富士通トップフォーラムin福岡
8月22日、ホテルニューオータニ博多で富士通のフォーラムがあり、3時過ぎから特別講演なるものをやります。でも、これ一般公開じゃないかも。どうなんだろ? 一応、告知だけしときます。以下、先行案内より↓
先行案内より
今回は、文豪夏目漱石の孫であり、サラリーマン向け週刊誌等にマンガ・コラムニストとしてご活躍中の夏目房之介氏をお迎えし、「文化輸出産業の世界戦略は今」と題しお話しいただきます。
今や世界に誇れる“日本の文化輸出産業”のマンガ・アニメ業界。グローバルにビジネス戦略の視点で捉え直すほか、少年雑誌黄金時代を築いた「巨人の星」をはじめ、戦前のマンガや手塚治虫などから“強さとは”を読み解く文化論について、懐かしき少年時代を彷彿させながら熱く語っていただきます。
富士通株式会社九州営業本部長
2007年8月22日(水)14:00~18:00
ホテルニューオータニ博多4F「飛翔の間」
〒810-0004福岡市中央区渡辺通1-1-2
Tel(092)714-1111 Fax(092)715-5658
トップフォーラム事務局 TEL:092-411-6554 FAX:092-411-6433(富士通株式会社九州営業本部)
14:00~14:10開講ご挨拶
14:10~14:50基調講演富士通株式会社代表取締役副社長間塚道義
15:10~16:50特別講演「文化輸出産業の世界戦略は今~マンガの深読み、大人読み~」マンガ・コラムニスト/京都花園大学客員教授夏目房之介氏
17:00~18:00 懇親会
追記
レジュメです。
2007年8月22日 富士通トップフォーラムin福岡 特別講演
「文化輸出産業の世界戦略は今~マンガの深読み、大人読み~」
夏目房之介
1) マンガ世界化現象の現在
TV「世界バリバリバリュー」8月8日放映(毎日放送)「漫画家スペシャルパート2」 赤松健(『ラブひな』『魔法先生ネギま!』計2千万部、印税8億)
「版権収入の3割が海外から」発言
90年代末(『ポケモン』ブーム以前)には、まだ出版社海外版権部は赤字
作家の印税収入も「小遣いにもならない程度」といわれた
→90年代後半期からのドイツでのマンガ出版ブーム、今世紀に入ってからの米国での市場拡大で為替レート的にも旨みのある先進欧米地域市場が拡大
創出版「創(つくる)」07年5月号 特集「マンガはどこへ行く」(毎年特集号を組む) 久保隆志「安定期を迎えたマンガの海外進出、次の一手は?」より
講談社国際ライツ管理部長「米仏好調で全体の版権収入は前年比で10%ほど伸び」「TOKYOPOP,DarkHorseなど(からの出版)を含め、伸び率、金額共に、現在アメリカがダントツの主要市場になっています」64~65p
小学館系米現地法人 VIZ Media(集英社、小学館、小学館プロダクション合弁) 「SHONEN JUNP」(02年創刊)35万部 実売22万
「SHOJO BEAT」(05年)10万部 苦戦
マンガと雑誌文化の東アジアと欧米の差異 図1 前掲誌66~67p
「現在刊行中の主な海外提携・契約誌」 圧倒的に東アジア諸地域
欧米には日本型の雑誌(週刊誌)→新書単行本サイクルの伝統はない
参考 VIZ創設者の自伝的エッセイ 堀淵清治『萌えるアメリカ 米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか』日経BP 06年
米出版流通の複雑さと、日本マンガによる変化 「グラフィック・ノベル」としての一般書店への進出
結論部分
小学館マルチメディア局ライツセンタープロデューサー
「総括的に言えば飽和状態で、新作は恒常的に出ていくけれど、例えばドイツが参入した時にドッと拡大したような劇的な変化は望めない」前掲誌 71p
2) マンガ世界化現象の「読み方」
A)アニメ進出との相関関係
80年代の欧州、東アジアでのTV多チャンネル化(衛星、ケーブル化)
→ソフト不足→当時二束三文だった日本アニメの流出→子どもたちへ浸透
→10年後、十代中心にマンガへのニーズが顕在化
