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多言語・多通貨・多文化間の電子商取引(EC)を支える現場から

ずいぶん間が空きましてすみません。ちょっと昔の話をします

もともとWebデザインの受託制作をしていた私が、マルチリンガルカートのようなパッケージ化されたサービスを作ろうと考えたのには理由があります。娘の誕生です。

昔、私が経営していたWebデザインの会社は、数名スタッフもいましたが、私がメインの営業企画かつメインデザイナーでした。よって自分の労働可能な時間×生み出せる価値=会社の売上の上限と考えて大きく外れていませんでした。典型的な労働集約型事業…というか実質個人事業主です。

子どもが生まれて理解したことは、育児はものすごく大変(時間や集中力を割かれる)ということ。自分の両親のありがたみがよくわかりました。
子どもが生まれるまで10の時間を仕事に費やせるとしたら、乳幼児がいるとその半分の5くらいしか仕事に割けない。しかも私はいろいろ考えたがるタイプなので、集中力が下がるとクオリティも落ちる。
以前が時間:10×品質:5=50なら、赤ちゃんがいる状態では時間:5×品質:3=15くらい。
この状況で労働集約型の事業を続けることは困難だろうと察しました。

そこで、労働集約型ではないモデルへ移行しようとして、いくつか試行錯誤した中でたまたま私が出会った事業の種が「海外向けのECシステム」でした。おかげさまで事業としてはようやく芽を出しつつあるのですが、私の「零細のWebデザイン会社」が企業として破たんしたのは私が適切な育て方を知らなかったことと、その種を育てるための水や肥料(資本)の調達に失敗したからです。大変多くの方にご迷惑をおかけしました。マルチリンガルカートは2008年に私の会社からWIPジャパンに譲渡されて現在に至ります。この辺はFacebookの駄文などをご覧ください…

さて、「ECシステム」の提供を選択した際に、やらないと決めたことがいくつかあります。

そのうちのひとつがECモール。「やらないの?」という質問を時々受けるのですが、しません。理由は、お金がかかりすぎるからです。

少し説明します。
システムの場合、提供するサービスの根底には、目的(この場合海外向けEC)を実行するための「道具」としてのシステムがあり、それに付加価値が加わることで競争力やサービスの魅力が変わるという理解をしています。

なので、海外向けECシステムのスタートアップに必要なのはざっくりこんな感じでしょうか。
1.回線、サーバ
2.ECエンジンとしてのシステム開発・保守
3.翻訳
4.海外向けECの構築/運営に必要な知識。商習慣とか法制度とか為替とか。
5.サポート
6.国内向けマーケティング・営業

しかし、モールの場合は提供しているサービスは「売り場そのもの」です。つまり、場であるモールに集客ができて(売れて)ナンボです。売れなければ最初多少話題になったとしても、やがて店子はいなくなるでしょう。つまり、海外向けモール事業をやりたい場合は、上のシステム要件に加えて、海外からの集客手法を確立しなくてはなりません。

具体的には
7.店舗としてのモールの構築・運用
8.現地にまったく知名度がない自社モールの、海外における信用の獲得
9.店子によって様々なジャンルが含まれるモール内商品の海外向けマーケティング

が必要になります

しかし考えてみてください。
例えば対象を日本に置き換えたとして、知名度ゼロのサイトに対してオンラインで物を買ってくれるだけのマーケティング、しかも複数の企業が店子として入るならば、それぞれを満足させるだけの売上をもたらす送客を行う場合、いったいどれくらいの広告を投下すればよいでしょうか。また、実際に調べてみると法規制や商習慣上の制限も多く、認知や信用の獲得には相当な努力と工夫が必要です。もしもターゲットとなる海外現地で有力なモールなどと提携して売り場を交換することができれば、上記のような問題はかなり効果的に解消できるでしょうが…。

いずれにしろ海外向けECシステムと比較し、必要な予算の桁数がいくつか増えます。少なくとも私のような弱小ベンチャーが採る選択肢ではありませんでした。

もしもモールを選択しないならば、私は「8.現地にまったく知名度がない自社モールの、海外における信用の獲得」をしないでよくなります。
7と9はECサイト各店舗の構築・運用・マーケティングとなり、その国ごと、店舗が扱うジャンルごとに得意とする制作会社がある(あるいは自社でできてしまう企業もある)はずです。また、モールという漠然とした団体よりも、特定ジャンルやお店の個性を生かしやすいことから、現地への訴求がしやすくなるでしょう。

自分たちだけの力では難しくても、EC事業者の方々やより優秀な制作会社の方と協力し合うことができれば、私にとっては労働集約型ではないビジネスモデルでのサービスが提供でき、EC事業者にとっては海外の販路を獲得できる。また、協力先の制作会社にとっても新たなサービスの切り口を増やせるのではないか。

一応そんな仮説と選択がありサービスをやってきました。

残念ながら非労働集約モデルになったはずでも相変わらず忙しいですが、おかげさまで娘も元気に大きくなり、マルチリンガルカートはびっくりするくらい優秀なEC事業者の方々にご活用いただき、たくさんの協力会社に素敵なサービスを提供していただき、その陰では海外向けのWeb構築やマーケティングにチャレンジする制作会社さんが奮闘してくださっています。

マルチリンガルカートはこれらの様々な企業との関係性の上に成り立っています。あらゆる点でサービス本体を改善していくことはもちろんなのですが、EC事業者、協力会社、制作会社各社が協力し、活躍するための受け皿となり、「海外に売れる」場を醸成することも、重要な仕事ではないだろうかと考えています。

michiko_momose

相変わらずの遅筆ですみません。
既にチラシなどでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私が関与している海外向けネットショップASP「マルチリンガルカート」の、昨年度の国際間ECでの流通額が4.7億円(465,806,409円)になりました。日本円以外の外貨は2011年3月時点のレートで換算しています。はたして多いか少ないか、見る人によって解釈が分かれる数字ですが、(カートASPとしては全然少ないですね。)1円も流通できない状態から関わってきた立場としては、世の中のお役に立つサービスになって来つつあるようで感無量です。よりユーザーさんが使いやすいサービスになるよう、さらに改善していきます。

さて、以前この情報をセミナーでお話をした際に、「ではどのくらい日本国内/国際間でのBtoCの電子商取引(EC)がされているのか?」という質問をいただきました。勉強不足で歯切れの良い回答ができなかったので、自分の整理のためにも少しまとめます。

この目的では経済産業省が行っている「我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」が資料として有益だと思います。

電子商取引実態調査(経済産業省)

