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株式会社インフラコモンズ代表取締役の今泉大輔が、現在進行形で取り組んでいるコンシューマ向けITサービス、バイオマス燃料取引の他、これまで関わってきたデータ経営、海外起業、イノベーション、再エネなどの話題について書いて行きます。

ものを書いて食うための環境として「Amazon Kindle+Twitter+リアルイベント」が大きなポテンシャルを持つというお話(中)

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Kindleを使った個人出版の世界に入って行くことは、従来型の書籍流通からの離脱を意味しますね。実は大変なことです。既存の出版界に反旗を翻す…までは言いませんが、出版界が営々と築き上げてきた様々なシステムの後ろ盾がまったくなくなります。1人で色んなものに向き合っていかなければなりません。
とはいえ、これを一種の起業と捉え、「ワシはやったるんじゃ!」的にハラを括って、目の前に出てくる新しい事柄を楽しんでこなしていくなら大丈夫、成功するでしょう。
「えー、これだけ大変なの。お先真っ暗…」的に捉えてしまうと、もういけません。

■著者が解決しなければならない課題の半分は本職の方にお任せする

個人出版の著者が解決しなければならない課題には、ざっと以下があります。

  1. 編集者がいない。
  2. 企画を一緒に詰めてくれる人がいない。
  3. 装丁や中面のデザインをやってくれる人がいない。
  4. 出版社が持つ伝統やブランドなどの後ろ盾がない。
  5. 宣伝してくれる人、売ってくれる人がいない。
  6. 問い合わせに対応してくれる人がいない。

1.については補足が必要かと思います。編集者がいない状況で書かれたものが、最終読者にとって価値のあるものかというと、経験的に言って非常に厳しいです。ブログならまだしも、活字状の高密度が求められるテキスト、しかもある程度の長さがあり、構造的に組み立てられる必要がある書物を、著者1人で書いたとしても、まともに読めるものにならないのが通例です。客観的に読み、あるいは最初の読者として読んでアドバイスをくれ、必要があれば文章に赤入れをしてくれる編集者の存在は、それが書籍である限りはマストです。
個人出版にトライする著者の方々はどこかで自分に合う編集者とめぐり合い、仕事のタッグを組み、上がりをシェアする枠組みを作ることが不可欠だと思います。(なお、現在ではTwitter上に相当数のフリーの編集者さんがいますから、Twitterでお声がけすればすぐによさそうな方が出現すると思います。装丁などのデザイナーさんも同様)

さて、Twitterが生きてくるのはもちろん5.の部分。しかし、そこだけに留まらず、著者のTwitter活用を広義のパーソナルブランディングとして捉えると、Twitterは4.もカバーします。また、Twitterでは顧客サポート機能がこなせますから、6.もカバーできるでしょう。
従って、1.~3.の部分は本職の方にお願いすると割り切って、自分は4.~6.をやればいいのだと考えましょう。すでに確立されているTwitterの様々な手法を駆使し、あとは自分のキャラを立てて、前進するのみです。

食うためのキモは顧客の支持です。ドラッカー的に言えば「顧客の創造」です。個人出版の著者はこれまで出版社さんが行ってきてくれた顧客との関係づくりを、自分で引き受けて、こなしていかなければいけません。出版社の名前で広告が出て自著が宣伝される…。編集者さんが仕込みをしてくれたおかげで雑誌に書評が出る…。そうしたメディアを介した顧客との結びつきは当てにできないわけなので、著者がメディアを取っ払って、直接的に読者と関係を取り結んでいかなければならないのです。どのように?