B)欧州、東アジアの歴史的背景の違い
● 東アジアでは海賊版と日本マンガの影響による現地マンガの歴史などの背景があり、欧州でも仏などにはBDという独自のコミック市場があった
これらとの関係の中で、東アジアでは90年代に入り正規契約時代に(アジア経済の離陸=経済成長による社会的中間層の勃興も背景に)
● 欧州では、仏のBDとの摩擦、バッシングの時期をへて、次第に受容期、協力期に入り、今年水木しげるがアングレーム国際BD祭で大賞を獲得
独では、それまでマンガといえばミッキー程度のマンガ文化後進国だったが、出版不況の中で日本マンガ(『ドラゴンボール』など)だけが売れ、一気に加速
● 東アジアでのマンガ・アニメブームは、肌の色や基層文化を同じくする地域だけに実写TVドラマやポップミュージック、アイドルなどTVを介したほかの多くの日本大衆文化の浸透(「かわいい」文化の浸透速度の速さ)の文脈の中で理解すべき
C)マス・セールスとマニア市場の両極化
『ポケモン』『ドラゴンボール』『セ-ラームーン』など、地域にもよるが大きな市場を獲得している少品種多売作品と、「一人で何点でも買う」おたく消費層の好む多品種少売作品に極端に分離していると考えられる(逆にいえば、飽和状態=安定供給の中で、この両者をいかに線で結び、面にしてゆくかが課題
『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』は東アジアで圧倒的だが
D)マンガ・アニメのもつメディア特性
●十代に向けたメディア
世界的にみてコミック(スヌーピーなど、カートゥーンはとりあえず別)、アニメは「小さな子どものもの」と思われているが(じっさいは、アメコミ、BDでも消費者の年齢は高い 参考 小田切博『戦争はいかに「マンガ」を変えるか アメリカンコミックスの変貌』NTT出版 07年)、日本のマンガ、アニメの受容は十代の思春期層に上昇している
●女性向けのメディア
同様に、世界的に男性中心主義的なメディアがふつうだが、日本のそれは「少女マンガ」「女性マンガ」という「女性が女性に向けて描く」メディアをもつ
E)世界市場を獲得できるか?
米国の世界市場を基準に考えるならば、ハリウッドに対抗しうる商業的性格をもつことを意味するが、それははたして「日本のマンガ、アニメ」としての「らしさ」を維持してできるのか? (ハリウッドの背景には第一次大戦後、欧州疲弊を背景にした映画世界配給権獲得があった)
ディズニーの「世界」性獲得と日本アニメ、マンガの特性の違い
現状、あくまで米的な「世界」性へのカウンターとして機能しているのでは?
3)マンガの世界化とは何か?
むしろ、ポップミュージックの「世界」化を基準に考えるべきでは?
米国のブルーズ、ジャズ、ロック(黒人→白人中間層)エルヴィス
→英・ビートルズ→世界中でのマス・セールス→マニア層とローカライズ
→世界各地でのポップミュージックの展開
図版資料
図2 TOKYOPOP社刊 ゲームのコミカライズ 『Kingdom Hearts』2 06年 Shiro Amano ディズニーと日本マンガ、キャラの混在
図3 MARVEL『SPIDER-MAN MARY JANE』1 Takeshi Miyazawa
日本マンガ・スタイルによるスパイダーマンの恋人のエピソード
図4~5 米コミックのカタログに載る日本マンガ・スタイルの作品群
PREVIEWS 2007 MAR
図6 日本マンガの影響を受けたタイのニューウェーブ・マンガ 新中間層に支持される青春物 『Si-Gum』B.Boyd Characters
図7 仏作家フレデリック・ボアレの提唱する「ヌーベル・マンガ」とBD作家を来日させて描かせた作品群 6各国同時発売の日仏作家競作アンソロジー
『JAPON』飛鳥新社 06年
参考資料
夏目房之介『マンガ 世界 戦略 カモネギ化するかマンガ産業』小学館 01年
草薙聡志『アメリカで日本のアニメは。どう見られてきたか?』徳間書店 03年
関口シュン・秋田孝宏編著『アジアMANGAサミット』子どもの未来社 05年