今の官邸に求められる「ソーシャル」なリーダーシップのかたち
ソーシャルビジネス。この言葉がいろいろなところで踊っていますが、その本質は、コミュニケーションにあると思っています。
人と人が、これまでと違うかたちで、違う角度で、違う深さでつながっていく。そこにいろいろな可能性がある。それが「ソーシャル」というキーワードがもつ本質です。
このコミュニケーションの変化は、社会に対する大きなインパクトを持っています。そのひとつが、中東のジャスミン革命でした。
それまで草の根の運動が続いていたとはいえ、それが爆発的なうねりとなって展開した裏には、Facebookをはじめとするソーシャルネットワークの普及がありました。
人と人との新しいつながりが、社会の姿すら変えてしまうのです。
会社組織の変化もその例外ではありません。情報の伝達を効率化する、という理由で、今の会社の多くはヒエラルキー型の組織構造を取っています。社長がひとりひとりに説明するのは、もちろん効率が悪い。だから部長から課長、課長から係長、係長からヒラ社員へと、段階的に情報が伝えられていく。
これまでのコミュニケーションの方法からいえば、ごく当然の判断でした。
しかし、ITの進歩により大きく変わってくるとどうなるか。社長が社員一人ひとりと「つながる」ことさえできるようになるのです。
もちろん、だからといって社長がひとりひとりの対話をしていたら、社長の時間がいくらあっても足りません。実際には、まだ中間管理職は必要です。しかしその中間管理職の層の多くは、不要になってくるでしょう。
そして、その結果を先に言うならば、より実効性の高い「権限委譲」が可能になる、ということになります。
ヒエラルキー組織の場合、現場が何をやっているかが上層部に見えないため、現場に対して権限を与えることを、ついためらいがちになります。近年のコンプライアンスに対する強い要求が、それに拍車をかけています。何をやるにしても、現場は管理職の許可をもらわないといけない。稟議書は増え、組織はいよいよ非効率的になっていきます。
そこにソーシャルコミュニケーションが入ってきたらどうなるか。末端での動きが、社長からでもはっきりと見えるようになるのです。見ようと思えば、誰と誰がどんな会話を交わしているのか、スレッドを眺めれば手に取るように分かります。
そして、現場がクリアに見えてくると同時に、今度は会社全体の姿を、現場へとフィードバックしていくことになります。会社の業績が上がった、チーム連携ができ他の部署の人たちが喜んだ、経営陣も自分たちの活躍を見ていてくれている。そうした双方向のコミュニケーションが生まれるのが、今の「ソーシャル」のかたちなのです。
現場は自由に動くことができ、経営陣も安心して現場を任せられる。これが、ソーシャルコミュニケーションによって実現するのです。
ここでこのエントリーのタイトルに戻ります。今の官邸に、どんなリーダーシップが求められるのか。こうしたソーシャルの観点から見て、どんな課題があるのだろうか。今まさに現場にいる被災者の方々の気持ちをくんでいるだろうか。官邸は現場へ、情報を公開しているだろうか。残念ながら、そう言えない状況があります。
つまり、官邸と現場がつながっていない。
そして、つながりのないところで行われるリーダーシップは、残念ながら「一方的」なものにならざるを得ない。
そうした悲劇が、今の日本の政治の状況なのではないかと思います。
この連載では、こうしたソーシャル時代の新しい組織のかたち、リーダーシップの方法についても考えていきたいと思っています。
→小山龍介がキュレーターをつとめる「ソーシャルビジネスの歩き方」もぜひご覧ください。