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オーケストラのステージマネージャという、あまり馴染みのない仕事をしております。その中で見えてくるものや、他の業種との比較などを中心に、文房具の使い方やガジェットの活用などを書いてみたいと思います。

余震の嵐 (前編)

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2011.03.11.。
赤坂のホールでいつもの様に、仕事。
セッティングが終わって落ち着いたのを見計らって、傍のラーメン屋に遅い昼食を採りに向かいました。
カウンターに座って店内を見廻した時に...地震発生。
結構長い。
「黒酢ラーメン一つ。」
と注文しようとしたら、
「火を落とします。」
...それはそうですよね、地震ですものね。
苦笑いしていたら、カウンターにいた異人さんが心細げな表情をしています。

暫く様子を見ていたら、一行に止まらない。
取り敢えず...危ないから外には出ないで、柱の丈夫そうなところに移動するか、と立ち上がってみました。
ラーメン屋がガラス張りなので、たわんで割れるのを浴びたくないなと思って歩き出したら、異人さんがついて来ました。
「安全なところ知ってる?」
「いえ、でも...」
収まるまで屋内で身を守る、の教育を受けていた私としては、周りのガラスだらけのビルに囲まれている外に出るのはためらわれました。決して安全な場所を知っているわけではありません。

しかし、長い!
このままこの建物に何かあったら、夫と会えなくなるかもしれない、あれやこれやそれ等やりかけのことも全て置いてこの世を去らなくてはならないのか!...まあ、仕方ないか。どんなに頑張っても絶対後悔するなぁ。と、いきなり死を覚悟した瞬間がありました。
(昔アムステルダムのスキポール空港で、目的地の空港のストライキが収まるのを待っている間に、現在いるスキポール空港自体がストライキに突入して...という経験をした時も、覚悟しましたが...)

そうこうしているうちに、ビルの中から、異人さんや若い日本人がどっと外へ向かい出しました。
引っ張り出される形で、表に出たら、そこここのビルから出た人々が不安げに上をみあげていました。
アーク森ビルでは、窓清掃用のゴンドラがぐわんぐわん揺れています。赤坂の方へ眼を向けると、耐震構造の証とばかりに、ビル自体がたわんでいる様に波打って揺れています。

落ち着いてから、ホールに戻りました。
途中、事務所の企画制作の人とばったり。近くのホテルに泊まっている指揮者の処へ向かうそう。ロシア人は地震大丈夫かな?

舞台上は、上の反響板シャンデリアの破損に備えようと動いて。
釣り物は上げ、大型楽器を退避させます。
余震が続く中、ゲネラル・プローべをやるのかやらないのか、そして本番は? 事務所の判断待ちです。

その間はモニターに映されたニュースを見つめる時間に...。
いつもと違う大きい地震に動揺する人、何が起きているのかを把握しようとしている人、楽器をさらう人...。

どうすれば安全なのか?
何をすべきなのか?
何ができるのか?

一旦出た結論は、時間を遅らせてリハーサルを敢行。本番の有る無しはその間に結論を出すことに。
ホール自体は震度9まで耐えられるとのことで、下手に外に出るよりも安全であるということがはっきりホールから。

そうとなれば、再セッティング。
大型楽器を直して、譜面台や椅子も整えて。
リハーサル中に余震があった場合の避難経路も案内されて、再開。

...余震も再開。
リハーサルは中断。
余震とは言え、通常ならば本震と思えそうな揺れ。
ニュースでの津波警報表示は真っ赤。
どうなるかわからない状況は続き...。
震源地近くに親族がいて、連絡が安否が確認できない人...。
不安で震えている人を励ます人...。

余震が落ち着いて、またリハーサル再開。

本番をやるのかやらないのかの結論を事務局が出すまでには時間がかかりました。

むしろ中にいた方が安全なホール、交通手段が悉く失われて行く中で行き場の無い人々。
我々はどのみち、ある程度までは中にいなくてはいけない覚悟はしていました。

結論。
本番決行。

そうとなれば、手順はいつも通り。
余震に警戒し、後のことは考えずに集中。

この頃、一瞬携帯電話の電波が繋がり、留守番電話の内容を確認できました。
ほんの一瞬でした。

都内の状況も伝えられ...特に交通に関しては絶望的、一時は23区にいる人は外へ出られない=川を渡ってはいけないという通達があったと聞きました(これは本当だったのでしょうか?そもそも何処から通達?)。

モニターからは、津波と火事の映像。

本番前の夕食調達にコンビニへ向かいました。
(そこで、棚に残っていた何がしかを購入して食べたはずなのですが、この辺りの記憶がすっぽり無いのです。
一緒に買いに行った人から様子を聞いても、ピンと来ませんでした。)

(続く)

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