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顧客サービスとITのおいしい関係を考える

コンテンツの時代の次に来るモノ

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今から約10年前の1995年頃の話をしたいと思います。Windows95が発売になる少し前(Windows95の日本での発売は95年11月23日)のことです。

当時はパソコンのアプリケーションプログラムを作って一山当てる、というビジネスモデルは普通でした。例えばシェアウェアの秀丸など、このモデルで成功した会社や個人がありました。

このモデルに共通しているのは、「機能に価値がある」ということです。アプリケーションを使って文書を作る、表計算する、というソフトウェアを使った時の機能に価値があったのです。

その後、株式会社ヴァル研究所から発売されたWindows版の「駅すぱあと」を初めて見た時に、私は衝撃を受けました。

「駅すぱあと」は電車などの乗り換えの最短経路、時刻表、運賃を検索するアプリケーションです。インターネット普及前で、パソコンにインストールして使うスタンドアロン形式になっていました。駅に問い合せをしなくても定期券の金額がわかる、ということで企業の総務部などでよく使われたようです。

私が衝撃を受けたのは、「駅すぱあと」が「コンテンツに価値がある」ソフトウェアだと考えたからです。経路検索のソフトウェアにもノウハウや技術力はあるのでしょうが、使う側から見た価値は経路や時刻表のデータにありました。

それまでのアプリケーションは、次々に機能を強化して、バージョンアップでユーザからお金をもらうというモデルでした。全てのユーザが常に新機能を必要とするわけではないため、バージョンアップしないという選択もユーザにはあります。このモデルではある程度普及してしまうと売上は頭打ちになります。

一方、駅すぱあとでは、時刻表や運賃が頻繁に変わることから、古いバージョンは事実上使えなくなります。ユーザは常にデータの保守料金という形で、バージョンアップをし続けることになります。つまり、一度ある程度の機能に達して、さらにユーザの数を確保してしまえば、後は新機能を開発する必要もなく、データ更新の手間だけで収益が上がるという新しいモデルです。

私は「駅すぱあと」に時代の変化を感じました。

その後、株式会社アルプス社の地図情報ソフトウェア「アトラスRD for Windows 95」(1996年発売)など、「コンテンツに価値がある」アプリケーションが増えて行きました。インターネットの普及に合わせて、ISPにサービスを提供するビジネスを展開しています。乗り換え検索や地図検索は、ポータルサイトで欠かせないサービスになりました。

Web2.0だからというわけではありませんが、そろそろコンテンツの時代の次が出てきそうな気がします。

私はそれが「コミュニケーションに価値がある」時代ではないかと考えています。mixiのようなSNSはコミュニケーションがコアになっています。ただ、今のSNSはまだ電子掲示版やブログの延長でしかないように思われます。

本当のコミュニケーションの時代にどんなサービスや製品が出てくるのか楽しみです。

参考:「駅すぱあと」は1988年に最初のMS-DOS版が発売されています。

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