「『価値で勝負しよう』というのはよくわかる。しかし業界全体で低価格競争の中、我々もとても苦労しているのだが、どうしようもない」→それは価格競争のリバウンド現象です
講演でお話しすると、よくこのように言われます。
「『価値で勝負しよう』というのはよくわかる。しかし業界全体で低価格競争の中、我々もとても苦労しているのだが、どうしようもない」
ご苦労、お察しします。そういう業界、私たちもすぐにいくつか思いつくのではないでしょうか?
お互いに価格競争を仕掛けている。
→値段を下げてお客さんが来るようになり、一時的に売上は上がる。
→しかし次第に客足が元に戻り、売上はさらに減る。
→価格を上げようものならば、さらに客足は遠のく。
→これを繰り返すことで、業界全体の市場が縮小してしまう。
しかし「何か新しいことにチャレンジされていますか?」と聞いても、従来の方法を苦労して繰り返し踏襲していることもまた、多いのです。
価格競争に陥って市場規模が縮小している状況は、ダイエットのリバウンド現象と同じ原理なのではないでしょうか?
食事を減らすことで、一時的に体重は減る。
→しかし筋肉も減るので、エネルギー消費量も減る。
→食事量を戻すと、エネルギー消費量が減っているので、前よりも体重が増え、体脂肪率も上がる。
→そこで再び食事を減らすと、さらに筋肉が減る。食事を戻すとさらに体重が増え、体脂肪率も上がる。
食事量を減らす = 価格を下げる
体重減少 = 売上増
体重増加 = 売上減
筋肉量 = 企業の体力あるいは高付加価値
と考えると、同じことですね。
いわば「価格競争のリバウンド現象」と名付けてもいいかもしれません。
リバウンドから抜け出すヒントは、筋肉量を増やすこと。つまり運動をしてエネルギー消費量を増やすことで、リバウンドの悪循環から抜け出すことができます。
体重が増えている状況での運動はかなり辛いものですが、こうしないと悪循環から抜け出せないのですよね。
企業でも同じではないでしょうか?
価格競争の悪循環から抜け出すヒントは、価値勝負へのシフト。
しかしいきなり100円で売っていたモノを1000円で売っても、お客様は見向きもしません。怒るのはいい方で、無視されます。
一方で、何もしなければジリ貧が続き、最後に待っているのは破綻です。
まずはとにかく何かを始めてみる。考えるだけでなく、実行する。
リバウンドから抜け出すのが辛いのと同様、大変かもしれません。
しかし悪循環から抜け出すためには、必要なことです。
iPODで絶好調だったAppleは、2007年にiPhoneを発表しました。
ジョブスの初代iPhone発表デモは完璧で、大成功。これが現在のAppleの成功に繋がっています。
しかし最初のiPhoneは非常に不安定でまともに動かず、プレゼンのリハーサルは失敗続き。トラブルの度に、ジョブスは担当者に「お前はクビだ」とどなったそうです。
その時の様子が、記事になっています。
「Appleの元エンジニア、綱渡りだった初代iPhoneデビューを語る」
iPODで成功しても、いずれ価格競争に陥る可能性もありました。そこでAppleは、あえてiPhoneという新しいチャレンジを行ったのですね。
「苦労しているけど、どうしようもない」とぼやいていても、実は、実際にやっていることは従来と同じ、ということが多いのではないでしょうか?
自分では「苦労」と思っていることが、実は「苦労」ではなく、「惰性」に陥っているのかもしれません。
世の中は急激に変わっているので、従来と同じ方法は通用しないことも多いのです。
順調な中でもiPhoneに挑戦したAppleのように、新たなチャレンジで自ら成長し続けることが大切なのではないか、と思います。