「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」によると、2009年の日本国内BtoCの市場規模は6.7 兆円、この数字は前年比+10.0%。過去3年間の推移を見た図は以下の通りです。

(図1)
B2c
(出典:経済産業省「平成21年度電子商取引に関する市場調査」2010)

上記の「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」の興味深いところは越境電子商取引(国をまたいだオンライン販売…マルチリンガルカートのお客様が行っているような)についても調査をしている点なのですが、では国際流通額がどのくらいなのか、という具体的な数字はありません。
ただ、「EC 利用者の国別支出割合(下図)」というアンケート調査を行っています。これは、どの国のサイトからその商品を買ったか、という調査になり、数字の類推はできると思いますのでちょっと推測してみます。

(図2)
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(出典:経済産業省「平成21年度電子商取引に関する市場調査」2010)

たとえば、国際的な情報通信関連の調査ではcomScore社が有名ですが、同社が2011年2月に発表したリリースによると、米国におけるBtoC市場は2010年の通年で$142,491M、日本円に換算すると約11.6兆円になります。(1ドル=81円のレートを使用)

comScore Reports Record-Breaking $43.4 Billion in Q4 2010 U.S. Retail E-Commerce Spending, Up 11 Percent vs. Year Ago(comScore)※英文

(図3)
Us_ec_spend
(出典:comScore)

同じ計算を、中国のインターネット調査会社iReserchが2011年1月に発表したレポートでの数字に当てはめてみます。下記のリリースによると、中国におけるBtoC、CtoC市場は2010年の通年で4,609億元、日本円に換算すると約5.7兆円になります。(1元=12.4円のレートを使用)

艾瑞咨询:2010Q4中国网络经济达到456.7亿元,电子商务迎来美好时代(中国語)

(図4)
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(出典:iReserch)

図3の情報に対して、図2の割合で越境電子商取引が行われていると仮定すると、米国における国際間のBtoC電子商取引の市場規模は11.6兆円の8.1%で 9,360億円になります。
また、「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」によると、「 中国における EC 利用者の国別支出割合」のうち中国以外は19.7%、なので、これを図4に当てはめてみると、中国における国際間でのBtoC(およびCtoC)電子商取引市場規模は5.8兆円の19.7%で1兆1229億円になります。

…あれ?と思われる方も多いかと思います。

はい。いくつか問題点があります。

たとえば「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」の国別支出割合では、現地化したECサイトは大元の国にカウントされません。たとえばAmazonは様々な国に運営子会社を設立して販売を行っていますが、その場合は現地サイトとカウントされます。しかし、マルチリンガルカートのユーザーでも運営のためにプロセスを現地化している企業はあり、むしろ現地化が進んでいるほうが売り上げは大きい傾向にあります。よって、もしも「国別支出割合」をその事業の本拠地でカウントした場合、もっと海外比率は大きくなるでしょう。

また、図4においてはBtoCとCtoCが混在しています。中国はもともとCtoCが先行して発展したため、正確に電子商取引規模を調査するとこうなるのだと思われますが、越境電子商取引は一種の貿易です。インフラの整わない中国に対して、市井の個人が行うのはかなり大変です。また、CtoCの場を提供する側も、通貨等の問題から制限を行う可能性が高いです。よって、越境電子商取引の数としては適切な数値が算出できてはいない(上記は実態よりかなり多い数値)でしょう。

ですので上記の数字はあくまで類推の域を出ません。他にも越境電子商取引の規模を「類推」する方法はあるのですが、国際間の商取引となると定義も調査手法も難しく、信頼できるソースがなかなかないのが現状のように思います。

ただ、サービス側の立場としていえることは、少なくともマルチリンガルカートのユーザーにおいて、日本から海外へのECそのものは金額も物流量も図1より急速に成長しています。また、図3・4にある通り、海外にも成長を続けるEC市場があり、当然ですが日本のみよりも海外の地域をも視野に入れたほうがマーケットは大きくなります。

私としては、海外に向けてがんばるEC事業者の少しでもお役にたつように、ひいては、より流通額が増え、ビジネスが発展するように、少しずつですが勉強し、サービスを改善し続けていきたいと考えています。

michiko_momose

いつもぎりぎりですみません。先月末にアップした際は3月こそはと思っていたのですが、地震と年度末のラッシュであっという間に31日になってしまいました。

このたびの東北地方太平洋沖地震で被災された多くの方に、心よりのお見舞いを申し上げます。
今回は、この震災に関して、海外向けECに絞って書きたいと思います。
具体的には、私はマルチリンガルカートという海外向けのネットショップを作るASPサービスを運営している立場にあるので、支障のなさそうな範囲でマルチリンガルカートのデータや体験をメモします。

■トラフィックと流通額
3月11日の震災直後、特に翌日12日はトラフィックが通常より10%程度増加、その後13日には通常の70%程度に落ち込みました。落ち込んだトラフィックは日々ゆるやかに回復傾向にありますが、依然、震災以前の水準よりは低い総量で推移しています。
震災直後のトラフィックの一時的な増加はおそらく、11日の震災報道を知った海外消費者が、今後の店舗運営や自分の注文の取り扱い確認のために店舗にアクセスしたものと思われます。
その後の恒常的なトラフィックの低下としては、生産地が東北にあり商品供給ができないものが発生した、オフィスや倉庫が首都圏およびその近郊にあり計画停電などの影響をうけている、などの店舗側の事情、および日本の被災状況を悲観視した海外消費者の買い控えなどが考えられます。決済流通額も11日以降減少しており、緩やかに回復を続けています。

■システム、サーバ
マルチリンガルカートのサーバは、ハウジングしているフィジカルなサーバとクラウドの仮想サーバで構成されますが、特に支障なくサービスを提供し続けることができました。今回の震災ではアクセス集中や電力などの問題でダウンするサイトがあった一方で、クラウドへ緊急にミラーリングされたサイトによって情報提供がされ続けるなど、クラウドサービスや堅牢な通信インフラの価値が光った事件でもありました。また、電力供給が不安定になったことから、データセンタの場所(停電対象かどうか)や停電時の対応についての問い合わせを何件かいただきました。今回の震災をきっかけに日本以外へのサーバの分散やクラウドへの移行を行うサイトは増加するのだろうと予想されます。
システム面では、震災直後の14日に関西のユーザーから義援金機能のリクエストをいただき、急遽開発。16日にこの機能をリリースしました。商品の売り上げが落ち込む中で、義援金への寄付は増加しています。この機能をご活用いただける店舗が増えてくださったのは非常にうれしいです。そして、日本のことを考えてくれる海外の消費者がこんなにいるのだということを数字で見ると、ちょっと胸が熱くなります。

