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【虚空の冠】電子書籍プラットフォームの覇者は誰か

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楡周平(にれ しゅうへい)の小説「虚空の冠」を読みました。

楡周平は、悪のヒーロー朝倉恭介と正義のヒーロー川瀬雅彦が絡み合う6部構成の作品で、衝撃のデビューをした作家です。この6部作は1990年代後半の作品ですが、いま読み返しても古さを感じない、おもしろい小説だと思います。

その楡周平の最新刊「虚空の冠」は、IT業界と出版業界でホットな話題になっている電子出版を巡る企業間の戦いをテーマにしています。

駆け出し新聞記者の渋沢大将は、終戦直後に起きたある事故をきっかけに運命が変わりました。政財界とつながりができた渋沢は、新聞社内の権力闘争を勝ち抜いて、新聞、ラジオ、テレビを持つ巨大メディアの帝王に上り詰めます。しかし、メディアとしての新聞の影響力に翳りが見えつつあり、将来のメディア支配をさらに確実にすることが自分の最後の仕事と考えています。

一方、ベンチャー生まれの汐留の携帯電話会社の芦野英太郎と新原亮輔は、電子書籍のプラットフォームに目を付け、渋沢に接近して協業を持ちかけます。

架空の社名になっていますが、どちらもどこかで見たような会社です。この2社が電子書籍プラットフォームとコンテンツの支配を賭けて激突します。

プラットフォームを支配することがどういうことなのか、この本を読むとわかると思います。難しい理屈抜きで楽しみながら読めるのが、経済小説のいいところです。

はたして最後に笑うのはどちらか。一気に読ませる小説です。

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