他人が思いつかない方法を工夫してひねり出さなければなりません。(私はこれをウルトラCとよく呼びます笑)

スマホでブレイクしている企業はどちらかというと新規参入者でゼロから今のユーザや顧客が求めているものを素直に探ろうとした人たちが多いです。 反対にうまく行っていない人を見ていると、ガラケー時代の過去のノウハウや資産に縛られているような気がします。

私も広告業界の出身であれば今のようなリスクもスタイルも取りませんでした。 前職の人脈を活用して予算を回してもらえば、過剰なリスクを負わなくとも食ってはいけます(前職が無い私にはできない技ですね) 。何も無いから頭を捻ってアイディアを出します、誰も知らないからその目的に適任な人材をかき集めようと走り回ります。

新規参入者であれば業界の慣習なども無縁で、顧客やユーザに最適な価値を色眼鏡なしで眺めることができます。これは行き詰まった時に強力な力を発揮してくれる。



●どうしようもないときは「絞り込む」

サービスをリリースした当初はいいんですが、そのまますんなり軌道に乗ることは稀です。 だいたいはどうしようもない時期にさしかかります。顧客がいない、コネクションもない、営業も話を聞いてもらえない、ユーザはすぐに離脱してしまう、などなど。 事業は10発打つと9発は失敗します。逆に打率5割を超えるのは事業の天才か石橋を叩き過ぎるタイプかのどちらかだと思います。

どうしようもない時は毎度「絞り込む」マーケットを広すぎると自分たちの存在感も伝わりません。市場を絞り込んで活動領域をあえて狭める。 その領域では100戦して100勝するレベルまでサービスやノウハウを掘り下げます。

逆に言うとそれ以外の勝負は全部捨てます。不戦敗でOKです。

ある領域では世界一のレベルまで昇華できれば、その武器を突破口にして一歩前へすすむ事ができます。

活動領域を狭めてしまうと市場規模が小さくなってなってしまう不安にかられますが、ひとつの国で小さいと思われる市場も全世界を対象にするのであれば莫大な規模です。



●失敗を高速で「こなす」

新しいことをすると必ず否定的な意見をもらいます。「無理だ」「やめておいたほうが良い」と。これは脊髄反射的に必ず頂くリアクションで新しいことをするときは避けては通れません。 もちろん嘲笑もされますし、胡散臭い目で見つめられるのは日常茶飯事です(最近はややマシになりました笑)。

ただ動き続けていくと100人に1人ぐらいの割合で面白がってサポートしてくれる人もいます。アクションを止めるとこの100分の1人に会う確率はゼロになります。

だから初期はとにかく失敗を高速で「こなす」ことにしていました。

「成長のドライバー」は1発で運良く掘り当てるときもあれば、100発打っても一回も当たらない場合もあります。 企業が終了するときはこのドライバーが見つからず資金が尽きてしまう時か、メンバーの心が折れてしまう時です。 大量にトライアンドエラーを繰り返して、見つかるまでの時間をいかに短縮できるかが勝負の鍵です。

現在の事業の立ち上げ当初は3日に1回ぐらいのペースで戦略を変えていました。やってみてダメだったらすぐに別の方法を試す。軌道に乗るまでは朝令暮改も全然いいです。 気がついたらビジネス変わってたなんてこともアリです。プロダクトと市場は絞り込み、戦略と方法は膨大なトラインアンドエラーを回し続ける。



●現在いる地点はあえて意識しない

「今自分にできることをする」という考え方には否定的です。 「プログラミングが得意」「プレゼンテーションが得意」「英語が苦手」などなど。今自分ができることの中から最適な答えを探しまわっても、見つかるのは予測可能な「そこそこ」の未来です。 現時点での強みは先のステージに進めば強みでも何でもなくなることがよくあります。「強み」と「得意」に執着しすぎると動けなくなります。

まず前提を全部取っ払って頭の中を真っ白にして、「いつまでにどこに辿りつきたいか」を決めてからそれまでの道のりを探す。 損得のそろばんを叩いて計算するよりも、想像するのも恐れ多いぐらいの未来や腰が抜けるぐらいのアクションを選んだほうが、得るものが大きかった。

それらが実現可能な目標かどうかは自分が決めることであって、他人が決めることではありません。想像するのは自由です。



●ずっと続く「なぜアップルやグーグルのような企業が日本から出ないか?」論争

日本でIT業界でずっと議論されていることと言えばこれです。よく新聞や雑誌のコラムなどでも見かけます。最近は食傷気味な人も多いはず。1日1回はネットで話が上がります。

アメリカの自由な教育に起因するとか、エンジェル投資家が作り出すエコシステムが成り立っているからという話も有名です。 またシリコンバレーの気候が発明するには最適だという場合もあれば、世界中から優秀な技術者が集まるからとかという話もいろいろと。

ただこの現状が10年以上変わっていないことは確かな事実です。今も出ていません。私もこのテーマをずっと起業してから考えてきましたし、世界で勝負しようと決めた時からより意識して考えるようになりました。