■これから海外に対してできること
今回の震災は、いろいろな意味で日本に対する注目が集まった機会だったと思います。その反響はなんとなく以下の3とおりのどこかに当てはまる気がするのですが、
1.大災害の被害者への同情、共感
2.一連の災害よる健康被害、あるいはビジネスへの悪影響に対する懸念
3.これから復興するであろう日本への期待や励まし
個人的には3の意味合いでのメッセージを、海外の方からたくさんいただいたことに驚きました。そして、日本に対するこういった信頼感や好感に対して、きちんと応えていかなくてはならないと考えさせられました。

と、書くと何やら大仰になってきますが、私にとってその信頼に対してなんらかの形で応える手段は今目の前にある「マルチリンガルカート」というサービスしかなく、より多くの企業にとって海外進出のお役にたてるよう、日々改善をしていくしかないのだろうと考えています。

取り留めもないメモで恐縮ですが、少しでも良いサービスを提供できるよう、2011年度もがんばります。

michiko_momose

海外向けECを運営しようとすると、大きな課題の一つとなってくるのが言葉の問題です。
いろいろな場面で外国語でのコミュニケーションが必要になり、言葉の壁を何とかする必要が出てきます。ざっと思いつく限りだと次のような場面でこの問題が生じます。

A. 事前/運用時調査(調査設計、調査票作成、実査、集計・分析)
B. ECサイトの構築(コンテンツおよび商品情報の翻訳)
C. 顧客サポート(注文・各種問い合わせ対応、メールマガジンなど)
D. ECサイトの運用(コンテンツのアップデート、商品の追加/変更、キャンペーンなど)

私が関わっている海外向けネットショップASP「マルチリンガルカート」で、現時点で支援できるところは上記のうち一部分にすぎません。
具体的にはB. ECサイトの構築においてカート側で出力される文字情報が翻訳済みであること、また、各言語のサイトを作るためのひな型を提供していること。およびC.顧客サポートでは各プロセスでメールが発行されますが、そのいくつかはカート側で自動化できます。その自動化したメールに関して現地語のひな形を提供しています。

では、上記以外のコミュニケーションの問題はどうすればよいのか。
スタートアップのときは自分で何とか頑張る、というのもありだと思います。ただし、スタートアップではない場合組織として安定してこなす必要が出てきます。解決方法としては1.プロの翻訳を依頼、2.機械翻訳、3.現地語に対応できるスタッフを雇用/外注する、などの方法があります。ただ、いずれもいくつか問題があります


1.プロの翻訳を依頼

プロの翻訳を依頼する場合、メリットとしてはきちんとした翻訳会社に依頼すれば、迅速に適切な翻訳を得ることができます。たとえば私の勤務先の翻訳部門の仕事は、プロの翻訳者に依頼した訳文をその言語のネイティブがチェックし、各所で外国語に精通したコーディネーターによる文脈や用法、用語の調査が行われます。手前味噌ですが素晴らしい仕事をしていると思います。(私の所属は翻訳部門ではありませんが。)
デメリットはその費用です。翻訳は通常文字やword単価で料金が発生します。費用感のイメージは、たとえば日本語から英語へ翻訳する場合10数円~20円くらいが一般的なようです。では17円と仮定して200文字の商品説明文を英語に翻訳した場合、その費用は3,400円。
もしそのサイトに100点の商品があって、各商品が同程度のテキスト量を持つと仮定すると、商品テキストの翻訳費用は34万円。でも楽天やYahoo! Shoppingの人気店舗を拝見すると、上記の規模では済まない店舗のほうが多いように思います。しかも、この費用は構築時だけではなくA~Dのあらゆるプロセスで発生し続けます。これは、国内向けECでは生じない費用であり、海外向けECの収益性に大きな影響を与えます。


2.機械翻訳(自動翻訳)

1のデメリットをシステムの力で解決しようとしたのが機械翻訳です。Google翻訳をはじめとして、国内だとクロスランゲージ、高電社、アクセラテクノロジなどのベンダーがポータルサイトの翻訳機能などでおなじみです。
メリットは何と言っても、下限は無料で使用できること。
そして致命的なデメリットは、一度でも機械翻訳を使ったことがある方はお分かりのように、現在の技術では正確な翻訳は困難であることです。人間のコミュニケーション能力にはまだ遠く及びません。もちろん言葉の組み合わせによっては精度に差があることを書き添えておきます。
いずれにしても、この文章を書いている時点では、使う側が使途と範囲を意識しないと、店舗や商品の信頼にかかわる、あるいは重大事故につながる危険性があると認識しています。


3.現地語に対応できるスタッフを雇用/外注

1のデメリットであるコストに対して、プロの翻訳者に頼む範囲を少なくするという考え方があります。具体的な選択肢として現地語コールセンターを外注する、もしくは内部に対応できるスタッフを雇用するケースがあります。
メリットはある程度の規模がある場合、発生する外国語のコミュニケーション量から考えて、1だけを用いた場合より費用を抑えることができます。
デメリットは固定費化すること。1などとうまく組み合わせる必要があります。


さて、最近急激に成長しているのが、上記1~3全部を折衷したようなサービスです。これを4とします。「カジュアル人力翻訳」「自動翻訳マッチングサービス」などと呼ばれ、MyGengo、GMOスピード翻訳、QQ翻訳、Conyaqなどが比較的著名なように思います。

共通する特徴としては
・翻訳の依頼および納品はオンライン上で提供されるインターフェースを使用する
・翻訳は人間の翻訳者によって行われる(機械翻訳ではない)
・誰が翻訳するかのマッチングはシステムによって行われる(営業担当者やコーディネーターがいない)
・プロの翻訳より廉価で提供される(1文字数円~10数円)
・納品が早い(人手を介す部分が少ないため)

メリットとしては、1の特徴である人間のコミュニケーション力が生かされた訳を、1よりも費用を抑えて利用できます。また、固定費とはなりにくい形態です。
デメリットは1ほど正確ではありません。また、品質や機能は各ベンダー、および担当した翻訳者によってばらつきが大きいようです。

ただ、人間が得意とするところは人の手で、システムが得意とする事務的な部分はシステムに、うまく折衷した点が非常に興味深いと思います。これからどのように成長していくのか関心があります。

日本は世界では珍しく、ひとつの国で主要な言語が1つしかない国です。
そのため言語が違う地域や消費者へ販売することへのハードルが、心理的にも実務的にも高い気がします。ただ、解決策は間違いなくあり、日々改善されています。より多くの企業が、言葉の壁をあまり気にせずに世界へチャレンジできる環境ができるといいなぁ、と考えています。

michiko_momose

明けましておめでとうございます。
ずいぶんサボっていましてすみません。遅筆なうえにいろいろ兼務しているので筆の歩みは今年も遅そうなのですが、最低1カ月に1回は何かお役に立つ情報をポストしていきたい…というのが2011年の抱負です。

さて、年の初めに向こう数年で日本で普及しそうなクロスボーダー取引用語をひとつご紹介します。

DCC(Dynamic Currency Conversion)決済ってご存知ですか?

