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人事・組織領域を専門とする、クレイア・コンサルティングの広報・マーケティング担当です。人事・組織・マネジメント関連情報をお伝えします。人事やマネジメントの方々にとって、未来の組織を作り出す一助になれば大変うれしいです。

アウトソーシングやら何やらを駆使してでもなんとか価値を出さざるを得ない時代へ

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クレイア・コンサルティングの調です。こんにちは。
前回とは打って変わって長文のエントリになってしまいました。さて、昨日(2013年1月17日)話題になったニュースの一つに、自分の仕事を無断で社外にアウトソーシングしていた社員の話がありました。

自分の仕事を無断で中国に"アウトソーシング"していた従業員──Verizonが事例として紹介


元記事はこちらCNNにも取り上げられています。

確かに悪いことはしていると言える、が...


当然ながら、機密保持の問題であるとか、インフラという企業の屋台骨に関わる重大事であるとか、というかそもそも無断だったし、など、そういった理由で糾弾する声があるのは事実ですが、一方で一社員の生産性という観点だけで見れば非常に優秀な社員であるにも関わらず辞めさせるのは言語道断で、逆に報いるべきだ、という意見もあります。先の元記事のコメント欄にもそのような指摘がありますし、元切込隊長(やまもといちろう氏)のツイートをはじめ、アメリカだけでなく日本でも好意的な取り上げられ方をされている印象を受けました。


人事・組織系で論壇を張ることも多いMargaret Heffernan氏もこの一件をCBS MONEYWATCHで取り上げていますが、そこである問いを投げかけています。


Bob was fired. But it made me wonder -- how many people outsource their jobs?...

A lot of lawyers get junior attorneys to prepare their work for them. Some academics do too. You may get one appointment with an important hospital physician and the expensive surgeon may turn up for your operation, but most of the time your medical treatment is in the hands of less august (and pricey) staff than the named consultant. How many companies do you know that field their best and brightest for the sales pitch who, once the deal is done, are never seen again?

ボブ(当該社員の仮称です)は解雇された。しかしこのことである疑問が浮かんだのだ ― 果たしてどれだけ多くの人が自身の仕事をアウトソーシングしているのか?と。(中略)

多くの弁護士が、自身の仕事の準備を若手弁護士にやらせている。教育界でも同じだ。あなたはある時非常に高名な勤務医と知り合いになり、そのつてで自分の手術を高額な外科医にやってもらうかもしれない。しかし医療行為が行われるほとんどの時間は、その名の通った先生ではなく、それほど威厳がない(なおかつ安い)スタッフの手に委ねられるのだ。営業の時だけ最優秀人材を連れてきて、契約さえ終われば二度と姿を現さない、そんなことをする会社をどれだけ知っていますか?

教授の論文を実際はポスドクが書くといった話はよく聞きますね。ドラマでよくある、大学病院におけるご回診のシーンも思い浮かびます。
その後ゴーストライターの話など、表向きと実情の違いが如実に出るケースに触れた後、以下のように続きます。

What's remarkable about Bob's story is that, like most employees, he did turn up physically for work. He just didn't do the work. On the other hand, lots of people turn up at the office and don't do much. At least Bob ensured that his work got done, on time and, apparently, very well.

ボブのストーリーにおいて注目すべきなのは、多くの社員と同様、彼が物理的にちゃんと仕事場に姿を現していたことだ。彼はただ単に手を動かさなかっただけ。一方、多くの人々は会社に姿を現してもそれほど仕事をしない。少なくともボブは、彼の仕事を時間通りに仕上げたし、聞いた情報から判断するに、その仕事の内容はとてもよかったようだ。

同じように会社に顔を出し、アウトソースはするもののきちんと成果を出す社員と、自ら働くがそれほど成果を出さない社員と、会社としてはどちらを優秀とみなしますか?という厳しい問いが投げかけられています。

Hefferman氏の最後の指摘として、

Perhaps the real question isn't about Bob but rather about his manager. Had he outsourced his job, too?

本当に問うべきはボブではなく彼を管理する立場の人ではないだろうか。彼も単に自分の仕事をアウトソーシングしていただけではないのか?と。

アウトソーシングはマネジメントとしてタスクを与えることと形態として大きく変わらないのであれば、上司の仕事というのはボブとやっていることと大して代わりなく、かつ管理監督が出来ていない点でさらに罪が重いのではないか、という痛烈な指摘です。生産性や倫理など、いろいろなトピックが関与する、複雑なケースであることは言うまでもありませんが、個人の価値観にも関連し、議論が分かれるところだと思います。もっとも彼はVPNを中国からアクセスさせるために認証デバイスを中国に送っていたそうで、その点や(公開されていませんので確かなことは言えませんが)両社間の機密事項の件などを鑑みると、解雇は致し方の無いことではあるように思われます。


デキナイ社内人材 < デキル社外人材


ただ、今後は企業が価値を生み出すバリューチェーンが今以上に一つの企業の枠内にとどまることなく、広範に渡っていくことが避けられない状況になっているのは明らかです。

A More Decentralized Workplace Is Becoming Inevitable

BUSINESS INSIDERで一昨日に取り上げられていた上の記事においても、アメリカに対してのコメントではありますが、

As companies continue to streamline their operations, low-skill jobs are increasingly going offshore, to robots, or being outsourced in some way.

企業が業務を効率化し続けていくに従って、難易度の低いスキルを要する仕事はますますオフショアかロボットか、はたまた何らかのアウトソーシングに切り替えられていくだろう。

との見方を示しています。

とはいえ、今回のボブのケースはITインフラに関する高度技術分野での話だったので、上記の話からは縁遠いように思われる方もいらっしゃるかもしれません。
が、実は事態はさらに深刻化しています。McKinseyによると、

we are moving full-force into a knowledge economy, where high-skilled workers will be valued more than ever before. Tech companies are accelerating this trend.

我々はまさに全力でナレッジエコノミー(知識経済)へ向かっている。そこでは高度なスキルを持った従業員がこれまでになく高く評価される。テクノロジー系の企業がこのトレンドを加速させているのだ。

とのこと。

さらに高度人材の内部獲得が難しいことから、(ここではボブのケースとは違って正規のプロセスを採っているはずですが、)高度人材についても正社員ではなく契約社員(contract workers)ベースでの人員確保が進んでいることが下図から見てとれるかと思います。

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人事・組織を担当される各位においては、企業が継続して高い価値を発揮していくためには、どのような人的資源(あるいは資本)を組み合わせていくのが最も効果的か、という、今までとは違うステージでの思考が求められているのかもしれません。これまでの日本企業はリソースベーストでの戦略を立てる会社が多く存在していましたが、少しその方針をマーケットインの方向に変えていくということになるでしょうか。

そして戦力として考慮すべき対象は、内部人材だけでなく、はたまた外部人材や協力企業は言うまでもなく、最後にはコア・コンピタンスだけを残して他の部分は競合企業のオペレーションを活用するといった、ダイナミックな策が日常的に求められてくることもあるかもしれません。

当然ながら、獲得費用その他を鑑みて内部人材を育成していくことは依然として重要です。ですが、これまで多く見られてきた、全社員を平等に底上げして人材開発施策を運営していくという選択肢を続けることが果たして適切なのかどうかは、一度きちんと検証してみるべき課題ではないでしょうか。

ご一読感謝!

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