アメリカと日本で人口の差はありますが、才能の優劣が存在するとは考えにくい。

自分が出した結論は「前例が無い」だけ。そのわずかな差だと思います。

前例が無いと人間は「奇跡」を信じることがなかなかできない。目の前で奇跡を何度も見せられるとそれは当たり前へと変わります。

海外で会った若手起業家がある有名なWEBサービスの創業者は大学のクラスメイトだったと話をしていました。 これが当たり前に存在する環境で生きてるんだろうな、話をしてて感じ取れました。

自分の周りの日常でそういう「奇跡」がごく普通に起こるようになれば、「次は俺の番だと」と感じるようになります。 何度も目撃していれば無理だとは誰も思わなくなります。その奇跡の可能性に賭けたいという人も出てくれば、それに乗りたいという優秀な人も集まります。 エコシステムは奇跡が現実のものとなりその無限ループが続いていった結果にすぎないはずです。

  • ①何らかの理由で先行事例が生まれ、
  • ②それが人間の意識に影響を与えて、
  • ③奇跡と思われていたことが現実に変わる。

あとは②と③の無限ループが強固な価値観を形成し現実が強まっていく方向に機能しつづける。 まず①の前例が重要で、それが途切れず連続していけば、どの国でも同じ事は起こると思ってます。

言語や文化圏の問題もあるので、北米の完パクリをしても、うまくいかないでしょう。 日本は日本なりに独自の成功事例と世界で勝つための独自のノウハウを蓄積して共有していく必要があります。



●規模を理由にしない

①の最初の一歩は誰がやるのか、これは会社が大きいか小さいか、はたまた個人か法人かも関係無いと思っています。 奇跡は他人の期待値をはるかに上回った時におこる現象の呼び名だからです。

何千人という社員を抱える数千億円の企業でも誰の価値にもならないことをして惰性で続いている場合もあれば、立ち上がったばかりでも真に価値のあることへコミットしている少数精鋭の企業や個人もいます。

むしろ小さいほうが最初の期待値が低いので、人の想像を超えやすいような気がします。最初の奇跡の前例には誰でもなり得ます。私自身もそのきっかけを作りたいと思ってずっとやってきた。

人間はどこに向かっていくかその方向性が見えなくなった時に、無意味な足の引っ張り合いや、派閥争いのようなものがおきます。 少し前はあんなに先進的だと思っていた企業が、社内政治や派閥で腐ってしまうのも、企業全体がどこへ向かっていいかわからなくなった時です。 それは日本という「国」全体でも同じだと思います。

これからグローバル化の影響を受けやすい市場から淘汰が始まっていく事が予想されます。 スマートフォン端末においても多くの企業が参入した中で、ふたをあけてみればアップルとサムスンのたった2社しか利益を出せませんでした。 今日はシャープが競合であるはずのサムスンから出資を取り付けていました。グローバル化は勝者総取り(winner takes all)の時代とも言えます。

単純労働はよりコストの安いほうに移行するのは必然で、国内も給与水準が安くて優秀な人材を海外から採用するトレンドがさらに強まれば、「誰でもできることをやる人」の居場所はどんどん消えていきます。

今の日本はお世辞にも政治が機能しているとは言えない状態です。彼らに現在の閉塞感を吹き飛ばすリーダーシップがあるとは私には到底思えません。 民間で過去のしがらみが無い新興企業がこのはじめの一歩が出せないのであれば、リスクを取って先行事例になれる人達はもうこの国にいないことになります。

ピボット後のこの2年間のプロセスで学んだことが、これから勝負する人たちに共通され、そこからさらに成功事例が生まれる。 またそのノウハウ共有されてそれがずーっと続いていく。非連続とされていた事象が連続して起これば普通のことです。最初はものすごい小さなきっかけも流れを止めなければ大きな潮流となり得えます。

これからも安全圏内からもっともらしい解説をしてくれる「評論家」ではなく、リスクだらけの危険地域の最前線から実況中継する「プレイヤー」であり続けたいと個人的には思っています。

間接的にしろ直接的にしろ、これまでもそういう人達に重要なヒントをもらって今のフェーズまでなんとか来ています(毎度ご迷惑をかけまくってますが)。 それを自分のターンになってちょろちょろと小銭を稼ぎ一時的な優位を守るために口を閉ざすという選択はできそうにありません。

死ぬ瞬間、今日家に帰って寝てもう永遠に起きることが「ない」としたら自分は何を感じるだろう、と考えることがよくあります。その時に100兆円の資産を持つ世界一の富豪だったとしてもそのことに満足することはまず無い。そんなことよりもどうしようもない現実を「しかたない」という言葉で片付けて、見て見ぬふりをして何もしなかったことを間違いなく後悔すると自分は思います。「おかしいものを「おかしい」と言えない、行動もしなくなったら人も会社も国も終わりです。それは生きながら死んでるのと同じことだと思います。

人生で直接合って話せる人の数には限りがあるので、これから一歩踏み出したいと思ってる人、もうどうしたらいいか分からないと思っている人のために文章にして残しておきます。 私もずっとそうでした。今は本当に少しずつですが理解できるようになってきました。

未来はどうなるかはわかりませんが、もうひとつ先のステージまでたどりつけるかどうか、これから行って試してきます。


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