中小企業と地域のブランディングを研究する背景
毎日、ニュースを見ていても、あまり明るい話題が見当たりません。マスコミの影響もあると思いますが、いつしか「厳しさに耐え忍ぶ日本」が、日本国民の多くの気持ちの中に浸透してしまっている気がします。
日本の歴史上、初めて経験する右肩下がりの中、マネジメントのパラダイムを変えなくてはならないことに異論を唱える人は少ないでしょう。具体的な例を挙げれば、「良いものを安く」は、日本の高度成長期に「ジャパン アズ ナンバー1」と言われた時代を支配したパラダイムです。「良いものを安く」作るには、大量生産で規模の経済性を目指す必要がありますが、供給が需要を上回って久しい現在においては、必ずしも、成功の方程式ではありません。つまり、良いものを安く作り仕入れても、売れるとは限らないからです。また、規模の経済性をいかすことができるのは大手製造業であり、大量購入によるバイイングパワーで安く仕入れできるのは、大手卸業小売業です。
しかし、大手企業の「良いものを安く」の企業行動は、必ずしも社会全体にいい影響ばかりではありません。利益が出なくなると、下請け企業に無理なコストダウン要求をし、従わなければ他にスイッチすると圧力を掛けるといった企業行動は、決して尊敬できるものではないと思います。いくら売上が高く利益が出ていても、下請け企業の犠牲が背景にある企業を、私自身は「良い企業」とは思いません。これからのグッドカンパニー、ビューティフルカンパニーで尊敬に価するのは、企業を支えてくれるステークホルダーの満足(幸せ)を考え行動し、且つ、高いパフォーマンスを実現している企業だと考えるからです。
また、農業の現場において、農業生産者は、栽培された野菜や愛情を持って育てた豚や牛を出荷すればするほど、赤字になるのも同様です。もちろん、農業生産者も努力する点はあるでしょう。しかし、価格競争に走る大手小売りの圧力が、食品偽装などの一因になっている現実を考えると、日本全体の社会システムに問題があると思います。それは、私も含めた生活者も、「安ければいい」といった意識を変える必要があるのではないでしょうか?つまり、生産者、流通業者、生活者が、負のスパイラルに陥っている現状を、変革していく必要があります。
しかし、このような環境下において、中小企業であっても、地方であっても、同業他社が羨む程の高い経常利益を出し続けている中小企業や地域があります。そうした中小企業や地域に共通した特徴の一つは、必ずしも「良いものを安く」といった画一的な考え方をしていないことです。大企業と同じ土俵で戦えば、同質化競争(コモディティー化)となり勝ち目はないことは明らかであるために、中小企業、地域としての戦い方を行っています。その戦い方の一つにブランディングがあると思います。必ずといっていいほど日本の学者がブランディングの成功例で紹介する「関サバ、関アジ」は、その好例です。
さらに、中小企業や地域がブランディングを行う企業にとっての朗報は、ソーシャルメディアの発達です。安価で気軽に情報発信できるツールを駆使すれば、今までの数倍数十倍のスピードでブランド形成が可能になります。但し、ブランド形成を行うには、ソーシャルメディアも一つのツールではありますが、全てではありません。実際にその中小企業や地域と接して感じた経験や、リーダーの思い、歴史、エピソード・・・・その全てがブランド形成には影響があるからです。
ブランディングに成功した中小企業や地域を探し出して、その秘訣を自分なりに考察し、情報発信していきたいと思います。もし、お読みになられた方からも、「こんな凄い中小企業や地域がある!」といった情報をいただければ、時間の許す限り直接の取材を行い、記事にしたいと思いますので、よろしくお願いします。