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プログラミングでメシが食えるか!?

製品開発販売の本当の楽しさとは?

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何度か同じようなことを書いている気がしますが、私が自分で製品開発販売をしていて一番難しいと感じるのは、「売ること」です。「作ること」ではありません。プログラマー社長として、自らプログラミングもしていて、自分でもどちらかといえば技術者だと思っていますが、それでも「売る方が難しい」と思っています。

「作ること」にも、「原理的に作れない」「作り方がわからない」「作るのが大変」という感じに「壁」はもちろんあります。ソフトウェア開発であれば、「アルゴリズム能力」「プログラミング能力」「実現力」「根性」「ひらめき」など、さまざまな能力が必要であり、個人差も非常に大きくあります。「作ること」も決して簡単ではありませんし、簡単なら誰もが同じようなものを作れますから、そもそも差別化ができません。

一方、「売ること」には、「人間関係」が複雑に絡んできます。もちろん、売ること自体にも様々な「テクニック」がありますが、そのテクニック自体も人間関係と絡んだ内容が多いものです。「売ること」が難しいのは、「こちら側でコントロールできない要素が多いこと」だと私は考えています。「作ること」は自分で何とかすれば、ほとんどの壁を乗り越えられるのですが、「売ること」は相手の存在が難しいのです。「相手」というのは、「買い手」だけではありません。「代理店」「販売店」というような、仲介する立場の人・会社もありますし、他の製品との組み合わせで使われることもあります。

基本的に「買い手」も「仲介者」も、「製品の魅力」が高いほど近づいてきてくれますが、「良いものを作れば売れるというものではない」と良くいわれます。商売が成り立つためには「売り手も買い手も、関係者全体がメリットがあること」なのだと私は考えています。良いものを作っても知ってもらえなければ売れません。知ってもらうためには、売り手のがんばりだけでは難しいことも多く、仲介者の存在が大切なことも多いものです。それらの関係者全体が満足できるような製品でないと、なかなか上手く世の中に広がらないのです。

関係者の満足には、「製品そのもの」「価格」「利益」などの、さまざまな要素が関係します。「ものが良ければOK」というだけではないのです。さらに、それらの間に「人」が存在しますから、「人間関係」が良好でないと物事が上手く進まないことも多いものです。

新しく立ち上げた事業では、新しい製品はなかなか売れません。「実績」がないからです。実績を作るためには売れて使われることが必要なのですが、実績がない状態だと売るのが難しいのです。実績を作るためには、コネを使ってなんとか使ってみてもらったりするしかないのですが、「コネ」というのは結局「製品自体の実績」ではなく、過去の取引の信頼関係の「実績」ですので、やはり「実績」が必要なのです。実績がある会社を介してお願いしないと上手くいきません。

このあたりを勘違いしてしまうと、「良いものを作って、自分たちが頑張れば、どんどん売れるようになる」と思って始めてみたものの、「売れないし、使われないから製品も育たない」という状態に陥り、結局何も成果は得られず、「製品開発販売は難しい」という経験だけ刻み込まれた、ということになることが多いのかもしれません。その点、下請け仕事は言われたことをやっていれば確実にお金が入ります。

「それでもなぜ製品開発販売をやるのか?」というところなのですが、短絡的には「人が動いた分以上の儲けを生み出す可能性がある」ということかもしれません。個人的には「自分が生み出した製品を表舞台に出したい」ということもあります。でも、もっと根本的なところで「社内外の仲間達と成功を分かち合いたい」という気持ちなのかな、と思っています。製品を世に出すためには、上に書いたように一人でできるケースは少なく、多くの関係者との強力によって進みます。新しいことを始めるとさまざまな抵抗にぶち当たります。苦楽を共にした仲間との関係は得がたいものですし、その仲間とさまざまな意味での「成功」を分かち合いたいという気持ちが根底にある気がします。なので、「苦しくても歯を食いしばれる」のだと思うのです。一人でやっていたらとっとと逃げてしまう状況でも、仲間がいると思うと頑張らねばならない気持ちになれるのです。それが「一人ではできないことでも実現できてしまう力」なのでしょう。なので「製品開発販売」が楽しいのです。

今も私が直接関与しているいくつかの製品を、国内外のいろいろな方面に展開しようと、私自身が必死に頑張っていますが、同じように仲間達も必死に頑張っています。それぞれが助け合っているように見えて、実はお互いが「自分の満足ために」頑張っているのです。すでに痛い目にもたくさん合ってきましたし、これから先の難関もたっぷり見えているのですが、こんな状況こそ「製品開発販売の魅力」だと思います。難しいから楽しいのです。作ることがだけが楽しいわけではなく、むしろ、「作ったものをどう世に出していくか」という方が楽しいかもしれませんし、「世に出すことによって製品がさらに育つこと」も実に楽しいものなのです。

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