iPadに見るAppleの製品リリース→ブラッシュアップまでの手法と哲学(1/2)
iPadに見る1から2への変化。 これは、実はAppleの
製品をリリースしてからブラッシュアップしていくまでの過程
を如実に表しています。 これは僕が考えるモノ作りのステップとかなり近くて、僕がどういう風に考えてモノを作ったり、日常人と話をしたりする人間なのかがよくわかると思うので、自分の意見を交えながら書いてみたいと思います。
基本は「なんだか寸足らずな機能」でスタート
Appleは新しいカテゴリの製品を出すときに、必ずといっていい程、一見すると「他の端末に比べて、できる事が少ないな。。。」と思うようなスペックでモノをリリースします。初代iPadの時も、
- なぜカメラがつかないのか?
- なぜこんなに大きいのか?
- iPhoneとのスキマを埋めるミドルサイズはないのか?
- 取っ手も何もない持ちにくいデザイン
- 結局ネットブックより遅いのか。。。(CPU)
といった感じで、突っ込みどころに事欠かない仕様でした。 今程アプリも充実してはいませんでしたし、「いったいこの端末で何ができるのかわからないが、ネットブック程役には立たなそうだな。」と思った人は多いと思います。
初期仕様は「Geek(技術オタク)が自分の友達へ向けた贈り物」
僕の考えでは、Apple新製品の初期仕様は、Geekが考え出しています。 Steve Jobs自体もAppleコンピューターを立ち上げただけあってたいそうなGeekです。 ただし、AppleはGeekの発想をむやみに「詰め込む」事をしません。 Geek自身が、技術なんか何も知らない友人に自信を持って勧めたい!と思える機能を厳選しているのです。
Geekが思いつく「この機能は一般の人も絶対楽しんでくれる!」という直感
Geekは開発中の端末に誰よりも詳しい人間です。どんな機能が、どのくらいのパフォーマンスで動いて、「結果どのような体験を生むか」を一番良く知っています。 また、モサモサ頼りなく動いている端末のかっこわるさを誰よりも知っています。 そんなGeekの直感を誰よりも信頼しているのはSteve Jobsであり、そのアイディアや体験に落とし込んだものを集約して、採用する機能を自らのフィルタにかけて、リリースのタイミングや価格を操るのがJobsの役目であると言えます。 Appleの製品リリース哲学の基本は「気持ちよく使ってもらえる」事を目指した「体験」ベースであり、「500万画素の写真を撮れるけど保存に10秒近くかかる」ようなみっともない端末は決してリリースしません。Appleは過去の多数の失敗から、「保存に10秒かかる事」の「残念な気持ち」を熟知しているからです。
初めて触れるモノは、製品の開発コンセプトに沿う限り極力シンプルな方がいい。我々が本当に自信がある機能だけでいい。その機能が受け入れられないようなら、その後にどんな機能を追加してもダメ。
この哲学こそ、Appleの新製品には、カタログ上のスペック不足を補ってあまりある程の「えもいわれない気持ちよさとかっこよさ」がある秘訣なのです。
時には無理矢理超特急機能も
しかしながらたまにAppleが「開発途中だろ?」と思うような機能を組み込んでくることがあります。 これは、Jobsの中の未来戦略上どうしても必要と考えたものです。 言い方を変えれば、JobsのGeek魂の現れですし、経営者としての英断である場合もあります。
次回はリリース後のブラッシュアップ手法について。ここには市場シェア的にマイナー企業だった期間が長いAppleならではと思える面が垣間見えます。