GartnerのMagic Quadrantの分析によるクラウド業界の動向
この図は、Gartner Groupが昨年11月に発表した、同社としては初めてのクラウド市場に関するMagic QuadrantとHype Cycleのレポートから、Hype Cycleの表を抜粋し、その分析を行ったもの。
クラウドは、そのキーワードが登場してからかなりいろんな新しいキーワードが派生して登場しており、いくつかのグループ分け、分類なくしては非常に混乱の要因になる市場になって来ている事がこの表だけでもわかる。
次の様な4つの傾向と分類が考えられる。
1)IaaS、PaaS、SaaSといった、クラウドコンピューティングが登場した当時から存在していたキーワードは既にピークを越え、”Trough of Disillusionment”(幻滅、失意)の領域に入りそうである。これは、当初の大きな期待が持たれていたこれらXaaSといったキーワードは話題程の価値を業界全体に提供していない、という状況を反映している、と言える。当然SalesForce.comやAmazon Web Servicesの様に一定の成功を収めている企業も登場しているが、IT市場全体の規模と比較すると、まだごく一部のシェアを獲得している、と言う方が正しく、当初市場を席巻するのでは、と想像されていたクラウドは実はある特定の市場領域での成長に限定されている、という意識が特にエンタプライズ市場において持たれている、というのがGartner Groupの見解の様である。
2)Big Dataに関連した新技術に大きな注目が置かれ始めている。企業内のデータを如何に有効活用するか、特に大量の情報を整理し、必要な時に必要な情報を引き出せる能力、重複している情報を統合し、一元化する能力が基幹システムに要求されており、クラウドインフラを利用してそのデータを比較的安く一括管理出来るソリューションが期待されている。その技術としてHadoopやCassandra等のBig Dataが注目されており、それを利用するアプリケーションとして、クラウド上のBPM等が今後成長していく、と予測されている。クラウド利用事例の有効なモデルとして評価されていく事が想定される。
3)クラウド間コラボレーションは、クラウド利用が段々と定着し、企業内で複数のクラウドを利用する環境が出来た時に必要となってくる管理面での課題に対するソリューションの総称である。Cloud Collaboration、Hybrid Cloud Computing、Cloud Services Brokerage、CloudBursting等のキーワードは全て複数のクラウドを組み合わせてより高度なクラウドの利用方法を実現しようとする方式である。
4)クラウドセキュリティに関しては今後は強化されていく方向は業界全体が求めている事であり、具体的なソリューションが今後登場していくと期待されている。従来のOn PremiseやWebアプリケーションの導入/運用で要求されて来たセキュリティの提供をクラウド環境にも適用していく動きはある上、一部その業界標準化、もしくは業界をして受け入れることが出来るセキュリティ基準の様なものが作られていく事が想定される。
こうやってみていくと、クラウドビジネスは段々と実際に採用、導入、運用し始める事を通して生じてくる、より具体的な課題に話題が移行しつつある事がわかる。当然と言えば当然であるが、この中で一番押さえどころは、やはりセキュリティを明確に打出すクラウドソリューション、と言うところではないかと思う。定量的な評価がしにくいファクターである上、クラウド上のセキュリティの基準、と言う者が存在しないため、何を持ってセキュアなクラウドなのか、という共通の理解を得るのが難しいからである。