一言で言うと、異なる通貨圏をまたいでクレジットカード取引をした際に、購入者の通貨における決済額が、決済時に確定するサービスです。

そろそろ仕事初めですが、年末年始の休暇は海外へ行ってきた、という方も多いのではないでしょうか。
その中で、現地でお土産などを買おうとしたら、現地通貨ではなく日本円建てでカードを切った、という方がいらっしゃるのではないかと思います。これがDCCです。

少し詳しく説明します。

通常、海外に旅行をしたとき、現地でお買い物をすると現地通貨建てでカード処理がなされます。
具体的には、例えば日本在住者がアメリカに旅行をしてお土産を買った場合、USドルで運営される店舗の、USドルで値付けをされた商品をクレジットカードで買うと、その場では一体日本円で幾ら払うことになるのか、正確な金額がわかりません。後日クレジットカードの明細書が届き、その明細を見て初めてどのくらいのレートで交換され、日本円でいくら支払うことになるのかを知ることになります。

しかし、もしもそのアメリカのお店がDCCを導入していた場合、日本在住の購入者はその店舗でお買い物をする際、カードを切る前に、一体自分は日本円でいくらの請求をカード会社から受けることになるのか、日本円で確定した金額を見ることができます。
買い物客は金額とレートを確認し、これに同意するサインをしたうえでカードの決済処理が行われます。

これにより
「予想したレートと違って思いもかけない高い請求になった」
「幾ら払わなくてはいけないか不安で買い物がしづらい」
という、外国からのお客様の不安要素を減らすことができます。

ところで、このDCC決済、上記のような利便性とともに、従来のカード決済にかかわる利益構造の一部を変える作用も持っています。

たとえば以下は両替サービスで有名なトラべレックス(Travelex)の英国サイトですが、ここで公開されているDCC関連サービスについてのドキュメントの一部を和訳します。意訳になるのはご容赦ください。

Travelex UK『ダイナミック・カレンシー・コンバージョンで、外貨カードでの利益を手に入れよう』(英文)
http://www.travelex.co.uk/uk/outsourcing/currencyselect.aspx

「トラべレックス・カレンシー・セレクト(訳注:DCCの商品名)」は、VISAおよびマスターカードのカードホルダーに、ATM、オンライン、および店頭POSで提供される外貨交換サービスです。これにより、銀行やATMオペレーターや小売店は、お客様に商品やサービスを現地通貨で買うか、それともお客様の自国通貨で買うかの選択肢を提供することができます。

次第に普及しつつあるこの旅行者向けの決済方法は、その日の決済レートで外国発行カードを迅速に処理、お客様が(お客様の通貨での)確定した支払い金額がわかる唯一の方法でもあります。

トラべレックスは、小売店が確実に外国発行カードを扱うことができ、かつ外国のカードホルダーの利便性も向上するよう、このソリューションを設計しました。小売店は、お客様にさらなる選択肢を提供できるだけではなく、従来は外国のカード発行機関が得ていた外貨交換利益をシェアできるようになります。


(以下略)


この決済方法は上述の通り、従来カード発行元機関(銀行)が通貨交換で得ていた利益を奪ってしまう二次作用があるのです。このため、カード発行元機関とDCCサービス企業との間で訴訟等の問題に発展していたようですが、昨年10月、最大手のVISAよりDCC取引に対する規制を撤回する旨の発表がありました。

RTT News 『VISAがDCC禁止措置を撤回』(英文)
http://www.rttnews.com/content/UKNews.aspx?Id=1440407&SimRec=1&Node=B1

既に海外では様々なDCCプロバイダーが上記のTravelexのようなサービスを提供しており、取り扱いは増加傾向にあるようです。

参考:Wikipedia 『Dynamic currency conversion』
http://en.wikipedia.org/wiki/Dynamic_currency_conversion

ここ数年で急激に外国人旅行客の誘致が活性化し、クロスボーダー取引も盛んになっている日本ですが、こういった取引方法が日本でも手軽に提供できるようになり、より外国のお客様を歓迎する機運が高まることを願っています。

※DCC決済は同一通貨間で取引した場合、通貨交換利益はどのプロセスにおいても発生しないため、従来のカード決済と全く変わりません。

michiko_momose

私は海外向けEC事業を行うためのASPサービス提供に関わっているのですが、この立ち位置にいると、一口に海外向けに物を売りたいと言っても様々な形があることがよくわかります。どのような販売形態をとるかは会社 によってさまざまなのですが、だいたい3つの要因によってきまる気がしています。具体的には1)現地へ提供できる価値、2)資金そして3)法律や社会的な制約です。

今回は1)の現地へ提供できる価値について書きたいと思います。

さて、前回の記事「海外向けECで「買いたい!」の種を蒔く5つのアイデア」で、海外からものを購入するケースを想起いただく際に“amazonやDELL以外”と書きました。

ほぼ通販モデルだけで日本企業と同等、あるいはそれ以上に日本市場に受け入れられた海外の通販事業者としてamazonやDELLが真っ先に挙がると思われますが、一般的な「海外向けEC」とは別のステージにいますので、同列に論じると混乱するとと思われたからです。

この2社は価格でも納期でも、現地(この場合日本)企業に対する十分な競争力を持っています。しかし本拠地は本国のまま、というのは考えてみると非常に興味深い事例です。

今回はそのうちamazonを例として挙げてみます。

amazonはECのシステムという面では、購入までのクリック回数がとても少ない優れた店舗設計をしていたり、最先端といえるレコメンドシステム、ソーシャルネットワークとの連携機能など、どれも大変素晴らしく、学ぶべき点は無数にあります。

ただし、amazonが日本に上陸した2000年ごろ、amazonの一番の価値は、和書・洋書ともその品揃えだったのではないかと思います。

今でこそ「ロングテールの法則」などで、ほぼ無限に商品情報を持てる大規模ECの価値が定義・評価され、楽天Booksや7&Yなどの競合のオンライン書店も増え、この価値を提供できるのはamazonだけではなくなりましたが、実はこの「日本中から買える、どんな本でもある店」というのは少なくとも日本の研究者や本好きに革新的な利便性を提供していました。当時そんなお店はごく一部しかなかったからです