ここで生きるのが、すでに色んな本が出ている「パーソナルブランディング」の考え方。そして米国のコンサルティング業界で生まれ、広告業界で使われている「エンゲージメント」の考え方です。定番手法がすでに確立しているので、偏見を持たずにそれらを初心に還って学び、1つひとつ採り入れていけばよいと思います。知識人としてのプライドはいったんチャラにして臨むのが無難です。でないと、Twitter活用の最大のポイントである自分のtransformが起こりません。

■パーソナルブランディングの事例を3つ

パーソナルブランディングについて語釈の必要はないと思います。この言葉を書名にした本田直之さん訳の本もあります(「パーソナルブランディング」東洋経済)。さわり中のさわりを引用してみましょう。

 本書を執筆するにあたって、私は成功を収めた何百人もの起業家、専門家、オーナーに対する取材を行ってきた。数ヶ月のうちに、我々はインタビューを行った人々の90%に一貫して共通するものに気がついた。自分のテリトリーあるいは適所のマーケットを独占するうえで一役買った偉大なブランドを構築したような真の成功者は、自分の仕事に対する本当の目的意識を持ち合わせていたのである。
 これらの人々は特別な人々ではない。みんなと同様に生計を立てていきたいだけなのである。しかし、彼らの大半がビジネスを始めた初日から高い目標を設定し、ビジネスへのアプローチを行ってきた。つまり、コミュニティに対して啓蒙を行い、サービスを提供し、人々が金銭面で健全になるように支援を行うなどの活動を行ってきた。金儲けのためだけでなく、彼らは自分たちの行っていることが心底好きなのだ。その純粋な情熱が彼らのパーソナルブランドの一部として灯台の光のごとく輝くのである。
 --「パーソナルブランディング」(ピーター・モントヤ著、本田直之訳。東洋経済新報社)

この「自分の仕事に対する本当の目的意識」とは、書き手の場合、自分が書く道に入る原動力となった高い志(xxxxxを書いてやるんだ!)になると思います。あるいは一生をかけて追い求めたいテーマですね。それがありさえすれば、パーソナルブランディングのキモはできたことになります。実際、ブランディング関連の教科書を読んでも、ブランディングにはまず「statement」(主義、理念、高邁な志などを簡潔に文書化したもの)が必要だと書いてありますね。「本当の目的意識」は後述するエンゲージメントにも不可欠です。

パーソナルブランディング、現在ではいくつかの日本の事例があります。筆頭はもちろん勝間和代女史。彼女に関する様々なエピソードが流布しているので、誰もが断片的に知っているとは思いますが、明示的にパーソナルブランディングについて語っているのが「目立つ力」(小学館)です。ここで彼女は、ネット上のブログ、Twitter、FlickrなどWeb2.0系のツールを複数駆使して、自分の活動、生活、消費、情報のインプットとアウトプットを記録していくと、自分がSearchableな存在になり、誰かが自分に興味を持ってくれた時に雄弁に語ってくれる「3D名刺」ができると語っています。3D名刺で自分を目立たせろということですね。

なぜ3D名刺が必要かと言うと、成りたいものになる、やりたいものをやるのに必要なのだと書いています。非常に大きな事を成すには、たくさんの人の協力が必要です。協力を得るには、自分のプロフィールを知ってもらい、自分が考えていることを知ってもらった上で、自分がやろうとしていることに賛同してもらう必要がある。これを既存のプロジェクト推進のやり方で進めようとすれば、コミュニケーションの専任を含む数名から成るチームが必要です。しかしカラダは1つなわけですから、それは無理。そこで3D名刺が大きな役割を果たすという訳です。別な言葉で言えば自分を"scale"するのに3D名刺が必要なのです。

Twitter界にもパーソナルブランディングを明確に意識して、一種のエバンジェリスト活動を行っている方がいます。名刺の達人-高木芳紀さんです。彼は、顧客との関係づくりの1つのツールとして名刺に着目しました。

