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組織、マネジメントの理論とその実践を、スポーツ・学校を通して考える。

神様は見ていた・・・最後のヒット

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現在指導に携わっている高校野球部の3年生、K君。最後の夏の大会は背番号18。負けたら終わりの高校野球でその終わりが近づいていた。7-2とリードされた9回2アウト。打席には代打でK君が送られた。レギュラーを取れる技術はなかったが、誰よりも努力した。

自分自身の失敗談:

ある遠征合宿の時。試合が終わりバスで帰路に向かおうとしたその時、自分のスマホがないことに気づき、運転手に「バスを止めてください」とお願いし、監督に「ユニホームを着替えた時、スマホを置き忘れたようです」「先にバスで帰ってください」とお願いした。その時、若い部長先生が「僕も一緒に探しに行きます。」と言い、「誰か一緒に行ける人は?」と生徒に問いかけた。「一緒に行きます」とすぐに大きな返事をしたのがK君。自分と部長、K君の3人でグランド横にある更衣室に走った。更衣室までは急な谷を降りてまた急こう配の坂を上がるという、地獄のような道。息が上がっている私を見てK君は「先に言って探してますから、ゆっくり来て下さい」と声をかけてくれた。自分が着く頃には、二人は更衣室や周辺の道を何度も探してくれていた。残念ながらスマホは見つからず、諦めることにした。また、地獄の道を走って戻らなければならない。

K君は「頑張って下さい。もう少しです」と伴走してくれた。本当にありがたかった。そして生徒に迷惑をかけている自分が情けなかった。バスに着くと、中で待っていた生徒たちから「お疲れ様でした」と労われた。彼らは待ち時間を無駄にせず、バスの中でミーティングをしていたようだった。予定時間を大幅にオーバーしてホテルに戻った。夕食後のミーティングで「今日は迷惑をかけて申し訳なかった。一緒に探しに行ってくれたK君には心から感謝している。困っている人がいたら助けてあげられる人になろう」と言った。

K君の打席を見るのは初めてだった。2ストライクに追い込まれ、「三振でいいから振ってくれ」と祈った。次のストライクをフルスイング。弱い打球がショートの横へ。内野安打になるかというあたり。懸命に一塁へヘッドスライディング。間一髪セーフ。公式戦初ヒット。

彼の今までの努力を知っているベンチとスタンドから大きな歓声と拍手。見ている自分も泣けた。試合は負け、彼にとって初めてのヒットが最後のヒットになった。「神様は見てたんだね。一緒に谷を往復したのを」と試合後にK君と語った。

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