それは日本の出版流通が「取次」と呼ばれる強い卸売業や、「再販制」と「委託販売制」で複雑にルール化されており、多くの中小の書店は取次から届いた本を売るのが仕事のようになってたことが原因として大きいように思います。

「再販制」とは製造業(この場合出版社)が小売業(この場合書店)へ、店頭で販売する価格を指定できる制度です。本来再販価格、つまり店頭販売時の小売価格を指定することは競争を抑制するため独占禁止法で禁止されています。しかし、ごくわずかな品目に関しては例外として再販価格の指定が認められており(独占禁止法第6章第21・23条)、書籍・雑誌はここに属します。

「委託販売制」とは、小売業(この場合書店)の店頭に並ぶ商品(この場合書籍)は、小売業者ではなく製造業者(この場合出版社)に属するというものです。売れ残った本は出版社へ返品すればよいので、この制度を利用することにより書店は仕入れリスクが事実上なくなります。

なお、書店の数は2009年10月時点で15,482店舗(出典:日本著書販促センター)、出版社の数は2008年度末で3979社(出典:出版年鑑)あり、これらの企業が上記の再販・委託販売を個別に行うのは現実的ではありません。そのため取引を仲介するサービスとして卸売業者である「取次」が発展しました。

 

ところで、本は何らかの形でその中身の評価が行われて初めて購入される商品です。よっぽど既に世の中に知らしめられている書籍・雑誌以外、店頭で中身を確認して購入される、というプロセスが一般的でした。その露出機会としての店頭に並ぶことは非常に重要な意味を持っており、どれだけ広範に露出するかが書籍・雑誌の売れ行きに直結しました。

上記のような制度の具体的な結果として、この文章を書いている現在でもリアルな流通においては、本や雑誌というものはどの店にどの本が何冊届くかまで、卸業者がコントロールできるようになっています。いまでも、地方の小さな書店に行くとどの店も売っている本がほとんど同じ「最近売れ筋の本」になってしまうのはそのためです。(最近例外もいろいろと出てきていますが…。)

しかし、書籍・雑誌などのコンテンツは他の商材と比較して類似商品で代替がききにくいのが特徴です。Aというテーマについて知りたいのであれば、それについて書かれた本が読みたいのであってBというテーマについての本ではないのです。消費者にとっては、書評や人の推薦で特定の目的を持って書籍を手に入れようとすると、店頭になければ予約や注文をして何週間も待たなくてはなりません。もちろん、うろ覚えだと注文すらできなかったりします。す ぐに必要なら店頭に置かれている商品を手にとってその中から選ぶしかありませんがそれがニーズを満たすとは限りません。そのうえ、隣町の本屋に行っても並んでいる本はほとんど同じかもしれないのです。

対して、amazonでは近隣の書店に並ぶよりはるかに大量の、新旧取り混ぜた書籍を一様に並べ、比較し、既に読んだ人の意見を聞きながら購入すべき書籍を検討し、実際に注文できる機会を提供しました。amazonの倉庫に実際の書籍がなくとも、商品情報さえ提供されれば露出機会、販売機会をつくりました。これは日本の出版流通にとって革命的な意味があったのではないでしょうか。

このような、不便だったり奇妙だったりする現地事情に対して、「それは変だよ」と新しい価値を提案できるのは、現地のルールに染まっていない、あるいは組み込まれていない外部の者の強みです。amazonはそのような新しい価値を日本へ投げかけてきたサービスで、だからこそ日本の市場で今まで不便を感じていた消費者に歓迎され、ここまでの成長を遂げたのではないでしょうか。

さて、ここまで革新的ではなくても、日本から海外の現地向け通販で業績を伸ばしつつある企業には何らかの、「現地へ向けた、自社ならではの解決提案」があるように思います。それが現地企業にとって解決が難しい問題であればあるほど、現地向け販売が波に乗る原動力になるように感じています。

たとえば「日本にはありふれているけれど現地にはない」とか、「日本では当たり前の利便性として提供されているけれど、現地の社会的事情でその利便性はあたりまえではない」とか。具体例を書くとユーザーさんに怒られそうなので控えますが…。

ですから、日本の会社が、日本におけるamazonやDELLの立ち位置につきたいのであれば、現地の事情をよく調べ、話を聞いて、自社の提供 できるものがどのように彼らに貢献できるかを考えるべきだと考えています。それが解ったうえで、その強みを提供するための仕組みを考える必要があります。例えば amazonならば前述のシステム面も重要ですが、品ぞろえと価格競争力を支える仕組みで重要なのは、現地(日本)出版社との信頼関係と物流のはずです。

ECのシステムというのはそういった素晴らしい商品やサービスが、やりたいことを実現しやすくするための道具であり、そのような企業にとって価値の提供を邪魔しないように、改善につとめていきたいと考えています。

(※この記事は過去にはてなへ投稿した記事を加筆修正したものです)

michiko_momose

前回の記事では、海外向けECにおいてSEMがあまり有効ではない原因をAISASモデルをつかって分析し、自社商品・ブランドの「Attention(注意)」「Interest(関心)」を増やすことが、海外向けECの購買促進に有効ではないかという仮説をたてました。そして、その働きをおこなう「引き金」として下記の5つのパターンを挙げました。

   1. 「知人から紹介された」
   2. 「誰かが使っているのを見た」
   3. 「広告を見た」
   4. 「記事で見た」
   5. 「店頭・展示会などで見かけた」

今回は、この5つの引き金となる例やアイディアを具体的に挙げてみます。

1.「知人から紹介される」には、まずその知人が商品を他人に紹介するほど深く知っていないといけません。そのためには例えばモニターを募ったりする方法が有効かもしれません。
具体的には、商品ブランドイメージから大きく外れないソーシャルアカウントを持っている(使った結果が確認できるのと、後の検索プロセスで優位になる)、自分の商品とマッチした生活スタイルをしている、比較的発信力のある立場にあることを事前アンケート等で確認して、そこに合致する人に商品を無償で提供するキャンペーン…等を企画するのも一つの方法かもしれません。

2.「誰かが使っているのを見た」には、露出の多い有名人、タレントなどに使ってもらう方法があります。しかし有名人であればあるほど使ってもらう対価も高くなります。また、その商品に共感してくれる現地の著名人を探す必要もあります。なお、商品が社会問題を解決するような要素を持っていたり、著名人の趣味嗜好に沿うものであれば好意的(積極的)に協力してもらえるケースもあるようです。
また、1のようなモニタープログラムに2の要素を加えるのも一つの方法です。多くのソーシャルメディアでは簡単に写真が投稿できますので、実際に着用したり使用したりした様子をWeb上に投稿してもらうことで露出機会を増やすことができます。その際にはネガティブな反応や課題点のフィードバックも伴うことを理解し、改善に努めなくてはいけません。

