映画「愛と青春の旅立ち」は、日本語タイトルの視点で観るのと、英語の原題の視点で観るのとでは、印象が全く違うという話
この映画、私が大学生だった1982年に封切りされ、とても流行りました。
ジョー・コッカーとジェニファー・ウォーンズが歌った主題歌は、私の年代では友人の結婚式でよくかかりました。(今はどうなのでしょう?)
「愛と青春の旅立ち」というタイトルは、退廃的な生活から一念発起して、海軍士官養成学校に入り、恋人とも出会い、様々な試練や挫折を経て、成長し、最後はハッピーエンド、という映画の内容を、うまく表現しています。
一方で、英語の原題は"An Officer and a Gentleman."
日本語に直訳すると、「ある士官と、ある紳士」
とっても地味なタイトル...と言っては失礼でしょうか?
しかしこの原題は、ある意味でこの映画の本質を描いています。
主人公のザック(=リチャード・ギア)は、海兵隊軍曹の鬼教官フォーリーから徹底的にしごかれます。
今の日本だったら、明らかなイジメで新聞記事になりそうなこともされますし、ザックの友人が挫折して自殺してしまう場面もあります。
この海軍士官養成学校の飛行士課程は13週間続き、これに耐え抜き、試験を通過した者は、少尉に任官されます。
この映画の有名なラストシーンは、卒業式が終わって、主人公がそれまで距離を置いていた恋人に再会し、抱き上げるシーンです。
しかし私が好きなのは、その前の卒業式のシーンです。
それまでさんざん士官候補生をしごいた元鬼軍曹フォーリーにとって、卒業式で少尉に任官した彼らは、その瞬間から上官になります。
卒業式が終わり、フォーリーは、かつてしごいた元士官候補生(=現在は少尉)1人1人に最敬礼します。
そのフォーリーに対して、ザックは「君のことは忘れない」と言います。
そして、ザックが13週間過した海軍士官養成学校を後にする時、新たな入学して集まった士官候補生に対して、フォーリーは13週間前にザック達に行ったのと同じ罵倒を繰り返しています。
自分の任務に対してあくまで忠実なフォーリーの姿を描いたこの場面が、なぜかこの映画の中で、私の心の中に一番大きな印象を残しています。
このように考えると、この映画の原題"An Officer and a Gentleman."は、とても素晴らしいタイトルだと思います。
この映画を観た頃はザックと同じ年代でしたが、気がつくと、私もフォーリーと同じ年代になりました。
組織の中で、自分に求められる役割も、変わってきているのでしょうね。