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マルチクラウド管理:2つの方向からみる

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マルチクラウドに向けた、具体的なソリューション事業は既に北米市場を中心に動き始めている。

特に今後注目していく必要があるのは、SaaS/PaaSを中心とした企業に取ってのアプリケーション事業でのクラウド環境と、IaaSを中心としたITプラットホームを中心としたクラウド環境の融合にある。それぞれのクラウド事業は、独自の市場を形成しており、下記の様に異なる顧客層とベンダー構成を形成している。

SaaS/PaaS市場
主たる顧客層:企業の各事業部門
主要プレイヤー:Google Apps, Microsoft Office 365, Salesforce.com, etc..

IaaS市場:
主たる顧客層:企業のIT管理部門(system administrator)
主要プレイヤー:Amazon Web Services, RackSpace, Microsoft Azure, etc...

同じクラウドコンピューティングというキーワードを共有しているにも関わらず、上記の様に別々の市場形成、顧客構造を持つビジネスになっている状況が今日のクラウドコンピューティングの姿である、と言える。当然ながら、この別々の市場が次第に融合の方向に向かっていく事が今後の動きとして期待される、と言える。

課題は、この2つの異なるクラウド市場がどの様に融合していく、と言う事である。
マルチクラウド化の動きがこの融合に寄与する、と期待されており、次の様な事例を通して、マルチクラウドソリューションが市場に登場していくもの、と予測される。

1)クラウドアプリケーションのマルチクラウド稼働
通常、SaaSアプリケーションや、PaaS環境で開発したアプリケーションは、特定のクラウド、若しくはデータセンタで稼働する様、デザインされている。負荷分散、障害対策、SLAの向上、という観点から、複数のクラウドでこのアプリケーションを運用したい、というニーズが発生する事は明らかであるが、SaaSベンダーとしては複数クラウドプラットホームにアプリを移植、運用する事は負担が大きくなるため、難しくなる。それを実現する為にもマルチクラウド環境でアプリケーションを統合的にサポート/運用出来るソリューションが必要になってくる。

2)クラウド間のデータの互換性
企業のクラウド利用が進むと、複数クラウドサービスを個別に利用するケースが増えてくる。一部門ではBox.net、他部署ではAWS S3の様に、企業情報が分散的に管理される状況が容易に発生する。各クラウドストレージ事業社は他の事業社とデータの互換性は保証する事は殆ど無い上、業界標準的な共通仕様もまだ存在しないため、第3社が異なるクラウドストレージ間のデータ変換を個別に行う必要がある。運用方法としてはいろいろあるが、複数クラウド上で運用されているデータのバックアップを一カ所のクラウドで統一して行う等、コスト面、セキュリティ面、運用管理面に着目し、MDM(Master Data Management)戦略の一環としてクラウドストレージを採用するケースは増加している。

3)クラウド間のバースト、バックアップ、DR等の複合運用
ゲーミング、SNS、ストリーミング、等、ユーザからのアクセスのトラフィックに大きな時間的案格差があるアプリケーション、また、その増減が予測しにくいアプリ等は、仮想マシンを必要に応じて自動的に増減出来る、オートスケーリングの機能を採用するケースは多い。これを俗にバースティングと呼び、通常プライベートクラウドで運用しているシステム(もしくはパブリックもある)のCPUもしくはデータアクセスの負荷が急激に増加した際に、別なクラウド(通常パブリック)のリソースを使い、自動的にインスタンスを増やし、システム性能に影響を出さない方法を指す。
また、こういったマルチクラウド間の運用方法として、自動バックアップのシステム等も採用される。特に、DR対応を必要とする際に、クラウドインフラに2時的なバックアップシステムを確保する方法は米国では多くなって来ている。

4)マルチクラウドの統一した監視、報告、自動化、等の運用管理
マルチクラウドを利用した運用が始まると、システム全体の状況を監視し、状況を報告し、障害の未然防止、迅速な対応等を確保する為の管理システムを対象となる複数クラウドに対して提供する必要性が出てくる。特に、業務全体のSLAやセキュリティを高めるためのマルチクラウド運用、と言う事であれば、システム管理も大変重要な要件になってくる。それぞれのクラウドの特性を良く知り、尚かつ特定のクラウドベンダーに偏らない独立なベンダーである事が理想的である。


上記の4つはまだ現在採用されているもののみであり、今後もっと多くのクラウド運用機能が出てくるもの、と想定される。また、仮想化技術、クラウドAPI技術、各社IaaS, PaaS事業社と同様に、複数のプレイヤーが登場するもの、と考えられるが、どのベンダーも上位、下位のベンダーとは独立な、全く異なる技術力を持ったベンダーが市場をリードするもの、と考える。

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