『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまで(12):仮説検証の実践 (09年6月)
『朝のカフェで鍛える 実戦的マーケティング力』が生まれるまでの経緯を連載でご紹介しています。連載バックナンバーは、こちら。
6月上旬に、本書のドラフトを一通り書き終えました。
本書の5章では、仮説検証の重要性を述べています。
思い込みを検証せずに進めるプロジェクトは、たいてい失敗します。当初の仮説が正しいのか、適宜チェックポイントを設けて検証することが必要です。
本書でも、仮説検証を行って、当初の狙いが正しく実現できているのかを検証し、品質の向上を図ることにしました。
ポイントは、「ターゲットとする読者にとって価値がある内容になっているのかどうか?」という点に尽きます。
そこで、原稿が出来上がった時点で、多くの方々に原稿を読んでいただき、コメントをいただきました。
知合いのマーケティングマネージャーが中心でしたが、知合いの経営者、エンジニア、マネージメント層からもご意見をいただきました。
当初予想していたよりも、多くの肯定的なご意見を頂きました。
- 「こんな本、今まで見たことがない。マーケティング解説としてとっても分りやすい」
- 「普通に面白い」(注:若者言葉です)
- 「長年経営をやっていて、経験知となって頭のどこかに入っていることが、整理されて書かれている。何度も読み直したい」
- 「若手社員に読ませたい。対象は30代以降では?」
- 「このような法人向け・パートナー戦略に焦点を当てたマーケティングの本がなかった。需要はかなりあるのではないか?パートナーの若手マーケティング担当者に勧めたい」
- 「3時間で読了でき、かつ、基礎的なマーケティング理論が非常に多くカバーされている。後で気になる部分も解説でじっくり読み返すことが出来る」
一方で、課題点の指摘も多く頂きました。
いただいたコメントは全てExcelにまとめて、指摘された課題点毎に分類し、それぞれの課題に対する対応策を明記しました。
ただし、各課題に対して全て対応していてはと、まさに本書の第5章で主人公が直面した「対症療法」になってしまいます。
そこで、あくまで当初の仮説に対して検証していくというスタイルを保持しながら、課題に対する対応を考えていきました。
代表的な課題点と対策は下記のようなものでした。
- 主人公の設定。当初の設定は若すぎて、与えられている権限から考えると違和感があるので、30代前半に再設定。
- 分りにくい部分があったので、大幅に簡略化して分かりやすい記述に修正、図も多用
- イラストや編集に関するアイディア
- 不自然な状況設定に関するコメント
プロモーションに関しても、参考になるご意見を多数頂き、本書のマーケティングで活用していきました。
また、主人公が女性であることもあり、半数は女性からの意見をいただきました。
男性である私が女性の行動を描くので、笑い話のようなことが色々とありました。
例えば、「久美は自分のカバンを掴んで走っていった」という文章。
会社に持っていくのは当然カバン、と思っていたのですが、多くの方々から
「『カバン』じゃなくって、普通、『バッグ』でしょ」
との鋭いご指摘をいただきました。
他にも、不自然な女性言葉や行動を修正しました。
このように、多くの方々にチェックいただいて、かなり品質が向上しました。
しかし、ただ単に意見をいただいて反映するだけでは、品質向上に繋がらなかったのではないでしょうか?
当初から仮説を立てて、その仮説が正しかったかを検証する、という立場を崩さずに検証していったからこそ、この仮説検証プロセスがうまく回ったのではないかと思います。