 そもそも、わたくしが名刺をコミュニケーションツールとして再認識したのは、実は自分自身が営業下手だったのがきっかけです。要は人見知りの性格で、初対面の方と打ち解けるのが、非常に苦手だったのです。何とかアポをとってお客様と名刺交換しても、最初の気の利いた一言がどうしても出てきません。
 中略
 どうしたらスムーズに会話をスタートできるのだろう…
 そんなときに、偶然、面白い名刺を持っている方に出会ったのです。その方はICカードの回路を作っているメーカーの営業さんだったのですが、回路がそのまま名刺に貼り付けてありました。名刺をいただいた瞬間、わたくしは思わず「わぁ、この名刺面白いですねー!」と口走っていました。そこから、会話が盛り上がりました。極めて自然で、スムーズな会話の流れでした。
 その商談の帰り道、わたくしは何気なく名刺のことを思い出していました。名刺を見た瞬間思わず声が出た…思わず反応してしまった…「そうか、名刺か!」と、そのときから名刺に「仕掛け」をして相手に反応してもらうことで、会話のきっかけをつかむことを考え始めたのです。
 それからは、名刺にパンチで穴を開けたり、スタンプを捺したり、袋に入れて配ってみたり、シールを貼ってみたりと… 後略
 --「1秒で10倍稼ぐありえない名刺の作り方」(高木芳紀著、インフォトップ出版)

このようにして名刺をきっかけとした顧客とのコミュニケーションを色々工夫しているうちに(そうした工夫がすでにイノベーションですね)、名刺がパーソナルブランディングに果たす役割に目が行くようになり、考えたことや経験したことをブログやメールマガジンにまとめ、それが本になって…という経緯をたどります。
現在ではTwitterを一種の名刺として捉え、様々な工夫を施すことで、着実にフォロワーを増やしています。彼のTwitterホームへ行ってみて下さい。これがパーソナルブランディングの施されたTwitterホームだと一目で理解できるでしょう。

彼が主催するセミナーにも出席したことがあります。そこではプロフィールの写真が重要であること、プロフィールの記述が重要であることなどを学びました。また、少し前にお手伝いした別な主催者のTwitterビジネス活用セミナーでも写真の重要性が指摘されていたので、私もわざわざプロの方に撮っていただいて、現在掲げているような写真にした次第です。

それからもう1つのインパクトある事例がオルタナティブブログの巨星、林雅之さんです。彼は毎日ブログを書き継いで1,000日を突破。書く分野をクラウドコンピューティングに絞り込み、毎日毎日書くことで関係の方々の注目を集め、自著を刊行するまでになりました。そして最近ではクラウド関連のセミナーに引っ張りだこです。先日などは彼が講演するコマが数百名の参加希望者ですぐに埋まってしまったということもありました。また彼がTwitterで私的な勉強会の案内をすると、30名程度の枠なら1日で埋まってしまうということもあります。
クラウド関連の様々な方が彼のブログを読んでいるようで、「あっ」と驚くようなVIPな方から「いつも読んでます」と挨拶されたこともあるそうです。
これもブログを毎日書くという遠大な目標を立て、それをコツコツこなしてきたことによって、林雅之さんというブランドが非常に大きな価値を持ち始めたという例です。

彼が実験的にTwitterで勉強会の参加者を集めた時の貴重な記録がここにあります。こういうことができるのも、パーソナルブランドが確立しているからですね。

■パーソナルブランディングは写真が基本

閑話休題。個人的に最近すごいなと思ったパーソナルブランディングの方は、この方。リンクしてしまいます。宝塚出身の方ですね。

三矢直生さんプロフィールページはこちら

写真がポイントですねー。これから個人出版に移行したいという方は、ぜひ、今からプロのカメラマンさんにコンタクトを取って、よいプロフィール写真をお撮り下さい。そしてそれをブログやTwitterに掲げて下さい。伝手がないという方は私が撮ってもらったところを、ここだけの話お教えします。こちらです。料金は非常にリーゾナブルです。

■現実的に自費出版では何が必要になるか?

オルタナティブブログの永井さんが、以前に初めての本を出版された時に、経験した一部始終を詳細にブログにまとめてくれています。これは、まだ経験のない方には非常に貴重な資料となるでしょう。私もセミナー的な場でお話を伺いましたが、誰もがぶつかる課題の1つひとつを見事にクリアして刊行にこぎつけられています。

永井孝尚のMM21: 自費出版の道#01: 今度、初めての本を出します

この投稿から続く全16回のシリーズです。Amazonで委託販売をするための詳細事項など、すでに既存の枠組みで書籍を刊行されている方にも参考になる情報が満載です。

やや長くなってきたので、最後のパートを(下)として近日中に上げます。

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