新しい時代の勤勉さ(前編)生成AI以降の勤勉・時間から資産へ
マックス・ウェーバーは、勤勉を是とする倫理が西欧資本主義の原動力になったと説きました。勤勉であることは、いまも美徳です。ただし、何をもって勤勉とするかの指標は、この数年で二度、書き換えられました。一度目はコロナ禍、二度目は生成AIの登場です。
コロナ前──時間が指標だった
コロナ前の私たちは、同じ時刻の満員電車で通勤し、オフィスに集まり、会議を重ね、遅くまで残業していました。「24時間、戦えますか」が流行語になった1988年から30年余り、勤勉の指標は一貫して「時間」でした。
それは「モノが主役」の時代の合理です。標準品を効率よく作り、広く売りさばくには、労働力こそが最大の経営資源であり、その規模と稼働を維持することが経営の仕事でした。だから従業員は時間を管理され、長く働くことが評価されました。年功序列も、始業と終業の管理も、同じ思想の上に立っています。
コロナ以降──場所と時間の前提が崩れた
コロナ禍は、この前提を強引に剥がしました。出社しなければ仕事はできない、対面でなければ商談は進まない。そんな常識が思いこみに過ぎなかったことを、多くの人が身をもって知りました。
同時に、勤勉の指標は「時間」から「成果」へ移らざるを得なくなりました。目の前にいない部下の勤勉さを、時間で測ることはできないからです。それでも社員のPCに監視ソフトを入れ、始業と終業のメールを義務づけた会社は、指標を変えることを拒んだ会社です。そこには「放っておけばさぼる従業員」と「給料分だけ働く社員」という前時代的な暗黙の了解が温存されています。そのような会社に、優秀な人材は残りません。
新しい勤勉──個人的資産と社会的資産
では、時間に代わる勤勉の指標とは何でしょうか。それは「個人的資産」と「社会的資産」を積み上げることだと、私は考えてきました。
個人的資産とは、労働市場で高く評価される知識やスキルです。技術の常識を理解している、業務を整理できる、アーキテクチャーを設計できる、コードが書ける、英語が読める。これらは時間をかけて身につけるものであり、身につけた者と身につけていない者の差は、そのまま市場価値の差でした。
社会的資産とは、人脈のことです。ただし、多くの人を知ることではありません。「これならあの人に聞けばいい」と名指しで知られることです。名指しで知られる人に共通するのは、社外に多くのつながりを持ち、アウトプットの頻度と量が多く、直接の仕事以外についても幅広く学んでいることでしょう。
勤勉の指標は、時間ではなく、この資産の大きさと、それを積み上げる加速度である。これが一度目の書き換えでした。
しかし、この資産の「中身」は、いま根底から揺らいでいます。知識やスキルの多くが、月額数千円で誰の手元にもある時代が来たからです。後編では、生成AI以降の勤勉について考えます。
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第1回 ビジネスパーソンが生成AIの有償版を使うべきである理由
第2回 「事業変革推進室長」として生成AIで新規事業を企画する
第3回 AIの「魔法」をメール作成と悩みの「壁打ち」で体感
第4回 新規事業の「3段階の自立シナリオ」をAIで描く
第5回 AIにいきなり「斬新なアイデア」を求めるのは避けよ
本書は、これまでのAI本とは毛色が異なり、新規事業開発やマーケティングの実践ノウハウを、AIを使いながら体験的に学べる「ドリル」です。AIの使い方を解説するのではなく、実際のビジネスの現場でどう使いこなし、新しい価値を生み出せばいいのかを、手を動かしながら身につけていただけます。
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