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夏目房之介の「で?」

『寝ずの番』

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マキノ雅彦(津川雅彦)初監督作品『寝ずの番』(中島らも原作)
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いやぁ、面白い! 笑ったし泣いたし、よくできてます。昔の邦画の名作を観るような気持ちになる。限られた設定で芸達者を集め、まことに楽しい。性的な遊びの部分がいかにも旧世代的ではあるが、初監督作品にしてほとんど完璧といってもいい娯楽作だと思ったな。
死んだ師匠を弟子や息子がかついで、故人の得意だった『らくだ』の「死人のかんかんのう」を躍らせる場面は秀逸で、僕は何となく『幕末太陽伝』を思い出したなぁ。

中井貴一、富司純子、木村佳代、それぞれにうまいし、いいんだけど、何といっても驚いたのは笹野高史。よく見る役者さんながら、こんなにうまい人だとは認識してなかった。凄い! 落語もうまいんだ、また。
さらに長門裕之の瀕死の師匠及び死体の演技が抜群。映画史に残るんじゃないかてぇくらいのデキ。この人の落語もうまかったなぁ。たいしたもんだ。
ついでに、出演者が座談会やりながら映画を観るおまけも、なかなか楽しい。そこまで観させるほど面白かったってことですね。その中に、映画の中でヘタだといわれている師匠の息子役の一徳の落語が聞いてみたかったという話が出てくるが、ほんとにそういう気持ちになる映画です。

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