Amazonの #KDP で自己出版しない理由がない理由
アマゾンのKindle ダイレクト・パブリッシング (KDP)は、AmazonのKindle形式の電子書籍を自分で好きなように作って、Amazonのストアで販売できる仕組みです。私は2013年のはじめにKDPで電子書籍を自分で出版して以来、いろいろなところで自己出版することの面白さをお話ししてきました。
この2年を振り返ると、自己出版に興味を持つ方は多いのですが、実際に販売するところまで進んだ方はそれほど多くありません。これには2つの理由があるように思われます。
1つはKindle形式のファイル(拡張子が.mobiのファイル)を正しく作るテクニックです。Kindleや他の電子書籍の業界標準となっているEPUBのフォーマットは、一言で言えばXHTMLファイルをZIP形式で圧縮したものです。※厳密にはKindleはEPUBをベースにしたKF8という独自の形式になっています。
日頃からWebサイトを作るような仕事をしている人は別として、一般的なパソコンスキルの方はハードルが高く感じることでしょう。ただし、KDPはMicrosoft Wordファイルで入稿することもできます。Wordで入稿すれば、EPUBを意識する必要はありません。また、最新版の一太郎はファイルの保存形式にEPUB形式を選ぶことができるようになっていて、特別なスキルがなくてもEPUBファイルを作ることができるようになってきました。
もう1つのハードルは、米国での源泉徴収を免除してもらう手続きです。KDPは売上の最大70%が著者の取り分になります。一般の紙の書籍の著者印税が10%前後であることに比べると、非常に魅力的です。ただし、KDPの契約が米国Amazon本社との契約であるため、米国で30%の源泉徴収が行われます。結果として、売上の70%からさらに30%を引かれた分が著者の手取りになります。
日本と米国は租税条約を締結していて、適切な手続きをすることで米国の源泉徴収は免除になります。これまでは、以下の手続きが必要でした。
- 米国TIN(Taxpayer ID Number)を申請します。TINには米国市民を対象にしたSSN(Social Security Number、社会保障番号)などいくつか種類があります。日本の法人や日本在住の日本人は、IRS(アメリカ合衆国内国歳入庁)にフォームSS-4を提出して、EIN(Employer Identification Number、雇用者番号)を申請するのが一般的でした。
- 受け取ったEINの番号をフォームW-8BENに記入して、米国アマゾンに送ります。※2013年の夏以降は、この手続きはKDPサイトの「税に関するインタビュー」画面でオンラインでできるようになっています。
- 米国アマゾンで手続きが完了すると、米国の源泉徴収は免除されます。
EINの申請に必要なフォームSS-4は、英語の申請書です。IRSのWebサイトからPDFファイルをダウンロードして、英語で記入してプリントアウトしたものを国際FAXまたは国際郵便でIRSに送る必要がありました。英語や国際FAXでくじけた人は多かったと思います。この手続きが面倒で米国で源泉徴収されるままにしていた方もいます。
このあたりが昨年末頃に大きく変わったようです。「Kindle KDPでTINはもう不要になった」という情報をネットでみかけて確認したところ、以下のことがわかりました。
- 現在、30%の米国の源泉徴収制度の対象となるのは、Amazon.comでの売り上げに対するロイヤリティのみ。
- Amazon.com以外のKindleストアでの売り上げに対するロイヤリティは、税に関するインタビューを完了した時点で、米国の源泉徴収制度の対象外として扱われる。
- Amazon.comでロイヤリティを獲得する見込みがあり、そのロイヤリティに対する、30%の米国の税の免税を希望する場合は、米国のTINを用意する必要がある。
つまり、Amazon.comで売らなければ、米国のTINを持っていなくても米国で源泉徴収されないことになります。ほとんどの著者は日本語のKindle本をAmazon.co.jpで販売するだけですから、米国の源泉徴収を心配しなくて済みます。
これは大きな変化です。KDPで自己出版するハードルが下がったというより無くなったと言うべきでしょう。人に伝えたいものを持っている人は、今やKDPで自己出版しない理由は無いです。自分の好きな内容の本を好きな時に出版できて、しかもそれを買って読んでくれる読者がいるのは楽しいですよ。
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