3.「広告を見た」には2通りが考えられます。

1つ目はこの場合ネット広告よりもリアルな広告(TVCM、雑誌、新聞、屋外広告など)をイメージしています。または、ネット広告でもPPCではなく枠を買い取るようなモデルの媒体です。広告主のコントロールがきいて広い層にアプローチできるため、認知を獲得するには有効な方法なのですが、以前も書いた通り、海外から広告を出したい場合には現地のメディアがそもそも取引をしてくれない場合が結構あります(取引条件がその国の法制度に則った法人であるケースが多い)。
ですので、現地への広告掲載のためには自社が現地子会社を持つか、現地子会社を持つ広告会社等を経由する必要があり、必然的にかなりの金額になります。

2つ目はもっと小規模な広告。たとえば現地の通販会社の梱包にチラシ・試供品を同梱させてもらう、ターゲットとする地域で商材やコンセプトが近い店頭を利用したチラシ配布、サンプリング、体験イベントを行う、などの手法です。広告会社を介さなくても、現地の通販会社や店舗と交渉して実現するケースがあります。幅広い認知やブランド力の底上げは期待できませんが、狙った層に届けやすいためコンバージョンしやすいようです。また、ここで実際に体験した人が1.に流れるケースも期待できます。

4.「記事で見た」は現地で信頼されている媒体とよい関係を築き、記事として掲載してもらうことができれば、3-1のような広い認知を獲得し、同時に製品への信用やブランド力を上げる効果があります。また、他のメディアがまだ取り扱っていない斬新な情報の方がニュース価値があるので、まだ現地で物珍しい海外(この場合日本)の商品は取り上げてもらえる可能性があるようです。
もちろん、読者が関心のあるテーマであれば、現地法人がないことが掲載の障壁にはなりません。
とはいえただ待っていても取材には来てもらえないので、現地の媒体にアプローチを取って取材してもらう機会を設ける、サンプルを無償供与し体験してもらうなどの働きかけが必要となります。
なお、3と比較すると費用もあまりかからず魅力的ですが、掲載時期や内容について企業側のコントロールがきかないのは(程度の差はあれども)日本と同じです。

5.「店頭・展示会などで見かけた」は、3-2と重複するところもありますが、現地に商品の実物を露出させる機会を作ることを指します。たとえばJETROはかなり頻繁に世界各国の展示会で日本企業の商品を展示する機会を設けています。(JETRO「イベント情報」http://www.jetro.go.jp/events/tradefair/)こういった機会を活用すると、出展にかかる企業側の負担は担当者の旅費くらいだったりします。品質に自身のあるメーカーであれば積極的に活用するのも一つの方法です。
他にも、現地の店舗と交渉して1-2週間だけ催事販売をする等の方法もあります。
ECにこだわらないのであれば、現地向けECと同時に現地への卸を進めて、その協力先を現地露出の機会とし、メーカー在庫がわかるカタログのような意味合いでECサイトを活用してもらうのも一つの方法です。

上記に挙げたものは(言い方は悪いですが)小手先のテクニックとして結果を求めるのではうまくいきません。中長期的な現地向けの戦略を下敷きに、現地の協力先や消費者との関係を築いていくための具体的な手段として捉えるべきです。

実際に海外向けに売れている店舗を見ると、こういった手段を複数組み合わせて、(もちろん王道である競争力の強化も行いつつ)現地へアプローチしているケースが多いように感じています。SEMに関しては自社ブランドの名前やコンセプトを直接たたいた際に検索結果として出てくる程度の検索エンジンマーケティングは行っていても、検索エンジン頼みでブランド認知や販売戦略を作ろうとは考えていないように見受けられます。

ECは海外市場へ挑戦するハードルは下げてくれるけれども、現地市場での成功を約束するものではありません。自分の会社(やショップ)が、現地へどのような幸せや利便性が提供できるのか、あるいは提供できる位置に立ちたいのかを考え、様々な人や企業の協力を得ながら成長していく、という過程は日本でも現地でも変わらないように思います。

このような視点に立つことで、日本から現地へ向けて、現地で「Attention(注意)」「Interest(関心)」を引き起こすための手法は、案外たくさん見つかるのではないでしょうか。

(※この記事は過去にはてなへ投稿した記事を加筆修正したものです)

michiko_momose

(「海外向けECの集客でSEMがうまくいかない2つの理由」の続きです。長いので前・後編に分けました。)

前回は海外からの集客~購買における課題について書きました。「お客様に自社の商品を買ってもらう」。そのためにはいかに相手の立場になって心理をくみ取るかが重要になるのではないでしょうか。本当は事例で考えると良いと思いますが、ここでは特定の国や地域にフォーカスするのではなく、汎用性のあるモデルから考えてみようと思います。

消費者の心理プロセスを示したモデルとしては、1920年ごろにアメリカで生まれた有名な「AIDMA」があり、最近電通が提唱している、インターネットを活用した消費行動に着目した「AISAS」があります。その他にもいろいろなモデルが提唱されていてどれも興味深いのですが、今回は一般的に知られていそうな「AISAS」モデルを用いて考えます。(AISASは電通の登録商標です)。

「AISAS」では以下のようなプロセスで、主にネット上の購買行動をモデル化しています。

        A: Attention(注意)
         I: Interest(関心)
        S: Search(検索)
        A: Action(行動、購入)
        S: Share(共有、商品評価をネット上で共有しあう)

前回の「海外向けECの集客でSEMがうまくいかない2つの理由」で挙げた2つの理由は、上記モデルに当てはめると以下のようにも表現できます。

1)SEMは 3番目の「Search(検索)」のプロセスが活発に起こってこそ有効だけれども、そもそも「Search(検索)」が少ない。それは前段階の「Attention(注意)」「Interest(関心)」が十分ではないから。

2)既に現地で知られている概念(=「Attention(注意)」「Interest(関心)」が十分なキーワード)に関連付けてSEMを行う場合、価格などでの競争力の弱い日本からのECサイトの多くは「Action(行動、購入)」に至る前に、「Search(検索)」における検索結果内での比較競争に負けてしまう傾向がある。

