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組織、マネジメントの理論とその実践を、スポーツ・学校を通して考える。

部活動と事故

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昨年、ある県の野球部で事故が起きた。台風の接近に備えてバッティングケージを片付けていた部員が、そのケージの下敷きになり頸椎を骨折。顧問は現場で指揮を執っていなかったとして、書類送検された。ケガをした部員には回復を祈るばかりだ。残念ながらこのような事故はほかの野球部でも起きている。どの学校でも起きうる事故である。自分自身、野球部顧問を務めた経験もあり、校長という立場にいた者としていろいろと考えさせられる事故である。校長は先生たちに「部活動の顧問をお願いして担当してもらっている」。そもそも先生たちは部活動を担当する義務はない。部活動は教育課程外のものなのだ。本来行う必要のない部活動は、教員の「それが生徒にとって大事な教育的な意義がある」という意識とボランティア的な善意によって成立しているのである。校長時代、土日の部活動をよく見に行った。大会にはできる限り応援に行った。すべてのクラブの大会の応援に行った。「お願いした立場」として、それは当然だとおもっていた。校長が足繫く部活の場面に通っていれば、間違った指導も起きないと考えていた。先生たちには「危機管理」と「安全配慮」を強くお願いした。しかしながら、どんなに安全を配慮しても事故は起きるものだ。大事なことは「事故が起きらないように事前に細心の注意を払っていたのか」なのだ。校長時代、学校事故に詳しい弁護士(元検事)の先生や、保険代理店の方からいろいろな事例を学び危機管理をしてきた。「学校として落ち度があったかどうか」が問われるのだと学んだ。この事故の場合、「台風が接近しているような強風下で、300キロを超える鉄製の器具を動かすのは危険なことであり、大人の指示により移動させるべきだった」と判断されたのだろうと想像する。

気の毒な事故である。校長経験者として思うのは、普段から校長が教員に「安全第一」を訴え浸透させていたのかということだ。法的な解釈では「顧問は必ずしも現場にいる必要はない。校内にいればよい」とされている。顧問には事故の道義的な責任はあるだろうが、法的な責任を負わせるのは酷だ。事故の最終責任は校長にある。書類送検されるのは顧問ではなく校長であろう。学校部活動はグレーな存在なのである。特に、事故が起きた時には生徒も教員も不幸になってしまう。こんなにも重いものを背負う部活動、そのなり手が減少するのも当然だ。部活動というものを法的にすっきり整理していただきたい。そして全国の校長先生には教員と生徒を守っていただきたい。そう願うばかりだ。

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