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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

Knight Foundationの研究(3) - 世界規模の都市化とグレーター東京

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オープンデータが強みを発揮するのは、おそらく「都市」をデータの生産者とみなし、その都市にフィードバックを与える形で活用する時なのではないか。そんなことを考え始めています。都市が抱える課題や資源配分の偏りを誰の目にも明らかになるように可視化して、それに関する気づきを都市住民に与えたり、事実を知らしめる。それによって、首長や自治体職員ではできないような、何か新しいタイプのアクションが市民側から起こって、都市環境の改良につながっていく。そんなことではないのか?

国単位のオープンデータというより、都市単位で考えた時に初めて、誰がデータを出し、誰がそれを加工し、誰がそれを消費する(咀嚼→行動)のかという筋書きが見えてくるのかも知れません。あたかも、都市が自らの健康を取り戻すためにオープンデータが吐き出され、それがしかるべきフィードバックとして返ってくる…。そんな流れです。

例えば、ニューヨーク市が公開しているオープンデータを使って、1人の市民が、自転車専用道路上の違法駐車の状況をモニタリングできるマップを公開しています。こうした形の可視化があれば、自転車愛好家たちによってしかるべきよいフィードバックがなされて、違法駐車がなくなっていくということがあるかも知れません。

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Knight Foundationシビックテクノロジー(Civic Tech)と呼ばれる領域に着目していて、シビックテクノロジーを投資の対象と見ています。ここで言う「シビック」(civic)とは、Oxford Dictionariesの定義によれば「都市または町に関わる形容詞。特にその運営、自治に関して」(Adjective. Relating to a city or town, especially its administration; municipal:)ということだそうです。平たい日本語で言えば、「都市の住民による何らかの前向きな活動」がイメージされている言葉だと言えるでしょう。

■興味深い東京の位置

Knight Foundationが見ているシビックテクノロジーの広がりを見る前に、都市化そのものがどういう意味を持っているかを確認しておきたいと思います。

国連経済社会局が発表している世界の都市化に関する報告では、2010年時点で都市に済む住民は、北米で82%、欧州で73%、アジアで44%となっています。これが2050年になると北米で89%、欧州で82%、アジアで64%にまで高まります。都市化はまだまだ続きます。

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巨大都市はどれだけあるのか?2011年時点で人口1,000万人以上の都市は世界に359都市。これだけでもものすごいです。これが2025年には倍近い650都市に増えます。100万〜500万人規模の都市に至っては2025年に1,129都市に増えるという予測がなされています。こういった都市化の進展により、先進国においてはインフラへの追加投資、老朽化インフラの維持管理が課題となってきますし、新興国においては、まったくインフラがないところへインフラを敷設してどう機能させていくかという(主に採算面で)、新しい課題をもたらします。(関連投稿:2020年までに100万都市が新たに60〜70出現するインド

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インフラ輸出の品目として挙げられている水、都市交通、スマートシティなども、こうした課題に対処するビジネスとして存在しています。

この世界的規模で進んでいる都市化の文脈で、東京がどういう位置づけにあるのか。国連経済社会局による以下の表が大変に興味深いです。

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この表で取り扱われている東京は、いわゆるグレーター東京であり、日本で言う一都三県が想定されていると考えればよいでしょう。このグレーター東京が2011年においても世界最大の都市(人口3,720万)。2025年になってもやはり世界最大の都市(同3,870万)です。

この世界最大の都市である東京。ここに冒頭で述べたオープンデータの都市に対するフィードバック機能を重ね合わせるなら、何か有用なあり方が見えてこないでしょうか?例えば、東京で試して、他の新興国で事業展開する…といったような。

少し長くなってきたので、シビックテクノロジーについては次の投稿で書きます。

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