ということは対策として考えられるのは、

   ・自社商品・ブランドの「Attention(注意)」「Interest(関心)」を増やす
   ・価格等の競争力を高め、現地概念内での比較競争に勝つ

の2つになります。

今回は前者の“自社商品・ブランドの「Attention(注意)」「Interest(関心)」を増やす”方法について考えてみます。
ところで、海外の消費者の気持ちに立つために、最近購入したもの、あるいは凄く欲しいものを振り返ってみてください。その中でわざわざ海外から買ったものってありますか(DELLやAmazonの商品と回答する人は多そうですが、後者の「価格などの競争力」を改善した例にあたるのでこの場では除かせてください。該当する例だと、最近ならiPadを輸入した方がいらっしゃるのでは)?あるとすればどんなものでしょうか。

私が海外から購入したことのあるものはソフトウェアやPC周辺機器なのですが、わざわざ海外から購入したのは専門誌やWeb上のニュースで読んで非常に興味を持ったけれど日本では手に入らない(輸入代理店もない)ことがわかったからでした。

実際にとった行動プロセスとしては次のようなものです。

   1. 普段「ここが何とかなればなぁ」という漠然とした不満がある
   2. 専門誌の記事で役に立ちそうな商品を見つける。しかしその商品は海外の店舗しか扱っていないらしい。
   3. 知人に聞く、国内外で同様の商品がないか検索してみる
   4. 見つからない(似たものはあるが当初見つけたものより有意に劣る)のでその商品を販売しているサイトへ行く
   5. 購入
   6. 当初話を聞いた知人にフィードバックする

多分私は2のプロセスがなければ検索行動はしなかったはずです。1の段階ではその不満を解決する商品があるとは想像していませんでした。なお、2の後に検索・比較をしても、最初の商品の印象が強く、その商品が打ち出すコンセプトで検索する限りでは、他の類似商品は見劣りがしました。
このような購買確度の高い検索行動は、引き金となる「その商品の魅力を伝える情報」がどこかから入らない限り、なかなか生まれないのではないでしょうか。

引き金となる情報には

   1. 「知人から紹介された」
   2. 「誰かが使っているのを見た」
   3. 「広告を見た」
   4. 「記事で見た」
   5. 「店頭・展示会などで見かけた」

等が考えられます。(「車がパンクした」とか「急に来客が増えた」とか、緊急性の高い引き金もあるでしょうが、そういったものはそもそも海外のソリューションで解決しようとはしないので今回は除外します。)

次の記事では、この5つの引き金となりうる例やアイディアを具体的に挙げてみます。

(※この記事は過去にはてなへ投稿した記事を加筆修正したものです)

michiko_momose

海外向けECで、ほぼどの店舗も課題になるのが、いかにして「海外から」お客様を集めてくるかという点です。いわゆる4マス広告は現地法人がないと契約できないケースが多いため、海外へ法人を作らずに日本から物販をしようとした場合には選択肢が限られます。比較的少額でも利用でき、日本企業でも利用可能な海外向けのマーケティング手段は、Google等の検索エンジン連動型広告…となるショップは多いようです。

しかし、この「検索エンジンマーケティング(以下SEM)」に対して、「日本から海外に売る」という構図を取る際には、特定のケースを除いてあまり有効ではないのでは、と感じています。理由は大きく2つで詳細は次の通りです。

まず、1.検索エンジンで何かを探すには、対象物の概念がすでに検索する人の頭の中になくてはいけません。

わざわざ海外から取り寄せてでも買いたい商品、というのは現地の概念でまだ一般的ではない(だからこそ現地で製造や流通がされていない)商品であることが多いのです。(もちろん例外もあります。後述します。)

なぜかというと現地で手に入れられるのであれば、現地で購入する方が消費者にとってはよっぽど負担が低減されます。特に物流に関しては、国をまたぐと途端にコストが膨らみます。たとえば日本から中国に、EMS(国際スピード郵便、一般的に使われている海外向け小口輸送手段)で 1kg(ジーンズ1本+梱包材くらい)の荷物を送った場合、1,800円です。日本円で見てもちょっと高いと感じますが、日本よりも物価の安い国々にとってはとんでもない金額に映ることもあります。たとえば、中国国内で同じ物品を中国国内の郵便で配送した場合、都市部なら24元(約325円)です。日本から物を取り寄せる送料は「通常支払う郵便料金の5倍」と映ります。また、送料とは別に関税等の各種租税も考慮しなくてはいけません。

他にもトラブルがあったときに外国語で交渉しないといけないのか、自分の文化的常識は通じるのか、為替が変動してさらに請求額が上がったりするのでは…などの不安もあるでしょう。

ですので、既に国内に自分の要望を満たす商品があるならば、そもそも海外の商品を積極的に探そうとはしないでしょう。また、ある切り口で国内外の店舗の商品を等しく並べ、それらを比較する状況になった場合、自国内と他国の店舗のどちらから買うかといえば、多少の差であれば現地国内の店舗が選択されやすいのは当然のことです。

次に、2.相手の土俵では比較検討に負けます。

あまり世の中に知られていない商品を売るためのSEMの手法として、何らかのカテゴリにその商品を紐づけて(たとえば浴衣なら「日本 女性衣類」と検索すると結果の一つとして出す、など。)現地からの認知を得るという方法も確かにあります。しかし、SEMを行う価値があるほど既に現地に広く知られている“カテゴリ”とは、その概念に含まれる商品も既にある…という場合が多いのです。すると、日本から海外に商品を売ろうという企業がこの戦法を採った場合、検索結果は当然現地企業と混ざって表示されてしまうわけで、前述のように条件面で不利な日本企業のショップは、比較検討の一環として閲覧される機会は増加しても、なかなか購入には結びつかないはずです。

上記の2つのような理由から、日本から海外にECを行う際に集客手段としてSEMを選択するのであれば、店舗側が次のいずれかに該当しないと、割に合わなくなるように感じています。

1)現地企業の店舗と比較されても商品の知名度、価格、配送時間・料金、顧客対応等の面で劣らない(勝てる)体制がある
2)強いブランド力のある商品が既に現地で認知されており、現地を含む競合企業では取扱が困難である
3)物流を伴わない商品を取り扱っている
4)上記以外の要素で、現地店舗と比較されても勝ち抜けるだけの仕組みが構築できる

1)は、王道ですが実現しようとすると事業の現地化をしなくてはいけません。これにはある程度まとまった投資が必要ですので、中小企業が(いえ、大企業であっても)いきなりこの戦法をとるのはリスクが高いように思います。

