「謎の名刺交換」から得られる示唆とは?
先日の加藤和幸さんのブログで幕張メッセにおけるとある張り紙の話がでていました。私もこれについて完全にまとめきれていませんが、ちょっと書いておきたいと思います。
見込み客リスト作成手法としては限りなく禁じ手〜結果として誰も幸せになれない手法
「新人研修」と銘打って名刺交換を行い、見込み客のリスト作成をする、という行為は幕張メッセだけでなく、以前からイベント会場はもちろん、都内至るところに出没しており、私の場合は「大門駅」で遭遇したことがあります。もう2年位前だと思いますが、私はそのような手があるとも知らず、名刺を渡しそうになったことがあります。渡すとやはり不動産投資の勧誘電話が殺到するようです。
私の場合は別に名刺を渡さなくても、なぜか不動産投資がらみの勧誘電話はしょっちゅうかかってきており、CRMコンサルタントからみると、このような前近代的な手法には全く感心しません。お互い人間ですから、勧誘をする方も神経をすり減らしてアンハッピーになるだけであり、このようなアプローチをとる会社は総じて退職率が高止まりとなって、継続的な成長を阻害することに繋がりやすいです。こちらはボディーブローのようにじっくり効いてきます。
調べてみると意外な会社〜ビジネスにおける「成功」の価値とは一体何か
「新人研修」と銘打って名刺交換をする会社はどのような会社なのでしょうか。この手をとっている会社は一体いくつあるのかよくわかりませんが、私が遭遇したその会社を調べると、とても愕然としました。どういうことかといえば、「成功企業」としてあちこちで評価されていたからです。その会社の社長も成功者として本を出して起業を目指す若者の目標となっていたり、経済産業省が支援するとあるプロジェクトでも取り上げられていたりと、ビジネスの世界での評価と実態がこんなにも違うものかと本当にショックを受けました。こうなると俗にいわれるベンチャーの成功企業にはやはり何かあるのではないか、と勘ぐってしまうところです。
あまり書きすぎると特定できてしまうのでここまでとしますが、投資用マンションの質的向上という会社のビジョンは結構共感できるものであるにもかかわらず、それが現実のアクションに落ちたときのギャップがあまりにも激しすぎるのです。これはまだ若いメンバーで構成され、イケイケドンドンできた会社故のことなのかもしれません。しかし、このような手法を積み重ねてきた結果としての「成功」には一体どのような価値があるのでしょうか?
真の「成功企業」とは?〜中小企業白書で考える
記憶も新しいと思いますが、あれだけベンチャー企業の成功例として一時期もてはやされたライブドアがホリエモン事件で一瞬で吹き飛んだのは、もちろん法的に罪を犯しているのもそうですが、世間が残酷にも「退場」を突きつけたからです。私が知らないだけかもしれませんが、「この会社を保護してほしい」という声は損失を恐れる株主以外からは聞くことはあまりありませんでした。どんなに熱い夢を持っていても、どんなに良いサービスを持っていたとしても、そして如何に業績が良かったとしてもある一線を超えるとこのような結果が待っています。
上記は極端な例ですが、真の成功とは一体何でしょうか。「東証一部上場」、「市場シェアNo.1」など人によって評価はまちまちだと思います。その中でも、多くの企業は最初は「中小企業」からスタートするから考えると、社会的観点ないし政治的な観点からは中小企業白書(厳密にいえば中小企業基本法)がそのヒントになるかもしれません。
中小企業基本法では中小企業の役割を
1. 新たな産業の創出
2. 就業の機会の増大
3. 市場における競争を促進
4. 地域経済の活性化
としています。これを期待しているから「守ってあげよう、支援してあげよう」となるのであり、むやみやたらと保護することを狙いとしているわけではありません。
話をもとに戻すと、苦労して稼いだ資金を投資する側からみれば、不動産投資会社に求めるのは信用が第一であり、その会社が如何に永続していけるのか、ということです。これに加えて、その会社の「社会的な価値’」が自分の投資判断を正当化する基準となり、更に企業の行動規範はその価値を裏付けできるものであってほしい、という願いがあります。これは不動産に限らず、株式投資においても同じことが言えると思います。こうなると「名刺交換」のようなアプローチはあまり得策ではない、ということがおのずと見えてきます。
今の日本人は経済状況の影響もありますが、支出に関してはとてもシビアな判断をしています。特に高額な商材においては熟慮に熟慮を重ねて「自分を正当化できない」意思決定はまずしないはずです。上記のような会社の方々には、このような購買行動をしっかりとらえて、より大人のマーケティング/セールスのオペレーションをしていただきたいところです。それが将来において真の成功を遂げるための鍵だと思います。