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多言語・多通貨・多文化間の電子商取引(EC)を支える現場から

どのくらい日本国内/国際間でのBtoCの電子商取引(EC)がされているのかを考えてみる

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相変わらずの遅筆ですみません。
既にチラシなどでご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、私が関与している海外向けネットショップASP「マルチリンガルカート」の、昨年度の国際間ECでの流通額が4.7億円(465,806,409円)になりました。日本円以外の外貨は2011年3月時点のレートで換算しています。はたして多いか少ないか、見る人によって解釈が分かれる数字ですが、(カートASPとしては全然少ないですね。)1円も流通できない状態から関わってきた立場としては、世の中のお役に立つサービスになって来つつあるようで感無量です。よりユーザーさんが使いやすいサービスになるよう、さらに改善していきます。

さて、以前この情報をセミナーでお話をした際に、「ではどのくらい日本国内/国際間でのBtoCの電子商取引(EC)がされているのか?」という質問をいただきました。勉強不足で歯切れの良い回答ができなかったので、自分の整理のためにも少しまとめます。

この目的では経済産業省が行っている「我が国情報経済社会における基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」が資料として有益だと思います。

電子商取引実態調査(経済産業省)

「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」によると、2009年の日本国内BtoCの市場規模は6.7 兆円、この数字は前年比+10.0%。過去3年間の推移を見た図は以下の通りです。

(図1)
B2c
(出典:経済産業省「平成21年度電子商取引に関する市場調査」2010)

上記の「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」の興味深いところは越境電子商取引(国をまたいだオンライン販売…マルチリンガルカートのお客様が行っているような)についても調査をしている点なのですが、では国際流通額がどのくらいなのか、という具体的な数字はありません。
ただ、「EC 利用者の国別支出割合(下図)」というアンケート調査を行っています。これは、どの国のサイトからその商品を買ったか、という調査になり、数字の類推はできると思いますのでちょっと推測してみます。

(図2)
Us_crossborder
(出典:経済産業省「平成21年度電子商取引に関する市場調査」2010)

たとえば、国際的な情報通信関連の調査ではcomScore社が有名ですが、同社が2011年2月に発表したリリースによると、米国におけるBtoC市場は2010年の通年で$142,491M、日本円に換算すると約11.6兆円になります。(1ドル=81円のレートを使用)

comScore Reports Record-Breaking $43.4 Billion in Q4 2010 U.S. Retail E-Commerce Spending, Up 11 Percent vs. Year Ago(comScore)※英文

(図3)
Us_ec_spend
(出典:comScore)

同じ計算を、中国のインターネット調査会社iReserchが2011年1月に発表したレポートでの数字に当てはめてみます。下記のリリースによると、中国におけるBtoC、CtoC市場は2010年の通年で4,609億元、日本円に換算すると約5.7兆円になります。(1元=12.4円のレートを使用)

艾瑞咨询:2010Q4中国网络经济达到456.7亿元,电子商务迎来美好时代(中国語)

(図4)
006635037
(出典:iReserch)

図3の情報に対して、図2の割合で越境電子商取引が行われていると仮定すると、米国における国際間のBtoC電子商取引の市場規模は11.6兆円の8.1%で 9,360億円になります。
また、「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」によると、「 中国における EC 利用者の国別支出割合」のうち中国以外は19.7%、なので、これを図4に当てはめてみると、中国における国際間でのBtoC(およびCtoC)電子商取引市場規模は5.8兆円の19.7%で1兆1229億円になります。

…あれ?と思われる方も多いかと思います。

はい。いくつか問題点があります。

たとえば「平成21年度電子商取引に関する市場調査(平成 22 年 7 月)」の国別支出割合では、現地化したECサイトは大元の国にカウントされません。たとえばAmazonは様々な国に運営子会社を設立して販売を行っていますが、その場合は現地サイトとカウントされます。しかし、マルチリンガルカートのユーザーでも運営のためにプロセスを現地化している企業はあり、むしろ現地化が進んでいるほうが売り上げは大きい傾向にあります。よって、もしも「国別支出割合」をその事業の本拠地でカウントした場合、もっと海外比率は大きくなるでしょう。

また、図4においてはBtoCとCtoCが混在しています。中国はもともとCtoCが先行して発展したため、正確に電子商取引規模を調査するとこうなるのだと思われますが、越境電子商取引は一種の貿易です。インフラの整わない中国に対して、市井の個人が行うのはかなり大変です。また、CtoCの場を提供する側も、通貨等の問題から制限を行う可能性が高いです。よって、越境電子商取引の数としては適切な数値が算出できてはいない(上記は実態よりかなり多い数値)でしょう。

ですので上記の数字はあくまで類推の域を出ません。他にも越境電子商取引の規模を「類推」する方法はあるのですが、国際間の商取引となると定義も調査手法も難しく、信頼できるソースがなかなかないのが現状のように思います。

ただ、サービス側の立場としていえることは、少なくともマルチリンガルカートのユーザーにおいて、日本から海外へのECそのものは金額も物流量も図1より急速に成長しています。また、図3・4にある通り、海外にも成長を続けるEC市場があり、当然ですが日本のみよりも海外の地域をも視野に入れたほうがマーケットは大きくなります。

私としては、海外に向けてがんばるEC事業者の少しでもお役にたつように、ひいては、より流通額が増え、ビジネスが発展するように、少しずつですが勉強し、サービスを改善し続けていきたいと考えています。

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