2)の場合は特殊で、たとえば国際的に有名な俳優やアーティストの公式ショップ等がこれに当たります。しかし、2)に該当するショップはわざわざSEMをしなくてもお客はやってくるため、店舗担当者からそもそもSEMってなんですか?と聞かれたりします。彼らの一番の悩みは津波のようなトラフィックと受注をいかに捌くか…だったりします。

3)に関しては2つあり、たとえばソフトウェアや音楽等のデジタルコンテンツが1つ目に当たります。商品もデータですので物流コストの考慮がいりません。ターゲットとしている国や地域にある程度快適な回線環境が環境があり、現地競合よりも魅力のある商品が提供できるならば、SEMで露出を増やすことがコンバージョンにつながりやすいと感じています。
2つ目はホテルの宿泊予約や、イベントのe-チケットのような商材です。購入したサービスは後日お客が自ら受けに日本へ来てくれるので、そもそも現地企業が競合になりません。

4)は可能性としてあると思うのですが、事例を知りません…。どなたかご存知でしたらぜひ御教示下さい。

では上記に該当しないけれど、今後現地法人を持たずに海外へのECを試みたいという店舗はどうすればいいのでしょうか。

私はわざわざ日本から取り寄せてでも購入される商品とは、現地の人にとってそれだけのことをするだけの特別な価値がある商品であるはずだと考えています。もしかすると、前述のような現地の上位概念を探してその下に紐づける集客の仕方は、もともとの価値を見えにくくし、本来競合ではない競合を作り出してしまうのかもしれません。

また、冒頭に書いた通り、検索エンジンで何かを探すには、対象物の概念がすでに検索する人の頭の中になくてはいけません。そもそも検索エンジンとは、検索する当人にとって「そんな商品やサービスの必要性を考えたこともない」というような商品は提示しないように設計されています(少なくともこのテキストを書いている時点では)。

で、あるならば最初はその概念の種を蒔くようなマーケティング手法を選ぶべきではないでしょうか。
このテーマについては改めて投稿します。

(※この記事は過去にはてなへ投稿した記事を加筆修正したものです)

michiko_momose

みなさま、はじめまして。百瀬道子と申します。WIPジャパンという翻訳・調査会社で海外へ小売を行うためのASP/SaaSサービス「マルチリンガルカート」の開発や運営をしています。

このエントリを書いている2010年7月現在、楽天が世界各国の著名ECサービスやポータルサイトと資本関係を作ったり、AlibabaとYahoo!ジャパンの提携サービス「淘日本(タオジャパン)」がサービスを開始するなど、ECの国際化が一気に進んできました。海外向けのECが気になっている方も多いのではないかと思います。

ところで、海外にモノを売ることは、従来一部の企業・業種でしか行われていませんでした。


◆企業規模別の輸出業務実施状況(出典:中小企業庁「中小企業白書2009」)

Kf204010_3

このグラフを見ると企業規模別で有意な差がみられます。同白書によると、日本の企業のうち常時雇用者数が301人以上である企業の割合は0.3%です。


◆日本の商品別輸出割合(出典:JETRO「ジェトロ貿易投資白書」2009より作成)
Jetro2009_3
【原典は財務省「貿易統計」(2008年)】
輸出総額における商品別割合です。輸出のうち,約7割を機械が占めることがわかります。(そのうち自動車等の輸送機器だけで、4分の1を占めます。)。


輸出業務実施状況と輸出商品の種類からみて、中小企業が大企業の下請けとしてものを作り、大企業が完成品を海外に売る、という構造がうかがえます。
ただしこれは、島国である日本の企業が海外にモノを売るためには、現地への支店や営業所の開設、それらの設備や人員の維持、現地在庫の問題など大きな投資が必要であり、必然的に大企業でなくては海外へ売りにくいという事情がありました。

ただ、その結果として、国内の多くの企業が国内の取引に依存、および、海外へ供給するには特定の流通ルートに依存する構造が定着し、その流通ルートが破たんした場合に大きな影響を及ぼす体制を作ってしまったのではないかとも推察されます。

さて、近年様々なオンラインサービスが整備されてきたことに伴い、海外へ向けて物を売ることも(以前と比べて)ハードルが下がってきています。

たとえば、Skype(2004年~)。一般の国際電話は結構よい料金なのでこのサービスが出るまでは常に時計を気にしながら話していた気がするのですが、Skype同士なら「電話料金」はかかりません。海外の協力先・取引先と長時間電話会議をしても平気です。
-Skype(日本語)

また、Paypal(日本向けサービスは2007年~)は多様な言語・通貨に対応した決済方法で、維持費・手数料が低いことから少額決済に向いています。このサービス登場以前は、異なる通貨間の送金は銀行手数料だけで数千円~数万円程度はかかっており、大規模な取引はともかく小規模なBtoC、あるいはBtoCには不向きでした。
-Paypal(日本語)

さらに、Mixi(2004年~)やTwitter(2006年~)、facebook(2004年~)などのソーシャルネットワークサービスも普及してきました。こういったサービスをを利用していると、日本語以外の投稿を見かけたり、日本語以外を母語とする方とやり取りを行うことがあるのではないでしょうか。商取引を行うためにお客様を知ることはとても重要ですが、「こんな商品はどう?」「ちょっとここを教えて」と現地の方に訊くことも、意見を傾聴することも、あるいは協力先・取引先を探すことも以前と比べて身近になりました。
-Mixi
-Twitter
-facebook

これらのオンラインサービスはここ5年ほどで急速に普及したもので、海外との取引を行う企業や個人にとってはインフラと呼べるような存在になりつつあります。このような環境の変化により、海外向けの直販を試みる企業も増加してきました。

私は、日本の面白い製品やサービスを持った企業や個人が、従業員数や業種にかかわらず世界と取引できるようになってほしい、そうなった先の社会を見てみたいと思っています。そして、微力ながらそのお手伝いをしたいと考えています。

かくいう私は2007年に海外向け多言語ネットショップASP「マルチリンガルカート」をリリースし、紆余曲折を経て現在に至るのですが、その過程で海外に物を売るための難しさや、まだ解決していない課題、そしてその環境にも負けず海外向け販売にチャレンジする様々な面白い企業と出会いました。と、いいますか、今もそんな企業の皆様と試行錯誤の毎日です。

インターネットを活用して海外へモノを売ろう。

そんな取り組みを支える現場で考えたことを、従来はてなで綴っていましたが、ご縁があってこちらに引っ越してきました。
どうぞよろしくお願いいたします。

michiko_momose


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百瀬 道子

百瀬 道子

多言語ネットショップASP「マルチリンガルカート」の運営者が、国境を越え刻々と変化する国際間ECの片隅で綴るブログ。

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